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19 淑女の練習

「美しい仕草でできるようになるのは難しいのですのね」


「練習あるのみでございます。

慣れてくればこのように」


 レライは片手で五本ほど開き口元を隠した。


「「おーー!」」


 二人はパチパチと拍手するがレライは無表情である。


「この程度はできるようになっていただかなくてはなりません」


「扇をこれ見よがしにドバッと広げるところを見たことがございますことよ」


「そうですね。女性の皆様は特に怒りを表す時にそのようにお使いになります」


 レライが扇を上から下に振り大きく開いた。


「「おーー!」」


「これも実は絶妙な力加減が必要でございます。強すぎますと紙であると破れてしまうこともございますしレースですと穴が空いてしまうこともございます。山に飾られた羽やファーが散って惨めな様子になることも。

逆に力が弱すぎて開ききりませんと洗練されていないとみなされます」


 レライは大きく開いた扇を手際よく閉じた。これまで気にもしなかったことであったが自分でやってみるとその閉じる仕草が自然なこともすごいことだと感じた二人は感心した顔でレライの手元を見ていた。


「今は両手でゆっくりとキレイに開く閉じるを練習いたしましょう」


「「はい」」


 二人は素直に再び練習を始めた。レライは時折話しかけ二人が女性言葉に慣れるようにと導いていく。


 ここから先はイードルをドリーティア、フェリアをリアフィア、サバラルをバラティナ、ゼッドをシアゼと呼ぶことにしよう。


 昼食は街道から少し入った草原で食べることになった。

 先に馬車から降りたヨンバルディとシアゼがドリーティアたちの馬車の前で待っている。


「練習いたしましょう」


 ヨンバルディの提案でドリーティアをヨンバルディがエスコートして馬車から降りることになった。草原での昼食ということでヒールのない靴が用意されていのだが、その用意周到さにも驚かされる。ヒールはなくともスカートで下の見えないドリーティアはそれでも一生懸命に下を向き足元を確認しようとする。


「ドリーティア嬢が足元を崩されましてもお支えいたします。安心して委ねてください」


 ヨンバルディはバーリドア王国の男性平均身長であるドリーティアより頭一つ大きく胸板はシアゼよりムキムキである。


「優雅に乗り降りなされるためには下を向き過ぎるのはよくありません」


 先に降りて様子を見ているレライからも指摘が入る。


「よろしくお願いいたしますですわ」


 ドリーティアは引き攣りながらも笑顔を作りヨンバルディに任せる覚悟をして斜め前を向いた。腰を伸ばすとすんなりと降りることができた。


『これがエスコートの意味かっ! 私もリアをエスコートするときにはもっと近くで支えるようにしよう』


 ヨンバルディはドリーティアの足元が覚束無いので通常より近くでいつでもフォローできるような位置でのエスコートである。


 バラティナが出入り口に立つとシアゼが手を差し出す。


「僕、いえ、私は大丈夫なことですわ」


「エスコートされるのも練習のお一つです。それにその高さをお一人で降りることがおできになりますか?」


 レライに言われて足元を見ると思いの外高くスカートの膨らみで足元が見えないので尚更グラつく。後ろに仰け反りそうになったバラティナをシアゼが手を伸ばして手首を掴み転ばずに済んだ。


「俺もバラティナ様をお支えするくらいはできます」


 シアゼはバラティナやドリーティアより頭半分背が高く騎士団入団希望者として鍛錬しているのでバラティナより余程逞しい。


「はい。わかりましたですわ」


 バラティナが降り立つとすでにメイドにエスコートされたリアフィアも降りていた。ここではこの状況を知っている者だけなのでシアゼのエスコートではないしドリーティアにエスコートする余裕はないためリアフィアはメイドのエスコートで移動する。メイドのスカートは後ろにスリットの入ったタイトロングなのでエスコートに支障はない。

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