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14 フェリアからの誘い

「はぁ」


 イードルが小さく嘆息してゼッドが慌てて立ち上がったことはスルーすることが暗黙のうちに決定した。


「二人とも婚約者の名前を入れるとは」


「婚約者様をお連れの殿下には言われたくありませんっ!」

「殿下はフェリア様とご一緒だからっ!」


 イードルが二人の勢いに軽く仰け反る。


『ゼッドめっ! 今庇ってやったことも忘れよって!』


「ブッハッハッ! 本当にイードル殿下たちは仲が良いのだね。

僕のことも是非ルディと呼んでくれ。特に恋人となるドリーティア嬢にはそう呼ばれたい」


 イードルはゼッドとヨンバルディに対して思いっきり眉間に皺を寄せた。


「わたくしどもはどちらで過ごすことになるのでしょうか?

イードル様サバラル様のことを知る者は少人数であるべきかと思いますが?」


「それは心配ないですよ。我が国では十歳の誕生日に王子宮王女宮が与えられるのです。

僕は緑の宮をいただいています。そこに滞在していただく予定です。

実は今ここにいる従僕たちは緑の宮の者たちなのです」


「わたくしどもも全力を持ってお仕えいたしてまいります」


 レライが威圧的に言った。本人は威圧のつもりなどないかもしれないがこれまでの言動等を思い返すイードルには威圧に感じた。


『王宮のメイド長であるレライが同行するなど可怪しいと思ったのだ。

母上め。始めからこの形にしようとなさっていたに違いない』


 サバラルとゼッドも思うところがあったようでレライの言葉に必死に笑顔を作っていた。


 その夜はそれで解散となった。


「イードル様!」


 廊下でフェリアがイードルを呼び止める。


「昨日使ったサロンをどうぞ」


 ヨンバルディが笑顔でおちゃめに騎士の礼をしてから笑いながら去っていく。

 レライの先導でサロンへ行った。レライはドアを開けただけで入るつもりはないようだ。


「すぐに終わりにいたしますので何もいりませんわ」


 離宮メイドに声をかけてから入室した。ドアは開けられたままだが部屋の奥へ来た二人の話し声は廊下には聞こえない。


「フェリアはメイドにまで気が配れるのだな」


「? そうでしたか?」


「ふふ。フェリアにとって自然なことなのか。すごいな君は」


 イードルが王妃陛下の執務室でお茶を断ったのは王妃陛下への嫌味のためであるが、今のフェリアの断りはメイドへの気配りと優しさだけである。

 

「ところで、フェリアから声をかけてくるとは珍しいな。どうしたのだ?」


「本当にこれでよろしいのですか? ヨンバルディ王子殿下には申し訳ありませんがお断りして帰国するという選択肢もございます。

ヨンバルディ王子殿下のご様子を見るにご無理を通されようとしているご自覚はあるようですし」


「そうだな。だが、フェリアが言ったのだろう。君を王太子妃にそして王妃にしたいのなら頑張ってみよ、と」


「それはそうなのですがもし今回のことが無くなっても王妃陛下ならまたきっとチャンスをくださいます」


「なら尚更これが成功すれば御の字。失敗しても問題ないと考えられるではないか。

私は今回のことはヨンバルディ殿下の問題を解決することよりも私が淑女のことをもっと知るための機会を与えられたのだと思うのだ。

でなければすでにドレスもハイヒールも用意されているなど可怪しいことだろう?」


「そうですわね」


「私はフェリアがヨンバルディ殿下の恋人役になるくらいなら私がその婚約者を口説くという意味で交代を申し出たのだが、こうも上手く運ばれると母上の、否、淑女の恐ろしさを感じるよ」


 イードルは苦笑いした。自分の母親がバーリドア王国の淑女代表であることはすでに刻み込まれている。


「イードル殿下にそのようなお考えがおありになられていたのですね。

意地悪のつもりはありませんが、わたくしはイードル様が淑女としてこの作戦に参加なされることにホッとしております」


「なぜだい?」


 イードルには乙女の機微はわからない。

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