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12 王妃陛下の期待

「ヨンバルディ王子殿下。わたくしであれイードル様であれ恋人の身分はどうするおつもりでございますか?」


 フェリアが舵取りをして話の進ませる。


「僕がこの離宮に休養に来ておりその時に出会った身分を隠したご令嬢とする予定です。

フェリアさんでしたらどこかの国から逃げてきたご令嬢と考えてくれるでしょうし、イードル殿下でしたら国内の誰かのご落胤と取ってくれるでしょう。

ポイントはこちらからそれらについては何も言わない何も情報を流さないということです。

流す情報もないのですがね。あはは」


「では、どちらがお受けしたとしてもわたくしたちは別行動ですのね?」


「フェリアさんがお相手でしたら僕は学園に留学するイードル殿下とここで待ち合わせをしておりその合間に出会ったということでイードル殿下たちの身元は隠すことはないです。

イードル殿下がお相手となると、フェリアさんにゼッドさんという偽婚約者を付ける予定がありますから身元を隠さねば未来の王妃様の醜聞になりかねません。フェリアさんの身元は僕の母の親類ということにしようと考えております」


「それは大丈夫なのですか?」


「僕の母は二国向こう国出身なのです。残念ながら母方の祖父母とは会ったことはまだありません」


「そうでしたの」


「僕は祖父母と手紙のやり取りはしておりますので交流はあります。もしこの婚約破棄が成立すれば僕も醜聞は免れませんのでそれを好機と捉え祖父母に会いに行くつもりです」


 ヨンバルディが側妃の息子で側妃はヨンバルディが幼い頃に事故で亡くなったことをイードルたちはすでに知っている。


「そうですのね。

それにしてもヨンバルディ王子殿下お一人でわたくしどものことをそこまでお考えになれるとは、大変失礼ですが思えませんの。我が国の王妃陛下のご采配ですわね?」


「そうです。義母である我が国の王妃陛下を通してバーリドア王国の王妃陛下にご協力を願いました」


「母上ぇ! なぜですかぁ?!!」


 頭を抱えたイードルはここにはいない淑女の代表たる方に訴えた。


「それはもちろん王妃陛下がまだイードル殿下をお赦しになられていないということです」


 レライははっきりと王妃陛下の代弁をする。


「そんなァァァ」


「王妃陛下はイードル殿下が淑女への理解を深めない場合イードル殿下を王太子から外すことも視野に入れておられます」


「「「「「っ!」」」」」


 さすがにヨンバルディでさえも絶句した。


「それはつまりボイディスが……」


 レライは頷くわけではないが否定もしなかった。ボイディス親子が王位に執着していないことはイードルたちも知っているがレライはボイディスが隣国留学で愛しい人を見つけたこともその方と婚約を望んでいることも知っているはずだ。たが、敢えてそれは言わない。だからこそイードルはボイディスが王位に興味はなくともフェリアのためなら狙うかもしれないと考えてしまった。


 イードルは捨てられた犬のような顔をフェリアに向けた。

 フェリアは誰にもわからぬほどの息を吐き出した。


「イードル様。わたくしはイードル様をお支えしていこうと心に誓いました。この留学も見聞を広げることが王太子妃に役立つと思ったからお受けすることに決めたのです。

しかしながらわたくしの立場を鑑みるに王太子を降りたイードル様とわたくしとの婚約を父が許すとは思えませんの」


『いやいやいや! フェリア様の父親公爵閣下はフェリア様に甘々デレデレでフェリア様さえ望めばどんな立場になろうとイードル殿下との婚姻は許されるだろう』

 

 そんな考えは誰も噯にも出さない。不安いっぱいのイードルには思いもつかない。


「かといって、他の王太子殿下をお支えする気持ちになれるかと問われればそう簡単なものではないのです。

ですからイードル様が王太子を降りられるのでしたら、イードル様との婚約を解消した上で独り身を貫こうと思いますわ」


『フェリア様なら婚約解消ではなく破棄になっても引く手数多だ。それなのにお独り身を貫かれると申されるのか!』


 サバラルとゼッドが一旦目を見張った後顔を動かさず目だけ動かしてイードルの様子を伺った。


「それはダメだ。その人生が君の幸せとは思えない」


「そうですか。それならばイードル様にお任せするよりありませんね。王妃陛下のご期待にお応えしてくださいませ」


「母上の期待?」


「ええ。この国での行動を王妃陛下に認めていただきましょう」


 フェリアは腰を浮かせてイードルに近寄って座った。イードルの膝に手を乗せる。

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