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10 囮の交代

 フェリアがヨンバルディと交渉している間、イードルは違うことを考えていた。


 ヨンバルディの説明で婚約破棄をしたいということも相手の醜聞を得たいということもわかった。それを知っていたはずの王妃陛下がフェリアを寄越したのだから恩を売るのかその婚約破棄がバーリドア王国のためになるのかはわからないが王妃陛下は国として協力すべきだと考えているのたろうと思われる。

 その上でフェリアをヨンバルディの恋人役にしないで済む方法はないものかと思案していた。


『恋人か……。

そうだっ! 私がそのご令嬢を口説き不貞を働く女性として断罪してはどうか?

密会を何度かすれば充分に不貞の噂となるだろう。その上で実はトラップだったのだと公表すればいいだろう!』


 イードルはフェリアとヨンバルディの話を遮った。


「フェリアではなく私が変わりに囮になろう!」


「「えええ!!!!」」


 サバラルとゼッドは慄き喚き、フェリアは唖然とし、なぜかヨンバルディはにっこりとした。


「私がそのご令嬢を……」

「いやぁ!! そう言っていただけてホッとしましたっ!」


 イードルとヨンバルディの言葉が被ったが声もデカくて迫力もあるのはヨンバルディなのでヨンバルディに軍配が上がりヨンバルディはそのまま話を続けた。


「フェリア嬢が淑女として素晴らしいのはよくわかったのですがいかんせん線が細い。淑女ランクは上であっても物理的に来られたら勝ち目がないと心配していたのです。

メイドたちを見ていただいてもわかるように何せ我が国の者たちはそちらの国より大きい者が多いですからね。

半数の女性がイードル王太子殿下と同じくらいの身体だと思いますから疑問は持たれないでしょう!

イードル王太子殿下が淑女にもなれると王妃陛下から聞いた時はびっくりしましたが僕にとって大変喜ばしいことです」


「ちょっ、ちょっ、ちょっ! 待ってくれ!

私は女装などしない。男としてその公爵家のご令嬢をだなっ!」


 レライがイードルの肩に手を置いた。


「わたくしどもが全力を持ってヨンバルディ王子殿下に納得していただけるお姿にいたします。ただし、初歩の淑女見習いであることはご了承くださいませ」


「我々はまだ十七だぞ。そんなことは当然だよ。フェリア嬢が素晴らしすぎるのだ。フェリア嬢を基本にしてしまってはどの国にも淑女が片手ほどになってしまうだろうな。

ハッハッハッハッ!」


「お褒めに預かり光栄でございます」


 フェリアは失礼の無いよう即座にお礼の言葉が出たが予想もできなかった展開に心はとても動揺している。


 フェリアは予想できなかったが王妃陛下はここまでのことを予測していたのだろう。

 それを察したのか三人も蒼白になっていた。


「イードル殿下……。女装……なさるのですか?」


 サバラルが恐る恐る聞くとイードルはぷるぷると首を横に小さく振る。声が出せないのは肩に乗せられた手にここにはいない王妃陛下の圧力を感じるからだ。


「ご安心くださいませ。サバラル様の物もご用意してございます」


 座っているサバラルの腰が砕けへなへなと床にヘタリこんだ。


「イードル殿下を女性同士で守るとなると先程ヨンバルディ殿下が仰られたようにフェリア様では物理的にご無理でございましょう。

ですから、サバラル様がご一緒に女装される必要がございます」


「そんなぁ」


 食事が終わるまでの楽しい気分など吹き飛んでしまった。


「サバラル様のお母様であられる公爵夫人はサバラル様のよい経験になると大変お喜びになっておられました」


 レライは優雅な笑顔で説明する。

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