前作のあらすじ
半年ほど前のことである。
バーリドア王国の王都にある貴族学園で事件が起きた。
王子イードル、公爵令息サバラル、侯爵令息ゼッドが男子生徒たちにおだてられ男爵令嬢リナーテに庇護欲をそそられて英雄症候群に陥った。
「彼らは男爵令嬢リナーテを王子妃にと望んでいるのかもしれない」と周囲に思われる言動をした時、淑女を軽んじていると判断された三人はレジェンド淑女たちの反感を買った。
レジェンド淑女とは王妃陛下を筆頭としたそれぞれの母親だ。
そんなことに気が付かない三人は学園の中庭でやらかす。
イードルの婚約者である公爵令嬢フェリアに婚約撤回を申し出て、男爵令嬢リナーテを王子妃にすると宣言してしまう。
リナーテは即座に「自分は特級淑女にはなれないから王妃も無理だ」と拒否したが、三人はリナーテが遠慮していると勘違いし「リナーテなら大丈夫だ」と宣った。
「では、お三方が淑女A科の授業に三ヶ月耐えて特級淑女になってください」
リナーテは笑顔でそう言った。
淑女A科とは特級淑女になるべく努力する見習い淑女たちのクラスであり高位貴族令嬢たちが在籍している。リナーテは下級貴族令嬢らしく、メイドや平民になるための授業が主である淑女D科の生徒である。
淑女A科で学ぶことになったため三人はきついコルセットをつけドレスを着てどデカイハイヒールを履かされる。
これを『ドレスの罰』という。
レジェンド淑女たちが充分に関わっているので学園も家庭もその罰に大変に協力的であった。
淑女の苦労を知り自分たちの婚約者への軽んじた態度を反省した三人はそれぞれの婚約者たちには赦してもらったが、レジェンド淑女たちはまだまだ怒りが収まらない様子である。
これはそんな三人が婚約者との関係修復に励んでいる頃のお話である。