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言いにくいこと(千鶴)

作者: 狼花

 昼食を食べ終えた午後。


 私がパソコンでネットのニュースを見ていると、奈々がそわそわしながら話しかけてきた。

「あ、あの…母さん」

「何?」

結構、緊張しながら話しているようで口元が少し震えているようだ。


 「あ…やっぱりなんでもないです」

そう言うとキッチンを出て自室へ向かう長女。

今のような、やりとりが3日前から続いている。


 何か言いたいことがあるけど、いざという時に言葉が出ないようだ。


・・・  何か、悩み事かしら?  ・・・


ーーー


 とりあえず、妹の桃花なら姉の悩みを知っているのかもしれないと思い。

奈々が自室に戻って、しばらくして桃花の部屋を訪ねた。


 「桃花、入るわよ」

「あ、どうぞどうぞ」

部屋の奥から声が聞こえたのでドアを開ける。


 「どうしたの? お説教?」

「そういえば、あんたの部屋に入るのってお説教の時しかないわね」

「ホントだよ、もう少しコミュニケーション大事にしようよ」

「まず、怒られないようにしてほしいのだけど」

「今週はまだ何もしてないけど」

「先週はトイレタンクにティッシュ詰めて、トイレを破壊したわね」

「・・・・・・・」


 言葉に詰まる桃花は私から目をそらした。

そろそろトラブルガールからクラッシュガールと呼ばれる日も遠くないだろう。


 「それで、話というのは奈々のことなんだけど」

私は桃花にここ数日の奈々の様子を話す。


 「あ、それなら。多分、友達の引越しのことだと思う」

「引越し?」

「そうそう。なんかプレゼントの相談とかされたから、高校生だしアルバイトもしてるんだからそれなりのものあげたほうがいいよねって言っといた」


 「もしかして、あんたが余計なこと言ったから、あの子さらに悩むことになったんじゃ・・・」

「え、どういうこと?」


 「最近、奈々。弓道具一式を新調したでしょ」

「そういえば、高級な布に包まれた物を持って喜んでたような」

「で、お金がないところに友達の引越しの話が来た」

「そこで、私に予算少な目で渡せるプレゼントを相談しに来て・・・」

「そこであんたなんて言った?」


 「ああ!! そうか、そういうことだったのか!!」

桃花は頭を両手で耳を塞ぐように押さえつけ『やってしまった』という顔をしている。


 ・・・  奈々、相談する相手間違えてるんじゃないの?  ・・・


ーーー


 

 さて、とりあえず奈々の悩みはわかった。

しかし、ここは親が出しゃばるところだろうか?


 本人が助けを求めないなら、自力で頑張って乗り越えさせたほうがいいとも思う。

けど、普通にお小遣いとしてお金を渡せば解決する問題でもあるし・・・


 「うーん」

親として悩む。


ーーーー


 「奈々、ちょっといい?」

夕飯前に奈々の部屋を尋ねる。


「あ、ちょっと待ってください」

ドタバタと中から音がしてドアが開く。


 「どうしました?」

「はい、これ」

私は奈々に五千円札を渡した。

「え、いいんですか?」

「たまには、ね」

「ありがとうございます。大事に使わせてもらいますね」

受け取ったところを見ると、やはり金欠だったようだ。

いつもなら、「大丈夫です」と答えるこの子があっさり受け取ることなどまずないのだ。


・・・ やっぱり、お金が欲しいと言えなかったのね ・・・


 親としては困っているときにはちゃんと相談して欲しいんだけど。


この後は、ちょっとした雑談をして奈々の部屋を後にする。

いいことをしたあとは気持ちがいい。


ーーー


 「見ーちゃった、見ーちゃった!!」

奈々の部屋を後にして振り返るとそこには問題児がいた。


 「奈々にお小遣い渡したんでしょ?」

「そうね、渡したわね」

「私には何もないの!?」


 ほら、出た。


 「そうね、あんたにもお金の話があったわね」

「え、お小遣いアップですか!!」

「はい」

「ん、何これ!?」


 渡したのは水道の修理費用の請求書。


 「あ、あの母上…こ、これは」

「先週、壊したトイレタンクの修理費用だけど」

「もしかしてですけど、お小遣いから引かれます?」

「逆に増えると思う?」

「・・・・・・」

さっきまで、鬼の首を取ったかのような威勢は何処へやら急に桃花の顔は青ざめていく。


 「それで、支払方法だけど一括? それとも分割?」

「・・・・・あ、あの・・・」

「何?」


      「家族割引は適応されますか?」


  ・・・   こっちの子は言いにくいこともハッキリいうのよね… ・・・    


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