ルイザとアルフレッド 2
「じゃあ、次ね」
「最近、近くの洞窟に住み着いたコボルトの群れに牧場を荒らされ困っていますどうか銀貨50枚で退治をお願いします。~メイフィールド村長ボストン」
「コボルトの群れ……銀貨50枚ならレイラ辺りが受けてくれるんじゃないかしら」
「そうですな…彼女なら問題ないでしょうな」
「彼女、やけにコボルトを嫌っているというか、憎んでるものね」
「確か、レイラの頬の傷はまだ彼女が冒険者なりたての頃、コボルトに付けられた傷ですからね、あれからコボルトを目の敵にしている」
「そうだったわね」
アルビオンの冒険者の情報はほぼ頭の中に入っているアルフレッドのいつものうんちくが入る。
「これは昨日届いたクエストじゃが……」
今度はアルフレッドが依頼書を読み上げた。
「大陸街道、西行きのルートにゴブリンの群れが出没し商隊を襲う事件が、二件起きております。棲み処の調査とゴブリン退治の依頼申し上げます」
アルフレッドが険しい顔で眼鏡のズレを直す。
「褒賞金100アルビオン金貨。褒賞金のほうは早く解決していただければ幾らか上乗せさせて頂きます。~マヌエル・コスタ」
街の豪商コスタ家当主からの依頼だ。#褒賞金__ほうしょうきん__#を弾んでくれるためギルドにとっては良い顧客になっている。
「ゴブリンだけで商隊を襲うとは考えにくいのう。裏で統率している知能の高い魔物が潜んでいるかもしれんな」
アルフレッドの分析は当てになる。
「確かに……早めに調査したほうが良さそうですね」
ルイザも賛成した。ゴブリンは本能的に動く魔物だ。人を襲うのが目的なのか、商隊の荷物を狙っているのかを知る必要があった。このままでは被害が近くの村や町にまで及んでしまう可能性もあった。
近年アルベニア王国は、隣国ムドラスとの関係が悪化しており、兵の多くが東の国境付近に駐屯していた。国内の治安維持や事件に対応する兵は必要最低限しか残していなかった。
この事が、ギルドに様々な事件解決の依頼が回って来る要因になっていた。いままで国軍の警備隊などが対応していた小さな事件が、冒険者ギルドにクエストとして依頼されるようになったのである。
今の状況では、アルベニア国軍や警備隊に依頼しても実際動いてくれるまでに時間が掛かる。そのため大枚はたいてでも冒険者ギルドへ依頼する商人や貴族は多かった。
商人にとって魔物により街道が閉鎖されるのは死活問題だ。素早く対応してくれる冒険者ギルドの存在は有難かった。