ルイザとアルフレッド
今日も様々なクエストがアルビオンの街の冒険者ギルドに送られてくる。その処理しているのは、ここアルビオンのギルドの責任者ルイザと助手のアルフレッド爺さんだ。
ルイザと呼ばれた女性は、金色の髪が胸まで伸びていて、目は透き通るエメラルドグリーンの色をしていた。そして長くとがった耳。その耳が先の方だけちょこんと垂れている。
そう彼女はエルフである。正確にはハーフエルフで父親は人間らしい。年齢が150歳位という事以外は、なぜ冒険者ギルドで働いているのかを知る者はいなかった。
彼女達の主な仕事は送られてきた依頼書の内容をチェックし,その依頼を解決できる冒険者のメンバーを選定する事だった。
ルイザは昨日届いた依頼書の束の中から一枚の書類を読み上げた。
「北の”古代遺跡群”の1つヨルムンガンド城に未だに眠っていると言われる王の冠を探して貰いたい。アルビオン金貨500枚でどうでしょうか? ランドール候より」
150歳だが若々しく澄んだ美しい声が部屋に響く。
アルフレッド爺さんのしゃがれた声がその澄んだ声に答える。
「ヨルムンガンドの城ですか……。Aクラスの冒険者が最低二人は必要でしょうな」
「確か、ムトンボとラマー・オドムが先週戻ってきてるから彼らに依頼しましょうか?」
「――あの二人はまだケガの具合が良くないから無理じゃ」
そう答えた助手のアルフレッドは、アルビオンの街の冒険者名簿を持ちながら部屋の中をウロウロ歩き始めた。
背はルイーダの半分ほどで痩せていて、頭にはいつも黒い毛糸の帽子をかぶっている。分厚いレンズの眼鏡を掛け、立派な口ひげをたくわえてモゴモゴと喋るのが癖だ。
見た目は頼りなさげな小さなお爺さんだが、この大陸の遺跡や冒険者の名前と顔のほとんどを記憶していた。
「ウルリクンミという石像の化け物との戦いでかなりの怪我を負ったそうじゃ。今治療中でしばらくは安静が必要でしょうな」
エルフのルイザでさえ聞いた事もない魔物の名だ。アルフレッドの知識に感心する。
「分かりました……ランドール候が急いでなければ少し保留にしておきましょう」
ルイザは次の依頼書に目を通す。
「海賊ハンマーヘッドの洞窟の財宝の件はどうなりましたか? 連絡待っております。~スロース伯爵より」
ちょっと苛ついた様に早口でルイザは読み上げる。
「全く! なんてせっかちな人かしら……二日前に街を出たばかりですよ、まだ洞窟に着いてもないはずです」
呆れた様子のルイザは少し声が大きくなる。
「一応返事を書いたほうがよいかの~?」と、アルフレッド。
「いえ。放っておきましょう」
ルイザは今読み終えた依頼書をテーブルに放り投げた。