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黒猫とお喋りインコの小さな冒険  作者: ドラゴン・リーダー
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五話 母猫の居場所探し

五話 母猫探し


朝陽が上り、繁みの中に一条の光が差し込んでくるとピーチャンが目を覚まし、羽の中から頭を持ち上げ、隣で寝ている子猫を見ていました。

繁みの中の段ボール箱で、小さな体のお喋りインコと、黒い子猫が寄り添うその姿は、まるで信じあう友達をお互いに守ろうとしているかのようです。

「おはようミャーちゃん。見てごらん。こんな繁みの中にまでお日様の光が届くなんて、きっと凄くお天気がいいんだよ。」

ピーチャンが子猫に朝の挨拶をして言いました。

「おはよう、ピーチャン。本当だね。きっとよい日になりそう。ピーチャンには名前付けてもらったり、食べ物持ってきてもらったり、ありがとう。私お母さんいなくてもピーチャンがいてくれるからとっても嬉しい!」

子猫は言いました。それでもインコのピーちゃんには分かっていたのです。どんなに気丈に振る舞っても、子猫は母猫に会いたいのだ、ということは。

「うん、僕もミャーちゃんと一緒に居られて嬉しいよ。食べ物探してきたら、そのあとお母さん探しに行ってくるね?早くお母さんに会いたいもんね。」

インコはそう言うと、子猫の傍から段ボール箱の縁にピョコンと飛び乗り

「それじゃあ、食べ物持ってくるね。待っててね。」

そう言ってパタパタと飛び立っていきました。


しばらくするとインコがなにか咥えて戻ってきました。

「ミャーちゃん、お待たせ。」

住処にしている段ボールの縁にピョコンと止まると、

咥えていたものを子猫の前に置き

「あ~、重かった。誰か昨日の夜のうちにお弁当でも食べたのかなぁ。ウインナーが落ちてたよ。まるごと一本は僕にはさすがに重いよ。ミャーちゃんにはちょうどいいかもね。でも少し足りないかな?」

「ピーちゃん、ありがとう。もう私も大きくなって自分でも食べ物探せるからこれからは自分で探すようにするね。お母さん探しに出掛けたら、自分でも食べ物、探さなくちゃいけないものね。」

子猫は段ボールの縁から見ているインコに向かって答えました。子猫が食べる様を見ていたインコは

「でも探すのはいいけど、廻りには気を付けなよ。人間に見つかると苛められるかもしれないから。それでこれからだけど、僕はお母さん探しに出掛けてくるね。最初にお母さんのこと教えてくれた猫さんにもう一度会って、詳しく聞いてみるよ。隣町に居るようなこと言ってたし、少し分かるかもしれないから。」

そう言うと段ボールからピョンと降りて繁みの中をトコトコと歩いていきます。子猫は後ろから声をかけました。

「ピーちゃん、ありがとう。私も行こうか?」

インコは首だけ後ろにクルリと廻して

「大丈夫だよ。僕なら飛んで行けばすぐだけど、ミャーちゃんはそういうわけにはいかないでしょう?」

子猫にそう答えると繁みの中から出るとお日様が照る青空に向かってパタパタと飛び去って行きました。

「ピーちゃん、気を付けてね」

子猫は飛び去るインコに向かってそっと呟きました。段ボールの中で両手を揃えてその上に子猫の小さな顎を乗せた姿は、まるでインコの無事を祈っているかのようです。


子猫を置いて繁みから出たインコは、以前に母猫の話をしてくれた猫のいた町へと向かいました。公園から離れた住宅街の一角にある、二階建ての古いアパートの階段の下にその猫は居ました。以前来たときはその猫一匹だけでしたが、今日は友達なのか三匹で居ました。前に来たときは、その猫の前に急に行ったら危うく食べられそうになったので、今回は少し離れたところに降りてゆっくりと近付き、声をかけることにしました。

「おはよう、猫さんたち。この前は怪我した猫の話を教えてくれてありがとう。今日は詳しく聞きたくて、また来ちゃった。」

ゆっくり話しかけながら三匹の猫に近づいて行くと、一匹の猫は口元をニンマリとしましたが、あとの二匹は今にも襲いかかろうとするかのように体を低くして身構えました。

「ちょっと待て、待て。この小鳥は食べたらダメだよ。俺の知ってる奴だから。」

「なんだ、お前の知り合いか。でもどうして俺たちの言葉を話すんだよ。猫でもないのに。」

隣にいた猫が不思議そうに聞いてきました。

「またそこから?いっつもそこから話さなくちゃいけないのは面倒臭いな!あのね、僕は人間の言葉も話せる頭のいいインコなのね!猫さんの言葉くらい話せるのは当然でしょう?」

インコは胸を反らせていかにも、というように話しました。

「それでこの前聞いた怪我をした猫さんだけど、隣町の優しいおばさんに助けられて、連れていかれたようだけど、何処の家か分からないかな?」

インコは三匹の猫達に聞きました。

「悪いけど怪我した母猫が助けられたというのは聞いたけど、何処に行ったかは知らないな。隣町の猫にでも聞いたら分かるかも知れないけど、誰が知っているかは分からないよ。でもそれを探すのは大変だと思うよ。お前達は知っているかい?」

一匹の猫がほかの二匹に聞いたけど、どちらもただ首を横に振るだけでした。

「それじゃ僕は隣町の猫さん達に聞いてみるよ。どうもありがとう。」

インコは三匹の猫達にお礼を言ってパタパタと羽音を立てて飛び立って行きました。


隣町まで来たインコは、塀の上で横になって丸くなった猫を見つけると、その塀の上に間を置いて舞い降りました。

「ねぇ、ねぇ、猫さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ここら辺で傷ついた母猫を助けてくれたおばさん知らない?隣町で保健所の人たちに追いかけられて怪我した猫なんだけど?」

声をかけられた猫は、誰が話しているか分からずに頭を持ち上げて目を開くと、目の前に小さなインコがいます。目をパチクリさせて

「今話したのはあなたなの?どうして私たち猫の言葉を話しているの?」

やはり小さな小鳥が猫の言葉で話しかけたのには驚いたようです。

「またかよ。あのね、僕は人間の言葉も話せる頭のいいインコなの。猫さんの言葉を話せるのは当然でしょう?おっと、僕を食べようなんて思わないでよ。一応用心のためわざと遠くに降りたけど。ところでそんな母猫のこと、知らないかな?」

「そうなのね。頭がいいのね。悪いけど私はそんな母猫のことは知らないわ。隣町から来たようだけど、この街で探すのなら大変よ。そうだ、長老の黒猫さんなら知っているかも知れないわよ。長老の黒猫さんのところにいろんな情報が入るようだから。」

ねぇ、猫さん。その長老の黒猫さんは何処に居るか分かる?その母猫さんの子猫が僕の友達なんだ。だからその母猫さんを探してあげたくてこの街まで来たんだけど。」

インコは今までの経緯を話すと

「それならこの塀から見える鳥居のある神社があるでしょう?いつも長老さんはそこに居るから行ってみたら?でもその子猫ちゃんのために母猫を探すなんて。あなたも大変ね。頑張ってね。」

そう言うとその雌猫はまた頭を前足の上に預けて目を閉じ、日向ボッコを楽しむ態勢に入りました。インコは軽く頭をピョコンと下げ、お礼の言葉を言うと鳥居を目指しめて飛び立ちました。


神社まで来たインコはどこに長老の黒猫がいるか探して見ました。すると神社の縁側で一匹の黒猫がやはり日向ボッコをしているかのように丸くなって寝ているのが見えました。

「あのー、長老さんですか?」

インコは声をかけてみました。もちろん食べられてはたまらないので距離は離れています。

「なんじゃ、小さな小鳥ではないか。おまえさんかい?今ワシに声をかけたのは。」

長老は面倒臭げに頭を上げるとインコに訊ねました。

「そうです。僕です。人間の言葉も話せる頭のいいインコです。聞かれる前に言っておきますけど、人間の言葉も話せるので猫の言葉くらいは簡単です。いつも説明しなくちゃならないから面倒臭いけど。あのですね、隣町で保健所の人に追いかけられて怪我した母猫を探しているのですけど、御存じありませんか?その子猫と友達なもので、母猫さんを探してあげたくてこの街まできたのですが。この街のおばさんに助けられてこちらに来たようなのですけど。」

「ああ、その話なら聞いたよ。何でも隣町で餌を探していて、保健所の人間に追いかけられて怪我したときに、この街の優しい女の人に助けられて連れてこられたようじゃな。」

長老の黒猫がインコに経緯を説明してくれました。

「そうです、その母猫だと思います。その家を知っていますか?」

インコは一歩前に出て長老に聞きましたが場所までは分かりません。

「それなら今度長老の集会があるからそのときに聞いてやろう。この街の各地区の長老達が集まる集会があるのじゃ。そのときその地区の長老ならば分かるじゃろうて、ワシが聞いておいてやるわ。」

「ありがとうございます、長老さん。それでその集会というのはいつあるのですか?子猫に知らせてやりたくて。」

「明後日の金曜の夜にあるのじゃ。」

黒猫はインコと約束をしました。インコはこれではミャーちゃんの母猫が見つかるものと喜び、早く子猫に知らせたくて

「長老さん、それじゃまた土曜にこちらに来れば分かりますよね?」

長老の黒猫と約束をもらってインコは嬉しくてなりません。長老にお礼の言葉を言うとパタパタと公園に向かって帰って行きました。高い空の上から見ると、塀の上ではあの雌猫が寝ています。そして子猫の待つ街まで帰って来るとあの三匹の猫達が集まってインコの姿に気がつくと、尻尾を振って挨拶しています。インコはみんな仲間なんだなと思い大きく輪を描くと

「みんな、ありがとうね。どうにかお母さんねこも見つかりそうだよ。本当にありがとう。」

と空の上から叫びました。


公園に着くとすぐにインコは子猫に今日あった出来事を身振り手振りを交えて話します。インコの話を聞き終えてから子猫が言いました。

「ピーちゃん、本当にありがとう。私ピーちゃんが居なかったら死んでたかも知れないし、その上お母さんまで探してくれて本当に嬉しい!」

「何言ってるの、ミャーちゃん。僕だってミャーちゃんに噴水で溺れそうになったとき、ミャーちゃんに助けて貰ったじゃない。それに住むお家だってくれたしさ。お陰でこうしてミャーちゃんとも友達になれたし。今年のクリスマスはミャーちゃんとミャーちゃんのお母さんと一緒に過ごせたら嬉しいね。でもその前に早くミャーちゃんのお母さんと会わなくちゃ。早くミャーちゃんもお母さんと会いたいでしょう?」

「そうね、早くお母さんに会いたい。きっとお母さんもピーちゃんのこと、好きになるよ。」

そう言って一匹と一羽の一日がまた暮れていきました。空の上には星が瞬き、三日月の月が優しい光を投げ掛けています。












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