9_犬のように食べさせてあげる。
「飲み物がないとさすがにのどか乾くわね。」
アンネリーはそう言っているが、マリアが飲み物を用意する様子も無かった。
「あの、マリアさん?」
「私、いくら地位が低くても愚民のように扱われるとつらいわね。」
「あれは冗談のつもりで言っただけよ。大体、何の材料も無しにクッキーを用意したから変だと思ったわ。」
「私、本当は戦うつもりで入隊したつもりなのに。お金持ちの娘に召使い扱いされるだなんて。スタンさん、私これからやって行けると思う?」
話に混ざりたくなかったが、流石に空気で居続けるのは無理があったようだ。
「マリアちゃんのクッキーは美味しいね。」
「誰もそんな話してません。大体、いくら財界のトップにいる方の一人娘とはいえ、メイド扱いされるほど私は寛容ではないんです。」
「じゃあ何でクッキー作ったのよ!?」
アンネリーの叫びは分からなくもないが、マリアは彼女からクッキーの袋を取り返す。
「私はただお友達が欲しいだけなんです。もっと純真な気持ちで私はアンネリーと接したい。」
「ま、マリア。」
まさかマリアにそんな気持ちがあったとは、流石にアンネリーもたじろいでいた。
「こうしてみんなに私の気持ちを少しでも受け取って欲しい。なのに、アンネリーはまるで私を灰をかぶった行き遅れの召使いみたいに。」
「べ、別に私そんなつもりじゃないし。私がどうしろというのかしら。」
「そうね。まずはこうして、私に向かって普通に座ってください。」
「こ、こう?」
「はい、あーん。」
「あの、マリアさん?これは一体。」
「お友達同士なら、時折片方が食べ物を口にあげる遊びをするでしょう?だから、こうして食べさせてあげているんです。はい、あーん。」
左手で顎に優しく触れ、クッキーをアンネリーの口に入れようとする。
が、アンネリーの顔はどちらかといえば恐怖で引きつっていた。
「これ何かおかしくない!?顔、顔が怖い!?」
「やだ、私はお友達に親切にしてるだけなのに。アンネリーって、物凄く意地悪で失礼な方なんですね。」
「ひっ、た、助けなさいよそこ!?もがっ!?」
「あらやだ可愛い。」
アンネリーの悲痛な声が聞こえてきたが、他の子たちのことも見ておきたいのでスタンは笑って誤魔化す。
「えっと、他に用事があるんで。」
アンネリーのことは仕方がない。
とりあえず、彼女が生還できる事を祈るしかなかった。
他の子たちは今どうしているのだろうか。
任務が無い日の自由時間になると、この場所では探しにくい。




