8_一応マリアは食べさせてあげることにした。
マリアと移動して、広い居間に入る。
ブリランテ小隊のために作られた室内で、宮殿区に比べればかなり質素に感じられた。
その場所にある広いテーブルの席に座っているのは、アンネリーだ。
「あ、アンネリー。さっきまでどこ行ってたの?」
「どこって。普通に散歩していただけよ。」
「私、結構探し回ったんだけど。ねえ、クッキー食べる?あり合わせで作ったものだけど。」
「そうね。ちょうどいいから、貴方紅茶を淹れてくれるかしら?」
貴方、とはつまりスタンの事だろうか。
突然少女にお茶出しをさせられるのは割とおかしいが。
「アンネリー。この人は私たちの上官なの。ここは貴方の家じゃないんだから。」
「面倒ね。さっきメイドの人にも頼んだけど、私たちはあくまで宮廷の召使いであって低俗な貴族のメイドではありませんって言われたわ。」
いや、自分がやれよとスタンとマリアは心を同じくした。
「家からメイドを呼ぼうとしたけど、メイド長との連絡が禁止されてるし。私が何かあったらどうするつもり?」
「別に。どうもしないけど。」
マリアの辛辣なつっこみをアンネリーは聞かず、彼女が持っていたクッキーを食べ始める。
「まあまあかしら。」
「アンネリーを太らせるのも悪くないけど、私は別に貴方のために作ったんじゃないんだから。」
「じゃあ誰のためよ。」
「このクッキー、あり合わせって言ったでしょ?元は錬金術の研究なの。」
「げっ、まさかそこら辺の雑草を材料に!?」
「雑草じゃないんだから。錬金術に必要なのは物の性質が近似したもので、ある程度疲れる物は全てリサイクル可能なんだから。」
「雑草を材料にするのをリサイクルって言わないわよ!お腹壊したらどうするの!?」
「詳しい事を言うと話が長くなるから端折るけど、錬金術に使われた物は物質であれば最小の単位に分解されるだけだもの。私は魔道書に書かれ術式を起動して、クッキーというレシピをこなしたの。別に悪くない出来でしょう?」
「でも元は雑草よね。」
「うーん。壺に入れた後どうなっているかは、魔道書の術式を解読しないといけないし。別に死なないし、痛くなったら一緒に寝てあげる。」
「意味がわからないんだけど。とにかく、変な材料使って料理しないでよね。」
「料理じゃなくて錬金術だってば。下手をすると、料理の方が手間がかかるもの。」
錬金術に関してはスタンもよく分からないが、マリアとアンネリーの関係はそれほど悪くないように見えた。