6_秘書からの忠告の後に
「彼女たちの心理的なサポートは分かりましたが、何故魔法少女だけを編成した小隊が作られたんですか?魔法少女だからといって、万能というわけじゃないのに。」
「彼女たちは私たちにとって力となる存在だと確信している。これは五年前から決められたことで、その有用性は明らかだ。」
五年前からブリランテ小隊は編成されており、最も入隊期間が長いのはスフィアの四年間ということになるらしい。
スタンに渡されている資料から分かる通り、少女たちは出身地も地位もバラバラだ。
ある意味一番近いのはリーネ、スフィア、セシリア、リンダの四人だが。それでもまだ難のある編成だ。
リンダの場合、紛争を起こしているルフト王国には最終的に帰国する意思を持っている。
セシリアに強引な形でルフトから連れ出されたが、彼女からしてもルフトの紛争に介入するメリットが無かったかだろう。
ルフトの紛争には外国の貴族の思惑も絡んでおり、下手をすればシャルロッテやエミーリエすらリンダにとっては敵となるかもしれない。
「一ついいですか?」
「何だ?
「ルフトの紛争の理由に絡んでいる子はリンダだけですね?」
「そうだな。しかし、今後介入するかもしれない。だから厄介でもあるんだ。今はまだよくても、時が来たら彼女はお互いを敵とみなすかもしれない。ほとんどが普通の女の子ではないから、その分互いの過去については慎重になり過ぎている。男なら何かすれば殴ってすむんだが。」
秘書の言い方もどうかと思われるが、確かに少女たちの心理的な部分をコントロールするのは簡単なことではない。
「しつれいしまーす。」
ドアがノックされる。
入室してきたのはマリア・キシュファルディだ。
「マリアさん?」
「クッキー焼いてみたんですけど。みんな居ないのでこっちに来てみました。」
小さな袋にクッキーが積まれている。マリアお手製のクッキーだが、スタンにとっては何故?と考えてしまう。
「今はいい。私はこれから別のところで仕事があるから、スタンと一緒にお茶会でもしていればいいだろう。これからの仕事には期待している。」
と、かなり適当に言ってメリアは出て行ってしまった。
「あの。クッキー食べますか?」
「じゃあ、一口だけ。」
クッキーを一つもらい、食べてみた。
出来立てだから、普通に美味しい。
「何で、クッキーを焼いてたんだ?」
「私の趣味みたいなものです。本当はパンを焼きたかったんですけど、何故か材料がなくて。アンネリーからパンがなければお菓子を作ればいいじゃないって。私、ちょっと一揆を起こす農民の気持ちが理解できちゃいました。」
それでもクッキーを作れたのは凄いが、今この城にいるのはマリアだけなんだろうか。