5_別に拉致(ゲッツ)したかったわけじゃない。
「私はリンダをここに連れてきた方がいいと思っただけよ。あの場所にいても、リンダは搾取されるだけだって分かりきってるでしょう?」
ルフトでの紛争の中で、リーネはセシリアが何をしたのか気になってしまう。
余程のことでもない限り、紛争中の他国に入国して問題を起こしたくはないはずだが。
「でも、その時は隠密行動が前提だったじゃない。それで貴方はリンダを見つけると、あの子を助けなきゃって。あまりにも大声だから赤面してしまったわ。」
スフィアはため息をついて長いオレンジ色の髪をはらう。
リンダは銀?に近く、セシリアは赤い髪でそれぞれ違った個性を持っている。
それでも、どこか仲のいい姉妹のようにリーネは感じていた。
「リンダを連れて行かなかったら、どうなっていたの?」
「彼女も傭兵だったから。私が知っている限りでも、少女に目をつけていやらしい事を考える軍人や貴族はいたから危ないと思ったのよ。」
リーネはそういうことかとうなづく。
「むしろセシリアにそういう目に合わせられるのかと思ってた。」
ただ、リンダのセシリアに対する第一印象はあまり良くないようだった。
「なんで?」
「私はあの場所で戦いたいのに、セシリアは反対するし。軍人の娘はよく分からない。」
「まだ根に持ってるの?貴方一人でどうにもならないのに。」
「この場所は悪くないけど、ルフトも殆ど問題が解決したわけじゃない。」
「あの、二人とも。リーネもいるから、その話は今度にしましょう?今日は仕事がないから、町に買い物でも行かないかしら?」
ソフィアの言葉に、リンダとセシリアは黙ってうなづく。
ルフトで三人が具体的にどんなことをしたのかは、リーネはあまり聞かない方がいいと思った。
とりあえず、彼女たちと気晴らしに町に出ることになったが。スタンの方は順調だろうか。
「魔法少女は12人編成される事になったが、その全員が仲がいいわけではない。」
執務室で小隊隊長の認証を貰った後、コルネウスの秘書メリアから忠告を受けていた。
「仲が良くないって、喧嘩でもするのか?」
「表面的には大人しい。若干一人を除いて、彼女たちは人の命令をよく守っている。問題は立場がな。リーネ、セシリア、ソフィア、リンダは地位が近いから恐らくそう喧嘩はしないが。その他の少女たちとは折り合いが悪い。」
「名前だけ聞くと、アインリッド以外の国から来た子が多いのは分かるけど。」
「シャルロッテとツェツィーリアは特に、地位と性格のせいで他の少女とは何度か決闘騒ぎを起こしている。」
「決闘て。」
「セシリアがシャルロッテに対し、手袋を投げつけて決闘を申し込んだのは、私も驚いたが。
魔法少女同士で戦わせぬように、スタンもサポートしてもらいたい。」
そうは言われても、スタンは11人の女の子を全員覚えるのも一苦労だった。




