2_町は賑やか
あの後山を下りていき、城下町に到着する。
その町は多くの人で賑わっており、二人は馬を連れてそのまま城の前まで移動しようとする。
「うう、気になるけど今は仕事中。」
何か欲しいものがあったのか、リーネは購買意欲を我慢しているように見えた。
「休暇に行けばいい。」
「スタンは、休暇があったらどうするの?」
「分からない。その日に考えるよ。」
「そんな感じだと仕事中毒になるよ?ほら、あそこに綺麗な噴水あるし。私と一緒に買い物してみる?」
「その気になったらな。この町でリーネと一緒に居るのは悪くないけど。」
王城ほどではないが、この町も観光地としては十分に派手に見える。
騎士の身分である以上、いつも見て回るようなことはできないが。
「前にデートしようとした時も時間が無かったし、戦う身の私はとりあえず我慢するしか。でも、適当にレストランでグルメレポしても悪くないよね。」
「それはいいけど、ヤクザと喧嘩して騒ぎを起こすなよ。いくら正当防衛だからって、町の中で本気を出せば損害が出るんだから。」
「わたしを怪獣みたいに言わないでよ。前だって私は悪くないんだから。」
「その自分は悪くないで一軒家を潰すのは怪獣並だろう。」
「ふーん?もし私が何も抵抗しないで他人のものになったらどうするの?」
「他人のものって。」
前に二人が所属していた部隊が駐留する町で、リーネは厄介ごとに巻き込まれては損害賠償を作ることが多かった。
怪我人やも多く、下手をするとスタンにも責任として影響が出てしまう。
リーネを何とかしてコントロールしたいが、この町にリーネを暴れさせるような事がないことをいのるばかりだ。
「それにしても、近くまで来るとでかいね。」
王城の近くまで来たが、その城の規模は近くだとかなり大きく感じる。
「あのてっぺんまで登ってみたいけど。一部は私たちの身分じゃ入れないんだよね。」
「王族と親衛隊のみの入居が許される区画だな。この町を一望できる人工物はあそこだけだから。ある意味、未知の領域としてはダンジョンそのものだろう。」
「もしかしたら、あの塔の中にお姫様が居るかも。」
「フアナ姫のことか?」
「え?いるの?」
フアナは、アインリッドの王族でウォルト王の子孫にあたる正統な人物で、噂ではとても美しいという評判があった。
今現在、フアナ姫はこの王城の宮殿区という区画に住んでいるのは事前の打ち合わせで確認していた。
丁度リーネはその時いなかったが、そこまで重要なことではないため説明はしていなかった。
「宮殿区に住んでいるけれど、多分俺たちでは入れないだろうな。あの塔に今も居る可能性はあるけど。」
「手を振ったら答えてくれるかな。」
「止めてくれ。大体、こっちからも見えないだろう。」
人力では建築不可能と言われるほどの高さなので、流石に手を振って居るリーネを見ることはできないだろう。
いや、偶然双眼鏡でリーネを見ている可能性はあるが。それもやっぱり出来過ぎた話ではある。
「うーん。いつかは会えるかな。」
「頑張れば会えるかもな。」
「本当?私が頑張って小隊で活躍したら会えるの?」
「その可能性は高いけれど、お姫様は政治的な地位を持つ存在であってアイドルじゃないんだ。くれぐれも変な事をしないように。」
「子供扱いしないでよ。スタンだってそんなに年違わないでしょ?」
「まぁ、確かに違わないけど。どっちかというと妹に対する心配だなこれは。」
「従者にお兄ちゃんと呼ばせたいという気持ちがあったならいいけど。」
いいのか?何で?とスタンは疑問を感じたが、そのままリーネは先に歩いて行ってしまう。
一体どういう気持ちでそんな事を言ったのかは永遠に謎のままだろうか。