11_夕方
ニナの言うように遠慮しているだけならいいが、まだ油断はできない所はある。
スタンも、貴族同士の争いで起きた戦いに巻き込まれたことはあるため多少は用心したい気持ちはある。
「ニナは更に北方の国から来ているから。打ち解けるのは大変だったんじゃないか?」
書類で見たニナの故郷は、他の少女と比べてかなり遠い。
「別に。私は問題ない。言葉を覚えるのは苦労したけど、今は慣れてる。」
「そうか。何かあったら俺に相談してくれよ。」
「考えておく。」
そこで、一旦その場から離れようとした時だった。
窓の向こうからエミーリエが見ていた。
目が合うとすぐに何処かに行ってしまったが、さっきまで見ていたのだろうか。
「どうしたの?」
「さっき、エミーリエがいたんだけど。」
「そう。」
「みんなバラバラに行動するから、すぐに見つけづらい。」
「夕食になればみんな集まるから。探す必要はないと思う。」
「そうだな。夕食なら、みんな来るだろうけど。」
エミーリエが何故こっちを見ていたのか、それ程意味はあるわけじゃないといいが。
色々な場所を案内してもらった後、ソフィアとリンダは個人用の買い出しのために別行動を取った。
リーネとセシリアは噴水広場で休憩しており、時間は夕方に近づいてきている。
「いい町だね。」
「もっと他にもいい店あるから、暇な時に一緒に行ってみる?」
「いいの?」
「この町は色々な人が商売のために来るから。質のいい道具が手に入りやすいんだよね。」
「セシリアは、ブリランテ小隊に入る前はどうしてたの?」
「私はアインリッドの軍人家庭で産まれたから。騎士学校でつまらない勉強ばかり。魔法少女の能力よりも、歴史や政治関係の科目が多いから。小隊に入隊させてもらえると聞いた時は直ぐに受け入れたんだ。」
「両親は反対しなかったの?」
「相手が両親の元上官だったから、断るにも断れなかったみたい。コルネリウスさん、昔は凄い人みたいだったらしいよ。」
「はあ。凄い人?」
「その人のおかげで私は入隊した後は、実戦経験を積められたし。騎士学校に居たら恐らく赤点ギリギリで怒られていただろうね。」
セシリアは勉強嫌いだが、騎士学校は基本的には軍隊や宮廷の職務に着任するための必須コースだ。
「騎士学校はどうしたんですか?」
「まあ、勉強はしなくていいわけじゃなかったけどね。ブリランテ小隊である程度実戦を積めた後は適当に仕事を見つけられると思うし。」
彼女は騎士学校を中退した扱いになっていることを否定はしなかった。
リーネからすると、彼女は自分がいた場所から逃げてきたように感じてしまっていた。