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~序章~
俺は何をしているんだ。
暗闇の中、途絶えていた意識が戻る。
はっきりしない意識の中自分の置かれている状況を把握しようと思考する。
頭痛がそれを拒んだ。
体の感覚が戻るにつれ、凍える寒さが体を襲う。
思考を諦め、意識を外に向けると騒音の中から微かな声が聞こえた。
誰かがいる……。
次は聞き逃すまいと耳に意識を傾ける。
しかし、先刻から聞こえる騒音が邪魔をした。
「おれはここだ!」
じっとできず、俺は叫んだ。
遠くから大きくなった声が届く。
だが、声はまたしても騒音にかき消される。
声の主も俺を探しているのかもしれない。
そう思うと居ても立っても居られなくなった。
ここにても仕方がない。
助けを求めるように俺は声のもとに向かって歩き始めた。
酷く冷たい体と不安定な足場が向かう足を鈍重にする。
はやる気持ちと覚束ない足取りのギャップが足をもつれさせる。
何度も転び、何度も立ち上がり歩いた。
そして、一歩また一歩と進んだ。
孤独による不安から逃れたい一心だった。
声が近づき安堵したのも束の間。
不意な浮遊感、刹那の後落下。
意識と体は濁流に攫われていった。