(5) 7/3 PM 2:20
――どうしようどうしようどうしようどうしよう。
二駅が過ぎた。
いくら考えても無駄な問答を僕はいまだにずっと続けている。
いやでも待っていれば答えは分かる。だが、例えば今日滅茶苦茶な大雨や暴風が吹いてくれれば、こんな事を考える必要もなかった。
やはり神を恨んだ。なぜ、空はこんなにも晴れているのだ。
――どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。
耐えられない。
そもそもどうして僕がこんな気持ちにならなければいけないのか。
こんな事で、僕も同罪にされてはたまったものではない。
知らない。何も僕は知らない。
ぷああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
その時、途轍もない汽笛音が耳をつんざいだ。
音は止まらず鳴り続けている。異常だ。こんなにも汽笛が鳴る事はまずない。
――嘘だろ、なあ、嘘だろ?
止まらない止まらない止まらない。
ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
汽笛の上に今度はブレーキ音も重なり、不快なオーケストラが電車内をかき乱していく。急激なブレーキが車内を揺さぶり、乗客達が大きくよろめく。
悲鳴と怒号が入り乱れる。中にはあまりの勢いにその場に倒れてしまう者もいた。
「おい何だよ!?」
横にいた寺谷も態勢を大きく崩していた。
やがて電車が停止した。車内はひどく混乱していた。
【えー……、大変失礼を、い、致しました】
車掌のアナウンスが流れ始めたが、その声には震えが混じり、車掌自身にも今しがた起きた事への戸惑いと恐怖が感じ取れた。
――嘘だ。嘘だ。嘘だ。
答えは出た。
震えが止まらない。
恐れていた答えが、求めていた答えが今出てしまった。
【ただいま、えー、と、当列車におき、おきまして、人身事故がはっ、発生いたしました】
周りからは落胆の怒りやため息が溢れた。特に目の前にいる寺谷のそれは一際凄まじかった。
「はあ!? ふざけんなよこんな時にぃ!」
ごもっともな怒りだ。大事な自分の為の舞台。そんな日に限って人身事故。こんな不運はそうそうないだろう。
【えー、現在復旧の目途は、た、立っておりません。復旧まで、し、しばらく、おま、お待ちください】
「なんで今日に限って事故なんだよ!」
今日に限って。
そう。その通りだ。
今日だから起きたのだ。
――お前、本当にやっちまったんだな。
おそらく、僕だけが知っている。
今起きた事故が、偶然ではなく必然だったという事を。




