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スーパー変態シリーズ

ロリコン変態ハンザイシャー

作者: あざらし

「ハンザイシャー、スクリュードライバーキーック!!」

「グワァー!!」

 バクハツ!! 邪な誘拐犯は夕闇に消えた!!

「これでもう大丈夫だよ、ママのところへお帰り」

「おじちゃん、ありがとー!」

 今日も今日とて幼女の明日を守る。俺たちロリコン変態ハンザイシャー。

 ハンザイシャーの誓いは三つ。

 一つ、触れない。

 二つ、怖がらせない。

 三つ、下心を見せない。

 泥棒が正義の味方をする時代、ロリコンが幼女を守ってなにが悪い!!



 ロリコンブルーが行方を眩ませてから二ヶ月が経った。あいつはクールな二枚目参謀キャラ。いつも俺達はあいつの作戦に支えられていた。

 今はなんとか戦えているが、次に知能犯が現れたら終わりだ。

 そんな俺達の元に、最悪の報せが舞い込んだ。

「誘拐事件だと!?」

 ピンクが叫び立ち上がる。その衝撃で安っぽいウィッグが落ちた。あいつは中途半端な女装が趣味の変態だった。

「俺達も探そう」

 イエローはカレーを飲み干しそう言った。言うまでもなくあいつはデブだ。

「あ、俺は呼び出し入ったからパスで」

 ブラックは社畜だった。

「よし、今日は三人で出撃だ!!」

 そしてレッドはこの俺。無精髭の怪しいおっさんだ。趣味がバレて一家離散した。

「ロリコンハイエース!!」

 ハンザイシャーのマシンはカスタムしたハイエース。これなら大の大人が五人でもゆったりと乗ることができる。追加戦士もウェルカムだ。

 現場へ急行。手分けして探す。ピンクは大通りに張り込み逃走を阻止。俺とイエローは聞き込みだ。

「あんたが拐ったんじゃないのかい?」

 住民の嫌疑が痛かった。

「おい、この被害者の女の子、ブルーの言ってた隣の子じゃないのか!?」

 イエローが叫んだ。ブルーは隣に住む女の子を大層可愛がっていた。

「それに怪しい車が隣の市へ向かったらしい。ピンクを向かわせよう」

「ああ、そうしてくれ。イエローはピンクの手助けを」

「ロリー!(了解)」

 嫌な予感がした。

 俺は一度だけ訪ねたことのあるブルーの家へ向かう。行方を眩ませてから何度か訪問したが、いずれも留守だったのだ。

 いや、しかし。

「電気メーターが動いている……」

 陽動はブルーの最も得意とする作戦だった。

 ノックをしてみる。反応はない。

「……入るぞ!」

 俺は扉を壊しブルーの家に侵入した。そこに居たのは――

「んー! んー!!」

「……見つかっちまったようだな」

 件の少女と……ブルーだった。

「どうしてこんなことをした」

「今から犯すためだ」

「共犯者は?」

「いない。あの車は流行りの自動運転だ」

 それ以上追求しても、悪びれたりはしなかった。ブルーは本気で、真剣に、少女を犯すつもりのようだ。

「……お前、本当の犯罪者になっちまったんだな」

 裏切られたのは初めてのことではなかった。ハンザイシャーは今までに五人の聖性犯罪者を排出している。

「俺達は……衝動に抗い、理性をもって戦っている」

 幼女を助ける度に、幼女の笑顔を見る度に、この笑顔を守りたいという使命感と、この笑顔を独占したいというほの暗い感情が胸に渦巻く。

 自分がいつまで理性的でいられるのか。それは誰にもわからない。ふとした拍子に魔が差して、犯行に及んでしまうかもしれない。

そうなれば、この場に居たのはブルーじゃなくて俺だ。

「……お前は俺の末路だ。なら、せめて苦しまないようにやってやる」

 ハンザイシャー最強の必殺技、ストームロリコンヴブリンガー。俺が構えると、ブルーも同じように構えた。

「俺はここで終わるわけにはいかない。絶対にこの子を犯すんだ……!!」

「最低だよ、お前は……っ!!」

「黙れ!! 必殺……」

「ストーム……」

「ロリコン……」

「「ブリンガー!!!!!!!!」



「なあ、お前……手を抜いただろ」

 倒れ伏すブルーに訊ねると、奴は知らないねとでも言いたげに首を横に振る。

「それに電気メーター。普段のお前なら絶対に止めてるはずだ」

「……先走っただけだ」

 俺はブルーの言葉を無視して続けた。

「お前、本当は止めて欲しかったんじゃないのか?」

 ブルーは掠れた声で絞り出すように言う。

「黙れよ」

 俺は黙らない。

「俺が来るまで、あの子を傷つけないよう必死に自分を抑えてたんじゃないのか?」

 そうであって欲しい。まだ理性を失ったわけではない。そう思いたいのは、俺自身だったのかもしれない。

 強い意思があれば最後の一線で踏み留まることができる。そう信じたいのは、俺だったのかもしれない。

 あいつは俺と同じなのだから。

 吐き捨てるようにブルーは言った。

「黙れ。俺はハンザイシャー失格の、最低の、屑野郎だ」

 ブルーはあくまで否定した。一度魔が差せばそれはもう犯罪者だ。ギリギリで踏み留まっていても、危害を与えた時点でもうおしまいなのだから。

「……そうだな。お前はもう戻れないよ」

 それでも、これだけは伝えておきたかった。

「でも、お前が性犯罪者になる前に、止められて良かった」

「この子が犯される前に……の、間違いだろ」

「いや、いいんだ」

 ブルーはなにかを察したように瞑目する。きっと彼はわかっているのだ。

「そうか……お前は、こうなるなよ」

「ああ」

 それがブルーとの最後の会話だった。



 俺達は小児性愛者。幼い少女に興奮する、犯罪者予備軍だ。

 普段は理性で抑えている。しかし一度枷が外れれば、他の人間と同じように欲望のままに走ってしまう。

 そうなれば、もうただの犯罪者だ。

 人の理性はあまりに脆い。心が弱くなったとき、不安に苛まれたとき、誰にでもそれはやってくる。

 俺達ハンザイシャーは、そんな欲に呑まれた性犯罪者と戦い続ける幼女の味方だ。自分の欲望と戦いながら、日々幼女の平和を守り続ける。

 ロリコン変態ハンザイシャー

 その戦いは、今日も続く。


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