第7話 ムチの時間
ロリアを強引に隣の部屋に引きずり込んだディアナはアレクが付けた家紋入りのブローチを一瞥するとロリアに笑いかけた。
「ロリちゃん、あなたのお母様は早くに亡くなられてしまってロリちゃんは母親の事をほとんど覚えていないそうね」
ロリアの母親はロリアが幼い頃ブラウン家の跡取りとなる弟を産んで直ぐ亡くなっている。当然顔は覚えていない。
「だから私の事を本当のお母さんと思って頼って頂戴ね」
「はあ、ありがとうございます」
この軽いノリで頼りになるのかと内心思いながらロリアは答えた。
「そしてこれから私はベルマン家当主の第一夫人として私の後を継ぐロリちゃんの教育係にもなります。学ばなければいけない事はたくさん有るから覚悟してね」
それは嫁ぐ前から言われてきたことだ。『建前』として一般教養しか学んでいないロリアにとって必要な事を学ぶために12の若さで嫁いで来たのだから。
「でもそう言った堅苦しい事はアレくんの休みが終わってからね。今は母娘の会話を楽しみましょう」
「はあ…」
ディアナはそう言うと自分がベルマン家に嫁いできてから楽しかった事や大変だった事を話してくれた。そしていろいろと話しているうちに内容が夫であるロバートとの夜の営みの話になってきた。
「ああ見えてダーリンは変態なのよ。男の欲求をストレートにぶつけて来て最初は大変だったのよ。でも私が疲れていたり本気で嫌がったりしたら優しくしてくれてまさにアメとムチね。気が付いたらすっかりダーリンの虜になっていたから」
そう言うディアナの顔は今まで見せていた笑い顔とは違った女の顔でロリアはゾクッとした。結婚前に夜の営みの事を勉強するためにロリアはそう言った事が書かれている薄い本を何冊か読んだ事が有った。
本の中の女の子たちは皆ロリアと変わらない年齢で年上の男に手籠めにされて最後には泣いて終わるか快楽堕ちしていた。ディアナが見せた顔はその快楽堕ちした女の子の顔にそっくりだった。
「ロリちゃんもアメは貰ったみたいだからムチの時間が待っているわよ」
「え?」
ロリアがディアナの様子に怯えているとディアナは更に追い打ちをかけるような事を言い出した。
「今日アレくんと一緒に街へお出かけしたんでしょ。その時アレくんは色々ロリちゃんを甘やかしたはず」
言われて思い返せばアレクはいろんな物を買い与えたり優しくエスコートしてくれた。
「その時のロリちゃんの態度を見てアレくんはロリちゃんの事を気に入ったのよ。誰だってアメをあげた時嬉しくなさそうだったり当然のように貰うよりも素直に喜んでくれた方が嬉しいでしょ。街での事は詳しく聞かないけどロリちゃんは嬉しかったんでしょ」
そう言われてみるとアクサリー選びの時とか嬉しそうにしていたかもしれない。
「アレくんはロリちゃんの事をアメを与えるのに相応しい相手だと認識したのよ。その証拠にそのブローチ。本来ならベルマン家が用意した指輪を与えるはずだったのにアレくんはロリちゃんにブローチを付けた。そのブローチはね昔アレくんが将来のお嫁さんの為に自らの手で用意した特別な物なのよ。義理で迎えたお嫁さんには絶対に渡さないはず」
このブローチがそんな特別な物だったなんて知らなかった。そんな物を只の名札だなんて気軽に渡すだなんて。でもそれとムチとどう関係が有るのだろうか?
「あの、どうしてこのブローチを貰うとムチの時間になるのですか?」
「昨日結婚式でロリちゃんが気絶したからアレくんは昨日の夜はロリちゃんに何もしなかったでしょ。だから今夜が初夜本番になるの」
確かに昨日はおかゆを食べた後直ぐに疲れて眠ってしまった。朝起きた時自分の体に異常は無く
「アレくんはロリちゃんを気に入った。だからこれから夫婦として仲良くやっていくために自分の男としての欲望を今夜の初夜でロリちゃんにぶつけるはずよ。そしてロリちゃんがどこまで自分を受け入れてくれるかどこまで耐えられるのかを見極めようとするはず」
ディアナにそう言われてロリアは戦慄した。お金持ちで権力も有るのに女の子から逃げられまくっているアレクの性癖だ。一体どんなモノなのか想像できない。
「あ、でもあの子が女の子を傷つけたという話は聞いたことがないから、体を傷つける被虐系の趣味は無いはずよ」
そう言われてかえって怖くなった。もしアレクが女の子を痛めつけて喜ぶ趣味の人間なら女の子が逃げ出しても納得できる。しかしアレクは女の子を痛めつける趣味は無い。にもかかわらず女の子に逃げられる趣味を持っているだなんて自分には想像がつかない。
さらに限界を見極められてアメとムチでどんどん調教されていくのだ。最後には目の前の女性のように変えられてしまうのだ。エロ同人みたいに。変えられてしまった自分はアレクにされる事が全て幸せだと思うようになるのだろう。それが本当に幸せなのかは分からないが約束通り不幸にはならない。
ロリアはこれから訪れるムチの時間に恐怖した。
ロリものはロリが主人公をふり回すものが多いですが、この話は主人公がロリをふり回します。