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第1話 結婚

 太陽の国『ソーラ』の貴族であるアレク・ベルマンは転生者である。いずれ行われる神々の代理戦争の駒となる事を条件に異世界転生を果たした元日本人である。


 日本人だった頃の知識を使って内政チートを行い。女神の使徒という名分を得て強くなるための冒険を行った転生リア充だ。しかしそんなアレクにも足りないものが有った。女にモテなかったのだ。


 助けた少女からは男として愛していないけど愛人になるから養ってと言われ。義理の妹からは兄としては尊敬するけれども結婚相手としては無いと言われ。異世界から来た勇者の少女は共に過ごしたアレクに何の未練もなく元の世界に帰って行った。


 アレクは複数の女の子からモテたいとは思っていなかったが恋人は欲しいとは思っていた。そんなアレクが帰国すると待っていたのは12歳になる少女との3か月後の政略結婚だった。


「アレクよ、正直私は失望した。多くの地を旅していながら生涯の伴侶を見つける事が出来なかったとは。我がベルマン家には伴侶を選ぶ自由が与えられている。しかしそれも20になるまでという期限付きだ。自由を手にしていおきながら有効活用出来なかった以上、アレクの伴侶は政治で決める事になる」


 父親であり現ベルマン侯爵であるロバートからそう言われ、幾多の女性からフラれてきたアレクには拒否する権利は無かった。それでも12歳の少女との納得がいかなかった。


「父上、一体どう言った理由でロリア・ブラウン嬢との結婚が決まったのですか。彼女は成人したら側室か第2夫人として迎える約束だったはず」

「他に相手が見つからなかったからだ。婚約者がいない適齢期の貴族令嬢からは皆アレクとの結婚を断られた。素行が悪くて声をかけていない令嬢もいるが軒並み全滅だ。残っていたのは生まれた時からアレクの元に嫁ぐことが決まっていたロリア・ブラウン嬢だけだった。よってベルマン家の血を絶やさないという政治的理由からこの結婚を決めた」

「それでも3か月後に結婚は早すぎます。子供を作れない以上は婚約に留めて成人するまで待った方が良いのでは」

「成長してアレクの事を知って逃げられたらどうする。まだ一度も顔を合わせていない今のうちに結婚して逃げれ無いようにした方が良いと考えたのだ」


 12歳との少女との結婚に難色を示すアレクに対し父ロバートは身も蓋も無い返事をした。


「それと12歳だからと言って子供扱いや妹扱はするな。義妹であるティッタに『お兄ちゃんとしては好きだけど結婚相手としては無いよね』と言われた事を忘れるなよ。最初から『妻』として扱うのだぞ。少女趣味だとかロリコンとか世間体を気にする余裕はアレク、お前には無いのだから」


 父親からそう言われてアレクのライフはゼロになった。




 それから3か月後の結婚式前日、国外にいる遠方の友人たちからの手紙を読んでアレクは意気消沈した。結婚する事を知らせたのだが皆魔王との戦いの傷跡からの復興で忙しく西の果ての国であるソーラまで祝いに来る余裕はなかった。それだけでは無く、12の少女との結婚に対して色々と書かれていた。流石にそれで友達を止めるという者は出てこなかったが。


「結局結婚式の参加者は貴族としての付き合いが有る相手だけか。それにしてもロリア・ブラウンかどんな娘なんだろう。以前ブラウン領の救援に行った時は会っていないし顔を合わせて逃げられたら困るからと顔を合わすどころか手紙のやり取りも禁じられているからな」


 それだけではなくベルマン家としての贈り物とは別にアレク個人からの贈り物も送ろうとしたのだがプレゼントの中身が子供扱いしていると言われて全部ボツにされていた。


「お菓子や人形や洋服、喜んでくれると思ったのだけどな」


 夫婦として上手くやっていけるかは別として仲良くなりたいとは思っていても周囲に阻まれて上手くいかないアレクだった。


『アレク様、花嫁がベルマン(街の名前の事。ソーラでは治める貴族が住んでいる街の名前はその貴族の家名になっている)に到着しました。現在は教会であすに備えて準備をしています』


 嫁いでくる花嫁は式を挙げるまでは他家の娘なので本宅に入れることは出来ない。式まで教会で花婿を待ち、花婿が花嫁を迎えに行くのが貴族の結婚式のやり方だった。嫁を娶る(め『トル』)、娘を送り出すでは他家から自家に無く貰うという考えで地球の結婚式とはやり方も違う。新婦が先に待っていて新郎が後から来るのである。


『尚、結婚式で迎えに行くまで絶対に顔を合わせない様に屋敷の外には出るなとのロバート様からの厳命が出ています』

「分かった。ありがとう」


 直属の部下である鎧からの報告を受けてアレクは手紙を読むのを止めた。ベルマン家が総力を挙げて準備している以上結婚式が失敗する事は無いだろう。手紙の束をしまうとアレクは窓の外を見た。


「ここまで警備が厳重だとこっそり抜け出して顔を合わせるというのは無理そうだな」


 直接の戦闘能力は高くても隠密行動は低く、『ド派手』に『正面』から『粉砕』という闘い方しかして来なかったアレクはそう呟いた。警備をぶち破って正面から屋敷を出ることは可能だ。しかし騒ぎを起こして結婚式を中止にするような真似はするつもりはなかった。


 そして何のイベントも起きないまま結婚式当日の朝を迎えた。


 何の妨害もなく教会までたどり着き、正面の扉をくぐって会場を見渡すとアレク内心『うゎ』と叫んだ。会場の客の花嫁を見る目が魔王に捧げられる生贄を見る目だったからだ。実際に魔王に生贄を差し出す村をいくつも見てきたので間違いは無い。


 娘を持つ貴族からのこの結婚が失敗したら自分の娘を差し出さないといけないかもしれない。だから無事に終わってくれというオーラが漂う中、アレクは花嫁の元へ歩いて行った。


(まるで捧げられた生贄を受け取りに行く魔王のような気分だな)


 その花嫁(生贄)は俯いているので表情は見えない。ドレスに隠されて足元は見えないが震える事は無く凛と佇んでいるようには見える。


 アレクは花嫁が待つ祭壇の前までたどり着き屈んで花嫁の顔を見た。


 無表情だった。ロリア・ブラウンは見た目は可愛らしい少女なのに感情を顔に出してはいなかった。結婚に対して悲しむ様子も困惑する事も無く、喜んだり舞い上がる様子もなくただそこに立っていた。


 そんな花嫁の顔をじっと見つめるとアレクは突然立ち上がり花嫁を抱きかかえると誓いの誓約をせずに神父を無視して教会を出て行った。そして教会の外で待機していた鎧に声をかけた。


「急いで屋敷に戻る」

『分かりました』


 アレクに言われ鎧はバラバラになるとドラゴンの姿に体を組み替えた。そしてドラゴンに乗って飛んで帰り、玄関から屋敷に入らず窓から直接自分の部屋に入ると花嫁をベッドに寝かせドレスを脱がせた。


「まさか立ったまま気を失っていたとはな」


 そう花嫁であるロリア。ブラウンは立ったまま気を失っていた。それに気づいたアレクは強引に花嫁を屋敷に連れ替える事で無理やり結婚式を終わらせたのだ。


「オウリュウマル、父上に説明を頼む」

『分かりました』 


 自分達を屋敷に運んだ鎧、オウリュウマルに伝言わ頼むとアレクは気を失っている花嫁の介抱続けるのだった。

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