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第12話 田舎のおばあちゃん家

 モフモフ村は人口が100人にも満たない小さな村だ。しかし住人の大半は身体能力が高い獣人なうえ大陸の各地で特殊技能を学んだ者が多いので生産力は高い。


 鶴の織物を始め養蜂で採れたハチミツ養殖のキノコなど少量だが質のいい物を生産している。こうした技術を学ばせるために人を送ったり噂を聞いた獣人が集まってくるのでモフモフ村は日々発展している。


 そんなモフモフ村の村長であり皆から慕われているのがロリアの祖母テディだ。見た目は60歳くらいの老婆だが体付きは未だにしっかりしている。顔には皺が刻まれているが若い頃は活発な筋肉系美人だったと思わせる容姿をしていた。


 アレク達がテディの家の前に着くとテディと見た目16歳くらいのフサフサの尻尾を持った少女が出迎えてくれた。


「待っていたよアレ坊。それと初めましてだね、あなたがくまちゃんの娘のロリちゃんだね」

「お久しぶりです、テディさん。少しの間ですがお世話になります」


 アレクは挨拶を済ませるとそっとくまちゃんと首をかしげるロリアに話をするように促した。


「初めまして、ロリアと言います。あのくまちゃんて誰ですか?私の両親はベア・ブラウンとロゼッタ・ブラウンと言いますけど」

「ブラウン伯爵の子供の時の名前だよ。あの人は貴族になった時に改名して今の名前になたんだ。昔はただのコグマという名前だったんだよ」


 首をかしげるロリアにアレクが説明した。


「やれやれ、子供に自分の昔の事を話していないだなんてどうしようもない息子だね。おっと、これ以上の話は家の前ではなく中で話しましょうか」

「あ、その前に1つ」

「なんだい?」


 家の中に案内しようとしたテディをアレクは呼び止めた。


「この度私はテディさんの孫娘であるロリアと結婚しました。つまり私はテディさんの義理の孫になった訳です。これからは心を込めてテディさんの事を『おばあちゃん』と」

「呼ばなくていいよ!ババア扱いするんじゃない!」

「ひっ!」


 アレクにおばあちゃんと呼ばれそうになってテディは熊のように吠えた。その剣幕を見てロリアは怖がってアレクの後ろに隠れた。


「おやおや、ごめんね。ロリちゃんはおばあちゃんて呼んでもいいよ。それとロリちゃんは貴族の令嬢だから1人では生活できないだろ。ここにいる間はサクヤがロリちゃんの面倒を見てくれるからね」


 テディがそう言うと後ろに控えていたキツネ娘がペコリと頭を下げた。


「それじゃあ今度こそ中に入ろうじゃないか。与作(鶴娘の旦那の事)が畑で育てたウリを冷やして用意して有るからね」


 そう言ってテディは家の中にアレクを案内した。


「こういう所が田舎のおばあちゃんなんだけどな」

「あのアレクさま。おばあちゃんはアレク様に対して随分砕けた言葉遣いをしていますよね」


 歩きながらポツリと呟いたアレクにロリアが聞いてきた。


「あの人は昔からそうだったらしい。まだ父上の正体を知らずにブラウン伯爵から友達を紹介された時から父上に対してもあんな感じで。それがずっと続いているという訳だ。でもここの空気を合わさってあんな感じで対応されると貴族の身分を忘れて開放感を感じるんだ。私が生まれた時にはおばちゃんは居なかったからあの人の事を本当のおばあちゃんの様に慕っているんだ」


 おばあちゃんと呼ぼうとしては怒られるんだけどねと最後に笑いながらアレクは付け足した。


「ところで祭りの準備は出来ているの?」


 用意されたウリを食べながらアレクはテディに質問した。


「もちろん、準備は万端さ。楽しみにしていな」

「祭りですか?」

「明日はモフモフ村が正式に村と承認されて1年目なんだ。それで記念に祭りをやる事にしたんだよ。この村は獣人中心でしかも大陸中の人が集まっている。文化も風習も違う皆が話し合って楽しめる祭りをやると聞いているからどんな祭りか楽しみなんだ」


 アレクはロリアに楽しそうに説明した。


「だから今日は家の外には出ないでおこう。どんな祭りをやるのは明日のお楽しみという訳だ」

「分かりました。それではこれから何をすればいいのでしょうか?」

「ロリちゃんはあたしと話をしようか。皆から孫とゆっくり過ごす時間を貰ったことだしね。アレ坊、構わないね」

「ええ、初孫とゆっくり話をしてください」


 アレクの許可が出たのでロリアはテディに連れられて彼女の部屋に移動した。テディの部屋は物が少ないがどこか温かみのある部屋だった。


「さて、何から話そうかね。ロリちゃんの事はくまちゃんから聞いているから結婚前の事は知っているんだよ」


 ロリアを座らせたテディはそう言った。


「あのおばあちゃんの事を聞かせて貰ってもいいですか」

「いいとも。何から話そうかね」

「昔の事は大雑把に教えて貰ったのでこの村での事を教えて欲しいです」

「そうか、じゃあそうしようかね。この村は最初はあたしが1人で隠遁生活を送っていたただの山小屋しか無かったんだよ。それがアレ坊がまだ魔獣だったキツネっ娘の面倒を見てくれとあたしに預け。今度は別の獣人を匿ってくれと何人も送り込んできて。噂を聞きつけた獣人が集まって気が付いたら村になっておったよ」


 人が集まると揉め事が多くなりそれをテディが力ずくで抑えるようになると住人たちはテディをボスと認めて従うようになった。やがて様子を見に来たブラウン伯爵から村の様子がロバートに伝わり1年前モフモフ村は正式に村としてベルマン家に承認された。


 テディはロリアに人が集まって村が出来るまでの出来事を詳しく話した。


「まあ、こんな所かね。さてそろそろ夕食の支度をしようかの。ロリちゃんの泊まる部屋の支度はもう出来ているはずだから連れて行ってあげよう」


 今日泊まる部屋に案内されたロリアはアレクと話をしたくなった。そこでリビングに戻るとアレクはまだリビングにいた。そして隣にはキツネっ娘がいて甘えるようにアレクにもたれ掛かっていた。


 その様子を見てロリアは思わず隠れてしまった。そして今関係のある女性は王都にいる愛人だけでは無かったのかと怒りながらロリアは2人の様子を伺うのだった。

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