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第9話 ベルマンの館

 アレクとロリアが初夜の約束をした翌日、アレクはベルマン家の屋敷の案内をロリアにしていた。本来なら昨日のうちに済ましておく事だったのだが挨拶の前にロバート達と鉢合わせしてしまうのを避けるため今日案内することになった。


 ベルマン家の屋敷は敷地の中に本館、迎賓館、住み込みの使用人の寮の3つの棟から成り立っている。このうち使用人の寮は案内の対象外。迎賓館は客を持て成す役目を持つベルマン侯爵夫人であるディアナが後日案内する事になっているのでアレクが案内するのは本館になる。


 本館は地上3階地下1階だでで1階は食堂、炊事場、洗濯場、執事やメイド長など上級の使用人の部屋など生活の為の空間になっている。ロリア付きの侍女であるルシアも本館1階に部屋を与えられている。ここはもっとも多くの使用人が働いている階でもあるので邪魔にならない様にあっさりと案内を済ませた。


「次に地下室を案内しようと思う。地下は全部で3フロア有って入り口はそれぞれ別の場所にある。昨日侍女を投獄させた牢獄フロア、食料などを保存する地下食料庫、そして貴重品を保管する宝物庫だ。食料庫は入口が炊事場に有るから今回はパス。宝物庫も鍵は父上が管理しているから入れない。入口の場所だけ教えておく。最後に牢獄フロア。ここは問題を起こした使用人やベルマン家に侵入した族を投獄するために使われている。まだ侍女は独房にいるはずだから案内しよう」


 アレクはそう言ってロリアを牢獄フロアへ案内した。牢獄フロアの入り口は屋敷の奥にあり一階に出る事が出来ても簡単には外に出れない様になっている。


「手を出して、暗いから手を繋ごう」

「はい」


 明かりをオウリュウマル()に持たせてアレクはロリアの手を取った。地下に降りるとルシアが『罰掃除中』の看板を首から下げて牢屋の掃除をしていた。


「私はお嬢様付きの侍女なのですよ。どうして一介のメイドの仕事をしないといけないのですか」


 アレク達に気づかずに文句を言いながら掃除をするルシアを見てアレクはそのまま引き返す事にした。


「ペナルティ追加だな。それにしてもどうして彼女はロリアの事をお嬢様と頑なに呼び続けるのだろう」

「ルシアは私の結婚の事をよく思ってはいませんでしたから」

「あまり反抗的だとベルマン家から追い出さないといけなくなる。それとなく注意しておいてくれ。ロリアの言う事なら聞くだろう」

「はいそうしまぁ!」

「危ない!」

 

 会談を上る途中でロリアが足を踏み外したのでアレクは慌ててロリアを支えた。


「ありがとうございます」

「手を繋いでおいて良かったな」


 自分を支えてくれたアレクの腕を見てロリアは熊みたいな見た目の父親よりもたくましいかなと思ったのだった。


 1階に出ると次は2階を案内した。2階は一部の家財を仕舞う為の部屋と娯楽を目的とした部屋の2フロアに分かれている。


「一通りの物はそれ得たとはいえ何か足りないものも有るかも知れない。必要な物が有ったらここから自由に持って行っていいから」


 アレクは家財を仕舞う部屋を案内してそう言った。


「続いて娯楽フロアだ。多くの書物が保管してある図書室、様々なゲームができる遊戯室、芸人などを招いて楽しむ小ホールがある」

「ここも自由に使っていいのですか?」 

「図書室の本は自由に読んでいい。ただ持ち出しは禁止だ。あと読んではいけない禁書の類は別室に鍵をかけてしまってあるから。遊戯室は1人で遊べる物はあまりないから使うなら一緒に遊ぼう。小ホールはピアノを始め多くの楽器が有る。何か弾いてみたいものが有るならこれも自由に使っていい。ただし音を立てて周りに迷惑をかけてはいけないから楽器を弾いていいのは朝の10時から夜の7時までという事になっている」

「はい、ありがとうございます。本を読むのは好きなのでたくさんの本が読めるベルマン家に嫁いできて良かったです」

「そうか…」


 物語を読むのが好きなロリアは本を自由に読んでいいと言われてとても喜んだ。ベルマン家に来てから一番の喜びようにアレクは複雑な気持ちになった。


 それからアレクとロリアは3階に上がった。3階は全てベルマン家の者の部屋だ。


「といっても半分以上は空き部屋だ。今使っているのは父上と母上の部屋、私の部屋、ロリアの部屋の3つだけ。使ってないけど主がいる部屋は義妹の部屋と王都にいる父上の第2夫人とその息子の部屋の3つだ」

「部屋はたくさんあるのにもったいないですね。そう言えばどうしてロバート様とお義母さまの部屋は一緒なのに私達の部屋は別々で離れているのですか?」

「普通は夫婦でも部屋は別々で離れているものだ。ブラウン伯爵は奥様を無くされてから後添えを貰っていないからロリアは知らなくて当然か」


 何故夫婦なのに部屋は離れているのか。それは大抵の貴族は愛人を囲っていることが多く、愛人の元へ行ったり部屋に連れ込んだりするのに隣に妻や夫が居たら気まずいからだ。


「浮気をしない、許せないという場合は部屋を隣同士にする。そして行き過ぎると父上と母上のようになる。父上は母上にぞっこんだし母上も父上が他の女と仲良くすることは許せても肉体関係を結ぶのは許さないからな」

「それでよく第2夫人を持てましたね」

「あの人とは契約結婚だからな」


 王都の第2夫人は自分と子供の生活の面倒と子供の将来の後見を条件に王都での要人の接待や情報取集をするという契約で結婚しただけであり、愛情はおろか男女の関係にもなっていない間柄である。


「これで屋敷の案内は済んだかな。一応上には屋根裏部屋が有るけど今はオウリュウマル達が使っている」

「達?」

「他の連中の紹介は追々ね」

「わ、分かりました。所でここから見えるあの建物は一体何なんですか?本館とは渡り廊下で繋がっているようですけど」


 ロリアが指した先には庭の隅にポツンと立っている平家が建っていた。本館とは渡り廊下で繋がっている。位置的には本家の者が使う階段の近くにあるので何かの施設だろうとロリアは思った。


「ああ、あれは浴室だ。昔私が風呂に入るために作らせたものだ」

「浴室?風呂?」


 ソーラでは体を洗う場合お湯で体を拭くのが一般的でお風呂はおろか温泉もない。風呂が一体何なのかロリアはまったく分からなかった。


「使うかどうかは別として案内だけはしておいた方がいいか」


 そう言うとアレクはロリアを浴室まで連れて行った。浴室に入るとまず入り口で靴を脱いだ。


「ここで靴を脱ぐのですか?」

「そうだ、ここで靴を脱いだら隣の脱衣所に入る」

「脱衣所?」


 そう言うとアレクは脱衣所の扉を開けた。


「ここが脱衣所。ここで服を脱いで裸になる。脱いだ服は上着と下着に分けてこの籠に入れる。あ、今は風呂に入るわけじゃないから脱がなくてもいいよ」

「恥ずかしいから脱ぎません!」


 まだ、アレクに肌をさらすのは抵抗が有るのでロリアは叫んだ。


「そうか、話を戻して案内する。この先に風呂が有る」


 そう言ってアレクは次の扉を開けた。扉の先にはタイル張りの床と壁、そして大きめの浴槽が有った。日本の一般家庭の浴槽と比べて大きく、かといって銭湯と比べると小さい浴槽はといつか女の子と一緒に入ってイチャコラしたいというアレクの欲望の為に2人で入るのにちょうどいい大きさだった。もっともアレクには一緒にお風呂に入ってくれる女の子はおらず、お風呂を気に入ったアレクの両親がイチャコラするのに使っている。


「ここは体を洗う為の部屋だ。石鹸とスポンジで体をこすって洗い、この浴槽に40度くらいのお湯を貯めて中に入る」

「???」


 未知の文化に遭遇してロリアは混乱した。


「試しに今夜入ってみるか?私と一緒に入るのは恥ずかしいだろうから母上に頼んでみよう」

「あの、アレクさまに教えて貰ってもいいですか?」

 

 正直ロリアはディアナと一緒というのは怖かった。一方でアレクの前で裸になるというのは恥ずかしいが怖くはない。アレクの事は信用しているし、何より男の裸に興味があった。


「いいのか?裸になるのだぞ」

「将来子作りする時も裸になる訳ですし、アレク様の事は信用していますから」


 そう言われてアレクは少し考えて『まあ、いいか』と結論を出した。前世(日本)だと12歳なら完全にアウトだがこの国では結婚した女性は大人扱いされるので本人が良いと言っているのなら問題はないだろう。お風呂の入り方を分からない子を1人でお風呂に入れる方が怖い訳だし。


「じゃあ、夜になったら一緒に入るか」

「はい」


 その夜体を『洗う』事を体験し、湯船に体を沈める事の気持ち良さを知ったロリアはお風呂好きになるのだった。

入浴シーンを書こうとして犯罪臭が強いかなと思って止めました。

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