表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

見えナい物

 

 

初めに一つ、『七つのしずく』は、夏ホラーには属していません。


――まず第一話。「あなたは見えない存在を信じますか?」もしも身近に見える人がいるとして、信じないあなたはその人のことを異常者だと思いますか? もしもそれが、親しい友人だったとしたらどうでしょう?




 霊が見える人の気持ち?


 そんなのわかるわけないじゃないか。


 だって、そうだろう?


 人って、誰しも本気で信じ合っているわけじゃないんだから。



 『霊の存在を信じますか?』なんてのはバカげた質問だ。

 人間の中には、見えないもの、理解できないものは徹底的に信じないやつもいる。

 信じなければそれでいい。そういうやつには、何を言ってもムダなんだから。


 ――もしも見えない存在が、科学的に証明されれば、信じないほうが非科学的ってことになるよね。


 ――それって、なんだか悲しいね……。つまらないね……。


 でも、『見える人』がいるのも事実だ。

 僕の友達にもいるんだよ。見えるやつ。


 僕はそいつのことを信じているよ。


 そいつの話もさ……。




「――血塗られた女?」


 そいつ―― コウスケは、僕によく、自分が見た霊の話をしてくれる。最近は決まって、公園でさ。二人だけで。

 他のやつらは、そういう話を聞くと怖がるくせに、コウスケのことまで変な目で見るんだ。


 『俺達は怖い話は好きだけど、霊なんて信じない。』なんてな。


「――服をね。真っ赤に染めた女の人なんだけど。あれは殺された人だな。たぶん、強い恨みを持って死んだんだ」


 見える人の中には、体験談とか怪談を怖がらせる目的で話さない、っていう人もけっこういるらしい。なんか、そういう話の中に入ってると、自分だけ“感じる”らしいんだ。――よくわかんないけど……。


 でも、コウスケは違う。


「強い恨みを持った霊には気をつけたほうがいいんだ。関係のない人間に危害を与えることがあるから」


 そんなのを見つけたら、コウスケはすぐに逃げるんだって。

 でも、霊のほうもコウスケの力に引き寄せられることがあるらしい。何かと大変なんだと。


 僕とコウスケは、幼馴染みたいなもので、小学校に入る前から、ずっと一緒だった。

 なんでも信じあえる親友さ。もう、中学一年生だけどね。


「この前、近くで車の事故があったらしいね。昨日たまたまそこを通るまで気付かなかったけど、男の人が死んでた。運転してた人の霊がいたんだ。でも、あれはいいほうだな。念が弱いから」


 不意に死んだ人間の霊は、そうらしい。ようは死ぬ前に、どれほどの念を抱いて死んだか。ということらしい。



 かれこれ半年くらい前かな? ここで、コウスケと話をするようになったのは。

 変なやつだよコウスケは……。


「じゃあな。また明日ー」


 いつも、五時を過ぎると、コウスケは帰る。

 暗くなると、ヤバイらしい。


 それなら、僕にこんな話しなくてもいいのに……。


 ――僕は霊が見える人の気持ちなんてわからない。


 でも――


 霊の気持ちならよくわかる。


 ほんと、変なやつだよ、コウスケは……。



 とっくに死んでいる僕にまで、こんな話をするんだから……。



 僕は半年前、この公園で死んだ。中学に入る直前だった。

 独りでブランコをこいでたらさ。足を滑らせて……。ちょうど、今くらいの時間帯で、誰もいなかった。

 石に後頭部を思い切りぶつけた僕は、声も出せなくて、助けを呼べなくて……。


 苦しんで、苦しんで、死んだ。


 僕と話をしてくれるのは、見えるコウスケだけなんだ。


 親友だから……。あいつは今も変わらず、話をしてくれる。


 ――信じているから。


 霊になった僕でも、信じてくれる。僕が霊だとわかっていても……。


 ……でも、このことをコウスケはわかっているのかな?


 『血塗られた女』も『この前の車の事故』も……。



 全部、僕が殺ったんだってこと。



 面白くないからさ。人間なんて。


 ――でも、僕という存在は、もっと面白くない。


 あいつにも、見えない物ってあるんだよな……。ボクの心の中とかさ。


 親友なのにな……。



 僕は、無事に中学生になったコウスケのことも、許せないんだ……。





こんな感じです。

まあ今から見れば、まだまだ夏は長い。これからです。もう少し恐怖度を上げましょうか。


こういう話でもオーケーという方、先へお進みください。

(次話追加:7月26日予定)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ