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  作者: Kamias
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朝顔の恋人

とても素敵な女を見かけた。

その女は色とりどりの色彩を放ち

白日の下に露わになる輪郭も、潜む影さえも

輝きをまとっているように感じる。


しかしどうしてだか顔を確かめられないのだ。


その女からとても挑戦的な笑みと共に放たれた鋭い言葉が

私の心をぐっと捕らえたにも関わらず

どうしてもその顔が確かめられない。

私がその女に惚けたのは間違いない。

その顔がよほど面白かったのか、

女は悪戯な表情を浮かべると

髪をなびかせて立ち去った。


女は私に朝顔の蕾を残した。

毎朝その女の事を浮かべると

私の中に宿った蕾が花を開いて

私をその香りに巻く。

花が咲いている間、私は食事も喉を通らぬ状態で

仕事のことなどそっちのけで、いつも彼女を想ってしまう

そんな甘い呪いにかけられたようだ。


ある日の晩。

朝顔が花をたたんで眠る丑三つ時に

鈴を鳴らしたような声を聞いた気がした。

間違いなく彼女の声だろう、そう確信して

私は辺りを見渡した。どこにも女の姿はない。

だが確かに声はする。

「こっちよ、早く」と私を誘う声が

だんだんと近づいているように感じ

私はハッとして、前を向きなおすと女がいた。

女は子どものように笑っていた。

私はそこでようやく女の正体を知ると短く

「君か」と声を漏らした。

私は彼女の手を引くと、胸に抱きよせて

「捕まえたぞ」と言う。

女はまた楽しそうに笑い、私の中に消えていった。

「今度もちゃんと捕まえてね」と

最後にそんな声が聞こえた気がした。


甘い呪いはまだ解かれていない。

あくる朝、また私のそばで

朝顔の香りが流れている気がした。

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