02-沈みゆく船、混乱する乗客。
すっごくずさんな、指摘がたくさんありそうな内容です。
頭をからっぽにして読んでいただかないと違和感の塊かもです。
一応、食事中の人はご注意を。この話は船の中です。
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行間を開けるアドバイスをいただいたので反映してみました。
「乗船中のお客様に連絡いたします。ただいま、台風の影響により大きな揺れが急に起こりますので、できるだけ船内の移動はお控えください。繰り返します―――。」
とてもひどい揺れだ。さっきまでは対戦ゲームをやってたやつも今はグロッキー状態。
苦しそうにうめいてたり、いびきをかいて爆睡してる奴もいる。…こんな中寝られるなんてちょっとうらやましいかも。
体を起こしてる奴なんかいない。言われなくたって誰も歩いてないだろう。
あ、でも今誰か歩いてった。…大方、トイレに駆け込んだんだろうなぁ。
夕食も出されたことは出されたが、食べれた奴なんていない。俺の周りは、みそ汁だけ飲んで戻った。
うん。これ、2週間もいたら痩せるんじゃないだろうか。試す気にはならないけど。
「……あちぃ…。」
前後したが、俺たち学生は2等船室で雑魚寝している。正直、体が痛い。そういえば、階段の近くにソファがあったはず。あそこで寝よう。
「達山、俺、ちょっとソファのあるところに行ってくる…」
近くにいた親友に声かけてから廊下に向かおうとすると、
「あ、俺も行く~…うっ…」
とついてきた。…いいけど、吐くなよ?
船室から出てすぐ、
「あ、ダメ。あかん。揺れてる揺れてる。俺戻る…」
と早くも達山が離脱した。確かに今のは揺れが大きかった。
一人、ぽつねんとソファに横たわりつつ、iPODで音楽聞きながら寝ていた。
――――どぉぉぉん・・・フッ
いきなり、イヤホン越しの轟音、さっきとは比べ物にならない揺れとともに、照明が消えた。
「な、なに、今の大きな揺れ…」「あれ、なんで真っ暗なの…?」「すか~~」「ちょ、起きなって」「あかん、吐いてまう…」
轟音は船内でもよく聞こえたようで、音で起きたり、横になってただけのやつが疑問を口に出したりしてざわついてる。…いびきかいてる奴がほんとうらやましい。
ざわめきの中にあったように、真っ暗なのだ。普通なら、ドアに向かっていっつも走ってるピクト先輩が暗闇の中一人目立つはずなのだが、その先輩すらいない。…本当、何があったのだろう。
真っ暗闇の中動くわけにもいかず、何もできず固まったまま、ただし口だけは動かして、何があったのか推測する。外が何か騒がしい気がする。お、誰かがスマホのライトを付けた。それを見て、ぽつぽつと皆、電子機器を使って自分の周りを照らし始める。しばらくすると、船員らしき人と、引率のハゲ教師がやってきた。指示を出す人が来た安心感からだろう、一気にざわめきが大きくなるが、すぐにみんな黙る。無言で大人二人に現状を教えろ、とでもいうように視線が集まる。
船員が早口気味に、
「船が座礁しました。今から避難を開始します。誘導に従って、落ち着いて行動してください。救命ボートに乗り換えます。」
―――シィィィン――――
言ってることが理解できず、一瞬の静寂が訪れる。そしてすぐ、
「うわぁぁぁぁ!」「え、え?どーゆーこと?」「僕たち死んじゃうの!?」「…っ、早く逃げよう!」
まぁ、当然のようにパニックになった。
「落ち着いて!大丈夫だから、みなさん落ち着いてください!」
船員がどうにか落ちつけようと声を張り上げるが、パニックになって騒いでる集団相手に聞こえるわけもなく、みんなが一斉に、ひどく不安になるような揺れの中、入口に殺到する。もうちょっとましな伝え方があっただろうに。まぁ、緊急事態にそんな悠長に考えていられるわけないか。
が、廊下に出るともっとひどいようだ。俺たちの他に乗っていた、途中の島で乗り換えるためにこの船を利用していた乗客が、出口に殺到していた。
「早くいけよぉ!」「私が先よ!」「おい、おすな!危ないだろうが!」「耳元で騒ぐなよ!」「みなさん、おちつ…」「早く甲板行けよ!」「ちょっと!ぬかさないでよ!私が先よ!」「何言ってるの!船員さん!さっさと救命胴衣をちょうだい!」「お、おかーさ…」
これはひどい。大の大人が我先にと押しかけている。あっ、女の子がはじき出されちまった。
何とか、甲板に出ると多くの船員がいて、救命ボートと、その前に列なして乗り込む準備をしている人と、順番に救命胴衣を配っている船員。すでに乗り込みを開始しているようだが、遅々としたものだ。
俺の前にいる生徒の上から前方を確認して、生徒の中でも最後尾のほうへと移動する。
まぁ、巻き込まれて苦しい思いをするのも嫌だし。
「こんな後ろにわざわざ回ってきたのかよ。」
ん、達山がこっちに来た。グロッキーになってて移動が遅れたんだろうな。
知り合いの顔が見れて気が少し緩む。
「リョウコォ!どこっ、リョウコォ!」
「おかーさん!おかーさんどこぉ!?おがーさぁぁん・・・!」
「リョウコ、聞こえてないの!?リョっ・・・!ちょっと通してください!娘がまだ船内に!」
「おい、押すなよ!」
娘が一緒に救命ボートに乗り込んでないことに気付いた親がボートから出ようと試みるが、早いうちに乗り込んでしまったらしく、出ようにも出れないようだ。怒号が飛び交うせいで女性が何を言っているのかもわからず、事情を知らない何とか乗れた人が押し出されそうになり、怒鳴って文句を言う。
そうこうしているうちに親だけが乗ったボートは本船を離れてしまった。
リョウコ、といったか。女の子がこちら側で泣きじゃくっている。人の波にのまれて親と離れ離れになってしまったようだ。
「おい、ぐずぐずするな!」「救命ボートは人数分ありますから!焦らず、落ち着いて乗り込んでください!」「おい、そこの子!こっち来い!」「おかーさんが、おかーさんがいないのぉ…」「大丈夫だ!お前のおかーさんもあそこの船に乗ってる!」「ホント…?」「いいから!早く!…そこの坊主どももさっさと乗り込め!」
やっと前にいた人がはけてきて、俺たち生徒の番が回ってきたようだ。
「おい!早くいけよ!」「おせーんだよブタ、てめぇは後ろに居やがれ!」「喧嘩してる暇があったら乗り込め!」「あっ、俺のスマホが…!」「スマホなんていいから急いで!」
そうこうしているうちに、船の傾きが増してくる。と同時に、どんどん余裕を失っていき、パニックどころの騒ぎではなくなっている。
やっと前のほうの生徒がはけてきた。漸く乗れるか、と救命胴衣を受け取りつつボートに乗り込む。
俺の後ろにいた達山、最後まで誘導していたハゲと船員が乗り込み、本船から離れた。
よかった。助かった。
最後の救命ボートに乗り込んでいた全員が思ったことだろう。嵐で荒れた海、晴れそうない上に風も強く、まったくと言っていいほど安心できる要素などないのだが、それでも、沈みゆく船の上にいるよりはよっぽど安全に思えた。
しかしそう話はうまくいかなかった。
救命ボートは必ず沈みゆく本船からできる限り離れる。
確かにおろすスペースの確保というのもあるのだが、それ以上に『巻き込まれ』を恐れてのことだ。
まあ、最後尾にいたのだから当たり前のことだが、俺たちが乗ってるこのボート、脱出は一番最後だった。
で、俺たちが脱出するころには、沈みかけだった。――その結果。
俺たちの乗った救命ボートは、沈みゆく客船に巻き込まれて、海の藻屑となってしまった。
―――暗く、冷たい波にのまれながら、意識を手放してしまった。
読んでいただけて幸いです。
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