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4-5

 「おかえりなさいませ」

書庫から戻った私をエディンが扉を開いて中に入れる。

「迎えに出ずともよいのだが…他にも用事があるのであろう?」

私が言うとエディンがちらりと私の顔を見る。

「そのようなことはきちんとなさってからおっしゃってください」

「?」

「まずお戻りになったら靴の泥を落として,服についた埃も落としてください」

私が言われるがままに泥除けで靴をこすり服を叩いた。

「そこのも!」

エディンが私の後ろにいるヒューゴを指さしヒューゴがあわてたように泥除けに靴をこすりつけた。

「ヴィ様にご用件があるという方がいらっしゃっております」

「客人?」

エディンが頷いたので客間に行くと先に覗いたヒューゴが、

「なんだ、おきゃくさんってガー…ゲフゥ!」

言っている途中で椅子に手を当て押しその反動で飛び上がったヴィーガの足刀を頭に受けて倒れた。

「うゎ!すげぇ!」

琥珀が両手を合わせて音を鳴らしながら言う。

「その呼び方をしたら突っつき倒すっと言ったろ!」

「突っついてないじゃん!蹴ってるじゃん!」

ヒューゴが頭をさすりながら立ち上がり抗議する。

「いっしょだ!」

「ウィーガ」

私が声をかけるとウィーガがヒューゴに向けていた目線を私に向けた。

「おう、きんちゃん!元気そうだな」

「僕、元気じゃなくなった」

ヒューゴが首を回しながら言うと、

「キサマはその位が丁度いいわ!」

更にヒューゴの横腹をゲシゲシと蹴りながらウイーガが言いい、それを聞いたエディンが頷いた。

「何か用があってきたのではないか?」

「あ、そうだった」

私が聞くとウィーガがヒューゴを蹴っている足を止めて一人頷いた。

「ウィーガ様、よろしければお食事をとりながらお話になってはいかがでしょう」

エディンがウィーガに声をかける。

「そうだな、これから夕食の用意をするからそこで話を伺いたい」

私が言うとウィーガが頷いてまた長椅子ソファーに座りなおした。


 「それで、私に用があるとはどういうことなのだ?」

食後のお茶を飲みながら私はウィーガに聞いた。

「あ、それな」

ウィーガがお茶を一気に飲んでから思い出したように言う。

「ばぁちゃんがあの後聞いた話があるから良ければ来てくれないかって」

メリッダ殿は私が帰った後も私の話を気にかけてくださったようだ。

「わかった、では明日にでも支度をして行こう」

「そうか」

ウィーガが頷いた。

「んじゃ、僕も帰ったら外出届けだしてくる」

ヒューゴが言うとウィーガが顔をしかめた。

「別にお前はいらん」

「ヤダ、ぜったい一緒に行く!」

「明日にでもと言ったが…ミレイにカロップも借りねばならぬし、エルミ殿に申し付かった焼き菓子も用意しなくてはならないな…となると早くても出立が昼過ぎになってしまうがよいか?」

「馬はともかく焼き菓子ね…女ってやつは」

「エルミ殿との約束なのだが…性別で約束事が変わるのか?」

私はウィーガの言葉に疑問を持って聞いた。

「そういうわけじゃねーよ、ただ馬とたかが菓子が同次元なのかよと思っただけだ」

ウィーガが頭の後ろに腕を組みながら呆れたようにため息をつく。

「たかが菓子っていうけど、ガーちゃんだってすぐにお菓子の事思い出して僕のことぶつじゃない」

ヒューゴが口をとがらせてウィーガに言った。

「あれはキサマがオレの菓子を勝手に食ったからだろ!」

「また学舎の時のこと言ってぇ…だいたいあんなとこ置きっぱ(置きっぱなし)なのがいけないんじゃん」

「そこにあったら食うのかオマエは?!」

ウィーガが立ち上がって座っているヒューゴの上からのしかかり首を両手で絞めるようにしながら言う。

「学舎?ウィーガもこちらにいたのか?」

私が聞くとウィーガがヒューゴにのしかかったまま顔だけこちらに向けた。

「ごほっ!そうだよ、この前までいっしょのとこにいたんだよ」

ヒューゴが首を押さえ咳込みながらウィーガの代わりに答えた。

「ばあちゃんの調子が悪いってんでちょっと戻ってたんだ」

ウィーガがヒューゴの頭を押さえながら言う。

「おばーちゃん、元気になった?」

ヒューゴがウィーガの腕の隙間からウィーガに聞く。

「まぁな、だから今日はきんちゃんに伝言を伝えるのもそうだけど復学するために武局にも行ってきたんだよ」

「そうなんだ」

ウィーガの言葉にヒューゴが“ふーん”と返事をした。

「でも、今日、ガーちゃん見なかったけど」

「そう呼ぶなといっとろーが!復学の相談を教室でするわけないだろ!アホか!」

ウィーガがまたヒューゴの頭を長椅子ソファの背に押さえつける。

「では、またこちらにくるのか」

私が聞くとヒューゴを押さえつけながらウィーガが頷く。

「ま、一旦、きんちゃんと一緒に戻って今日の話をかぁちゃんにしてからだけどな」

「へー、じゃぁ戻ってきたらまためんどーみてあげる」

ヒューゴがにやにやしながらウィーガに言う。

「バカか!オレがオマエのめんどー見てたんだろ!!!」

ウィーガがヒューゴの両肩を掴んでヒューゴの体を前後に激しく揺さぶった。

「ヒューゴの面倒?」

「え、な、んか、見、てもらっ、てた、っけ」

ウィーゴに揺さぶられ頭を前後に動かしながらヒューゴが言うとウィーガが揺さぶるのをやめてヒューゴの胸ぐらをつかんだ。

「忘れたとは言わせねえぞ!学舎の郊外学習、武局の野外訓練、真夜中の寮からの抜けだし!!!」

「それが?」

ヒューゴがウィーガに胸ぐらをつかまれて半身を浮かせたまま首を傾げる。

「キサマ、ことごとく!全て!迷子になりやがって!!毎回探しに行かされたオレに身にもなりやがれ!」

「あー、そんなことあったかも」

ヒューゴが胸ぐらをつかまれたままのんびりと言った。

「あったんだよ!!」

ウィーガはヒューゴを前後に振りながら言う。

ヒューゴの方向音痴は筋金入りらしい。

「ヴィ様、ミレイ様のところに取り急ぎ馬の件をお伝えに行ってまいります。

すぐに戻りますが、ウィーガ様、寝室のご用意ができておりますので気兼ねなくお使いください。

琥珀、もう遅いですから湯に入ってから寝なさい」

「おう」

エディンの声掛けにヒューゴとウィーガのやり取りを床に転がって笑いながら見ていた琥珀がそう言いながら立ち上がった。

「宿をまだ決めてなかったから助かる…ありがとう」

ウィーガがエディンに頭を下げた。

「エディン、ありがとう」

礼を言う私達にエディンが無言でうなずいてから玄関に向かった。

「えー、ガーちゃんここに泊まんの?」

「そうらしいな」

二人ともつかれたようすで向かい合ったまま肩で息をしている。

「うんじゃ、僕も一緒にそこ泊まる!」

「はぁ?!」

ヒューゴが片手を上げながらウィーガに言う。

「だって、きんちゃんがいるとこにガーちゃんいるなんてイヤだもん」

「オレがなんかするとでも?!」

またウィーガがヒューゴに詰め寄る。

「とにかくイヤ!」

「それはエディンに聞いた方が良いと思うが」

私が言うと、

「たぶん、今日はいいって言うと思うよ」

とヒューゴが自信ありげに言った。

四半時で戻ってきたエディンにヒューゴが言うとエディンがくうを見てから、

「ご不便をおかけして申し訳ございませんがそのようなことでよろしいでしょうか?」

とウィーガに聞いた。

「…宿もまだとってないから仕方ないか…よろしく頼む」

ウィーガはため息をつきながらヒューゴの頭の両端を拳骨でぐりぐりと何度もねじりヒューゴに悲鳴をあげさせながらエディンに言った。

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