表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/196

小話3 クラウスは見た3 きんちゃんの特技

 「いたいなら、いたいって顔しろよ!わかんねぇだろ!」

中庭で新しい罠をきんちゃんと琥珀とヒューゴで作っていたら、琥珀がきんちゃんに怒鳴った。

「え?!どっかケガしたの?!どこどこ?!」

その声に俺とヒューゴがあわててきんちゃんの顔を見る。

きんちゃんは何事もなかったような表情で右手を軽く何度か振っている。

「大丈夫?!」

ヒューゴが慌てた様子できんちゃんの右手を取る。

「ここ痛いの?」

ヒューゴの言葉にきんちゃんが頷く。

「赤くなちゃってる」

きんちゃんの手をさすりながらヒューゴが言う。

「冷やす?」

「大丈夫だ」

ヒューゴの問いにきんちゃんが首を横に振りながら返す。

「きんちゃんものすごく痛そうな顔してたじゃない、どこみてんの琥珀!」

「え、わかんねぇよ。こいつ、顔、死んでるし」

ヒューゴに言われて琥珀が頬を指で掻きながら答える。

「顔、死んでいるのか?」

琥珀の言葉にきんちゃんが首を傾げながら言う。

「うんんん…ちょっと表情が固いから分かりにくいかな」

俺が言葉を選びながら言うときんちゃんの眉が軽く跳ねた。

「私は感情がすぐに顔に出てしまい困ると思っていたのだが」

「「え?!」」

俺と琥珀が同時に声を上げた。

きんちゃんの認識と他の人との認識が相当乖離していることは分かった。

「そうだねーわかりやすいもんね」

ヒューゴがきんちゃんを見ながら首を傾けてきんちゃんの顔を覗き込んだ。

「わかりやすいって思ってんのヒューゴだけだと思うぜ」

俺も琥珀に一票。

きんちゃんの感情は雰囲気なんとなくで分かるけどわかりやすいかと言われると否だ。

「だいたい、いつもおんなじ顔しかしてねーじゃん」

琥珀がきんちゃんを見上げるようにしながら言う。

「ヴィって顔の部品パーツちゃんと動かないんじゃね?」

「そんなわけないじゃん!前にディリスの真似したときすっごく上手かったもん」

琥珀の言葉にきんちゃんの手をさすりながらヒューゴが言い返す。

あいつの真似?どんなの?」

ディリスの真似?

興味を持ったオレの言葉にきんちゃんが斜め上を見てから軽く首を傾げてヒューゴから自分の手を戻すと、

「お兄様!!私、今、幸せですわ!!」

と急にオレににじり寄りながら両手を顔の前で組んで顔を高揚させて言った。

「うわ!」

オレはびっくりして尻もちをつきそのまま後ろに転がった。

「真似すんのそこじゃなくてよくない?」

ヒューゴが半目になって俺ときんちゃんの間に立った。

ホントおまえ心狭い。

俺は服の裾を叩きながら立ち上がった。

「ホントだ。ディリスみたいだ」

琥珀がおどろいたようにきんちゃんを見る。

「ほらね」

何故かヒューゴが威張って琥珀に返す。

確かに、ディリスの真似をしていた時のきんちゃんは表情が豊かだ。

「え、え、ほかのもできんのか?」

「他の者についてした事はないが」

琥珀がわくわくした声と興奮した顔できんちゃんを見る。

「なぁなぁ、じゃあさ、ミレイとかやってみろよ」

琥珀の物言いにきんちゃんがまた斜め上を向いてから一人頷くと腰を屈めて琥珀の顔を見てからそっと頬に手を当てその手を滑らすように動かし琥珀の前髪をかき上げた。

「あなたの目のように綺麗な宝石の名前よ」

「ぉお…ホントにあんときのミレイみたいだ」

顔を赤らめながら琥珀が言う。

確かにきんちゃんのその表情は慈愛に満ちていて琥珀のみならず俺まで顔が赤くなった。

「きんちゃん、すごいね」

俺はため息をつきながら感想を漏らした。

「そうなのか?」

きんちゃんが首を傾げた。

何故、褒められているのかがよくわかっていないらしい。

「んじゃ、コーガとかディーもできるか?」

琥珀が調子に乗ってきんちゃんに言う。

「コーガとディー…」

きんちゃんはまた軽く首を左右に揺らしてから上を向いてから両手の甲を顎の下に重ねて置いて首を軽く傾けた体制でオレをまじめな瞳でじっと見てきた。

「『こんなもの』ではないよ。

武局での座学がはかどるならそれはとてもいいことだし、

君は自分の作ったものを『こんなもの』というのかい」

「うわ!あの時のディーさんだ!」

そう言われた時、確かにディーさんは座っていて両手の甲の上に顔を乗せて軽く傾げるように俺を見てからそう言った。

きんちゃんの模倣まねが上手すぎて俺の体がのけぞった。

「へー、ディーってそんなこというんだ」

琥珀が腕組みをして頷く。

「エドとかもできるのか?」

琥珀の要望リクエストにきんちゃんがまた上をむいた。

上を向くことでその場面を思い出しているようだ。

きんちゃんが琥珀の方を向いてから腰に片手を当てて口元に手を当て上を向き片足をぶらぶらと揺らした。

「琥珀!早く変われよ!オレの方がとおくにとばせるぜ!」

先日、琥珀の友達だと言っていたエドのいう子が琥珀の漕いでいた鞦韆ブランコに向かってそう言っていた。

その時の動きも表情も忠実に模倣まねしている。

「ヴィ!すげぇ!」

琥珀が手を叩きながらきんちゃんを褒めたたえる。

「ホント、『歌舞局』に入れるよ」

俺がそう言うときんちゃんが瞬きを何回かした。

「じゃあ、コーガは?」

ヒューゴも面白がり始めたらしくきんちゃんに要望リクエストした。

「コーガ…」

ヒューゴに言われて、きんちゃんが口元に拳を当ててとんとんと叩きながら上を向いてから、

「うわっ!!!」

と声を上げてヒューゴに抱き着いた。

「離してほしければ今日俺と一緒に寝てくれ」

「「あぁ!!」」

琥珀と俺は先日のコーガさんの姿を鮮明に思い出してポン!っと手を鳴らした。

ヒューゴはきんちゃんに思いもよらず抱き着かれて赤くなりながらも嬉々とした顔できんちゃんにべったりと抱き着き返した。

お前、コーガさんの時は引きはがそうと必死だっただろ…あからさますぎだバカ。

そんなヒューゴを見た琥珀が呆れたようにため息をついた。

「ヴィってさぁ、いつも誰かのまねしてりゃいいんじゃねぇか?」

「きんちゃんはこのままでいいの!僕、ちゃんとわかるし!」

琥珀の言葉にヒューゴが噛み付く。

お前がそういうことを言うからきんちゃんの無表情がそのまま治んないんだよ。

「そうだ!エディンもできるのか?」

ヒューゴの言葉にお手上げとばかりに両手を上げていた琥珀がいいことを思いついたかのようその手を下してポンと手を鳴らしながら言った。

そういわれたきんちゃんが頷いてヒューゴから体を離すと立ち上がり後ろに1つに縛った髪をほどいて頭の両端に縛りなおす。

名残惜し気にきんちゃんを見るヒューゴ…おまえいつも隙あらばきんちゃんにくっついてんだろーよ。

俺が心の中で突っ込んでいるうちにきんちゃんの真似が始まった。

「…あとコーガ様がお飲みになるのでしたら食糧庫からお酒をとってきてください」

そういいながらあちらこちらを指さしながら身体だけは真っ直ぐ前を向き上を軽く見上げるような体勢をする。

「そもそも、ヴィ様が行く必要がありましたか?!ああ、それはそのままで。その上、皆の前であのように破廉恥な姿になるとは!どうして自ら危険なところに…琥珀、食器カトラリーはその引き出し」

きんちゃんがこの前のエディンを見事に再現していた。

「ぎゃはははは!この前のエディンだ!そっくり!!」

琥珀がひっくり返って腹に手を当てながら大笑いし始める。

俺も手に拳を当てて笑うのを我慢していたが肩が震えるのは抑えられなかった。

「うわぁこの前のエディンだ!コワっぁ!」

ヒューゴが肩を竦めた。

「ヴィ様」

「今の声、すげぇそっくり!」

琥珀が涙を流してきんちゃんを指さす。

「本人ですので」

その言葉に皆その場で固まった。

「エ、エディン」

皆無言で固まっている中きんちゃんが絞り出すように声を出した。

微笑んでるエディンが怖い。

「皆様、ご歓談のところ申し訳ございませんがお茶のご用意ができました」

こちらを見ながらにこやかに言うエディンに皆の顔が青ざめた。

「見ていたのか?」

きんちゃんの問いかけにエディンが無言で頷く。

「皆様に私がそのように見られているということがよくわかりました」

「き、きんちゃんはみんなの真似していただけだから…」

俺はエディンの真似だけをしていたわけじゃないことを伝えるべく慌てて両手を軽く左右に振りながら言った。

「では今後は真似される方たちのお気持ちもご考慮しておやりになるとよろしいかと思います」

「「「「はい…」」」」

俺たちはエディンの目だけが吊り上がったほほ笑みの中、全員で声をそろえ返事をしエディンを先頭にして頭を下げたままぞろぞろと用意されたお茶を飲むために屋敷に向かう扉に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ