余話5 15学区 ケアレズ学舎 1年 琥珀 学舎
「琥珀、起きなさい」
エディンの声がしてオレは目をこすりながら起き上がった。
「今日から学舎に行くのでしょう!早く顔、洗いなさい!」
エディンの声に背中を押されるように勢いよく寝台から立ち上がって洗面所に急ぐ。
そうだ、今日からクラウスの言っていた学舎ってやつに行くんだった。
「おはよう、琥珀」
やることやって食堂に行くとヴィが食器を並べていた。
「はよ!…いて!」
オレもヴィに返事を返すとエディンに軽く頭をぶたれた。
「おはようございますでしょ!」
「ヴィだって短く言ったじゃねーか」
ヴィの方を見ると軽く首をまげてからうなずいた。
「それはすまない。おはようございます。琥珀。これでよいか?」
あいかわらず人形みたいな顔のままのままオレに言ってきた。
「おはようございます!ヴィ!エディン!これでいいんだろ!」
エディンが胸の前で両腕を組みつり目を細くして
「まぁ、いいでしょう」
とつぶやいた。
「食事が終わったのだから、着替えますよ!」
食器をあらいながらエディンが頭のりょうはしにしばった髪をゆらしながらオレをせかす。
「琥珀は今日から学舎に行くのだな」
ヴィがその食器をふいて棚に入れながら目を細めて言う。
「ヴィ様もお出かけになるのですから琥珀と一緒に着替えてもらいます」
じろりとヴィの方を見ながらエディンが言う。
「エディンが忙しいのであれば私一人で着替えるから問題ない」
ヴィがのほほんと言うとエディンが目を吊り上げた。
「ヴィ様が一人で着替えるのは問題しかありません」
オレは匙をふいて引き出しにしまいながらヴィを見た。
「なんだ、ヴィは一人で服着れねぇのかよ」
「自分で着るのだがエディンがそれではいけないという」
「ヴィ様は着てればいいというお考えの方ですので」
エディンがぴしりといつものように言う。
「服は着るためにあるのだからそれでよいだろうに」
ヴィが首を左右に振った。
「いいわけあったら直しません!」
エディンに強く言われてヴィがエディンから目をそらしてだまって皿を棚に入れ始めた。
「ヴィ様!私は琥珀と学舎に行きますのでくれぐれも私が帰る前にだ…ヒューゴを家に連れ込まないでくださいね」
だ…ってたぶんヒューゴのこと駄犬って言おうとしたんだよな。
「連れ込む?」
エディンがしまったという顔をした。
「私がいない場合は屋敷に入るときはミレイ様やコーガ様と一緒にお入りくださいということです」
「なぜだ?」
ヴィが首をかたむけた。
「そりゃぁ、男と女だから…いてっ!」
オレがヴィに教えてやろうとしたらエディンがオレの頭にげんこつを落とした。
「?…エディンが帰っていたらいいのか?」
ヴィが不思議そうにエディンに聞いた。
「そうです!!」
めんどくさそうに屋敷の扉に鍵を掛けながらエディンが答えた。
学舎は今いる屋敷から歩いて半時程のところだった。
エディンに連れてこられたんだけど屋敷よりは広くて横長の建物だった。
その建物の左横の扉から入るとエディンがすたすたと歩いて入り口の上になんか書いてある部屋にはいっていった。
「琥珀ちゃんね。私は担任のエリディアよ」
エディンが大人の人となんか話しているときに知らないおばさんがオレの側に来てヒューゴみたいにひざをまげてオレに声を掛けた。
「お、おう」
「『おう』じゃありません『はい』ですよ」
オレが言ったことに気が付いたエディンが大人の人と話しているのにこちらを振り向いて言った。
「では、よろしくお願いいたします」
エディンが話していた大人に頭を下げて部屋から出ていこうとした。
オレは思わずエディンの服をつかんでしまった。
「エディン、帰るのか?」
「ここからは琥珀ががんばるところですからね」
エディンが珍しくオレに笑いかけた。
オレは何をがんばるんだ?!
「琥珀ちゃん、一緒にお友達のところに行きましょうね」
声をかけてきたエリディアとかいうおばさんがオレの手を持った。
「今日から、皆のお友達になる…」
エリディアに背中をポンと押されて
「琥珀だ」
と言った。
エリディア連れてこられた部屋には小さな机と椅子がいくつもあってそこにオレと同じくらいの子どもが1人ずつ座っていた。
「女かぁ」
「どこのこ?」
「琥珀って名前、変じゃね」
「ちびだよな」
いろんな声が小さいけどたくさん聞こえた。
自分と同じくらいのやつらを見るのは初めてだったが言ってることにイライラする。
今すぐにでもなぐってやりたかったけどエディンが怒りそうなのでがまんした。
「みんな、なかよくしましょうね!」
エリディアがいうと
「「「「はーい」」」」
と部屋の中の者が全員返事をした。
思ってもないくせにとオレは思った。
「なぁなぁ、おまえ、町はずれのおばけ屋敷にいるんだろ」
黒い髪があちこちにはねてるヤツが休み時間ってときにオレに言ってきた。
「なんだそりゃ」
オレが言うとそいつはえらそうに両腕を組んだ。
「おまえんちこの町ではおばけやしきっていわれてんだぜ」
「そうだ、そうだ」
茶色い髪のヤツがとなりから言ってきた。
「エド、やめなさいよ。エリー先生もなかよくしなさいっていってたでしょ!」
金色の髪のヤツが黒い髪のヤツに言う。
黒い髪のヤツはエドっていうらしい。
「こいつにきいてるだけだからいいじゃん…そこにいるんだろ?」
「別にばけものやしきなんかじゃねぇよ」
オレが言い返すとそいつが鼻で笑った。
「だって、みんなあそこをそういってるぜ…おまえもばけもののなかまなのか?」
「オレも、ヴィもエディンもばけもんなんかじゃねぇ」
「こいつ女なのにオレだって!」
エドがオレを指さして笑った。
「オレは女なんかにならねぇからいいんだよ!」
オレは思わずエドをぐーでなぐっていた。
「ばけものやしきのやつが!」
エドがオレがなぐったほっぺたを片手で押さえながら言った。
「ふざけんなぁ!オレもヴィもエディンもそんなんじゃねぇ!」
知らないヤツにそんなこと言われて頭の中が真っ白になった。
「こはくちゃん!」
金色の髪のヤツが止めてたけどオレのうでは止まらなかった。
「いいなおせ!いいなおせ!オレん家はそんなんじゃない!」
じぶんでもなにをいってるかわからないままエドのヤツをなぐり続けた。
「もうしわけございません」
エディンが大人たちに頭を下げていた。
「あいつらが!」
エディンが頭を下げながらオレの肩に手を置いた。
「このままでは…」
大人の男が言った。
「申し訳ありません」
エディンがもう一度頭を下げた。
「ちがう!あいつが!あいつが!」
オレはくやしいいのとちがうことをエディンに言いたくて必死にエディンの服をつかんだ。
オレはなんであんなに腹がたったのかはわからなかったがでも、なぐったのは確かだからオレがあやまるのはありなのかもしれないがエディンがあやまるのは違うと思った。
「一日だけでその結論はよくありません」
エリディアというおばさんが言いだした。
「子供同士話し合えば琥珀ちゃんもエドラム君もお友達になれると思います」
あのエドと言われてた黒い髪のヤツはエドラムって名前らしい。
「やれるかね」
おっさんがエリディアに言った。
エリディアが頷いた。
「なんで、そのようになったのですか?」
屋敷の客間でエディンの前に立たされる。
「屋敷のことばけものやしきだっていうから…」
「ぅうん?どういうことだ?」
長椅子に座っていたヴィが首を左に傾けた。
エディンがため息をつく。
「あいつがここのことおばけやしきっていって、
オレ達もおばけだろうって言ってきやがったから」
「お化けとやらがいるなら私も見て見たいが。
それにしてもなぜそのような根拠の無い噂が立つのだろうか?」
ヴィが顔をななめ上にあげてまばたきをした。
エディンはなにか思いあたることがあるらしく、ため息をついた。
「だからといって人を殴るのはよくないことですよ」
「いいじゃん、僕も学舎の時たくさんケンカしたし」
エディンの言葉にヒューゴがヴィの隣で頭の後ろに手を組みながら言う。
「一緒にしないでください」
エディンににらまれてヒューゴがぺろっと舌を出した。
ヴィはエディンに言われたので屋敷に入らずエディンが戻るまでヒューゴと中庭にいたらしい。
ヴィはエディンの言っている意味がまるっきりわかっていない。
「それはそうと琥珀にケガはないか?」
ヴィが立ち上がってオレの前まで来ると腰を落としてオレの顔を見た。
「こんなとこに傷がついてるぞ」
オレの顔を両手で包むように持ち上げて右下に目を落とした。
「わぁ!きんちゃん薬箱あるから!あるから!なめなくていいから!」
ヒューゴがあせったようすで薬箱を持って走りこんできた。
「そういえばそのような約束だったな」
ヴィがなにかを思い出したように、オレから手を離すと薬箱を開けてオレのほっぺたについているらしい傷の手当を始めた。
「先生はいいと言ってくださいましたが、明日も学舎に行きますか?」
「行く」
エディンがかがんでるヴィの上からオレに聞いてきた。
ここで学舎に行かなくなるのはなんだか負けた気がしてイヤだ。
学舎での授業っていうのも思ったより楽しかった。
それに学舎に行かないとクラウスの役に立てない。
「エドってヤツになんか言われても聞かないことにする」
エディンが軽くため息をついた。
「それでも言ってくる子がいたなら私に言いなさい」
「かわりになぐってくれるのか?」
「そんなことは致しません。闇討ちするだけです」
エディンはするどい歯を見せながらニッと笑った。
「琥珀に物騒なことを覚えさせるのはどうかと思うぞ」
ヴィが使い終わった物を薬箱に戻して箱を閉めながら言う。
「これもまた勉強です」
「そぉうかなぁ~」
ヒューゴがみぎひだりに首をゆらしながら言った。
次の日の休み時間にオレとエドはエリディアせんせい…みんなはエリーせんせいって呼んでると昨日オレを止めた金髪の子フラウが言ってた、に呼ばれて教室ではないとこに連れてこられた。
「エドラム君、あなたは琥珀ちゃんのおうちの事『お化け屋敷』っていったそうね」
「だってホント―のことじゃん」
エドが口をとがらせて言う。
「もし、エドラム君のおうちのことをそういう風に言われたらエドラム君はいやじゃないの?」
「そりゃ、やだけど…」
「人のことやおうちのことを悪く言っていやな気持ちにさせるのは先生良くないと思うわ」
「……」
エドが下を向いて唇をかみしめた。
「そんなこと言われて琥珀ちゃんもとてもいやな気持だったわよね」
オレはうなずいた。
「でも、ぶったら今度はエドラム君が痛くていやな気持ちになるわよね」
そう言われてオレはだまってうなずいた。
「だから、二人ともごめんなさいして、つぎから仲良くできるようにできないかしら?」
「う…」
エドが唇をかんだままオレの方に顔を向けた。
「おまえんちのこと『おばけやしき』って言ってわるかった…ごめん」
エドがそういうのでオレはエドをにらんだまま、
「オレもうんとなぐってすまん」
と言った。
おたがいになっとくしていないのはエドの顔を見てもわかった。
「じゃあ二人とも仲直りね」
エリー先生がそういいながらオレの手とエドの手をかさねた。
オレもエドも目が大きくなったがエリー先生がニコニコとほほ笑んだので、
「「はい」」
と二人で返事をした。
「じゃあ、二人とも教室に戻りなさいね」
エリー先生が見てるのでオレとエドは手をつないだまま部屋を出た。
部屋を出てエリー先生から見えなくなるとオレはひったくるように手を自分の方に引いた。
それからオレは服のすそでエドがさわっていた手をごしごしとこすりだまってエドをにらみつけてから教室に足早に戻った。
「それで、エドという子とは仲良くなったのか?」
何日かたってからヴィが食事の用意をしながらオレに聞いてきた。
「なるわけないだろ」
「そうか…」
あの日からオレはエドとその周りにいるヤツらをてっていてきに無視した。
てっていてきって言う言葉をフラウが教えてくれた。
エドがオレの近くにきたらオレはそこからはなれることにしていた。
フラウやその友達のディアルとかとは仲良くなった。
「なぁ、エディン、フラウ達がここに来てみたいって言ってんだけどいいか?」
ヴィに聞いたところで『問題ないがエディンに聞いてみたほうが良い』というのが分かっていたので最初からエディンに聞いた。
エディンは鳥を焼きながら斜め上を向いた。
「ヴィ様はどう思われますか?」
エディンがヴィに話をむけた。
「その子らが来ることに問題ないが…琥珀、そのエドという子も誘ったらどうだ?」
「えー!ヤダよ!なんで、あんなヤツ!!」
オレは皿を運びながらほっぺたをふくらませた。
「そうは言うが琥珀、しばらくはその子と同じ部屋で勉強するのであろう?仲たがいしたままだとお互いに気分が悪いのではないか?」
「そりゃ、そうだけど…オレあいつのことゆるしてないし!」
ヴィが鳥をエディンから受け取りながら眉を寄せた。
「エドという子がそのような言動をとるのは知らないからだと思うぞ。人は知らない事に対しては警戒したり怯えたりするものらしいからな」
だから、ここに呼べば二度と言われないのではないか。とヴィが言葉をつづけた。
「きんちゃんやけどしちゃう!」
ヒューゴがヴィの持った焼き鳥の大皿をそっとヴィの後ろから支えるように持つ。
「これは僕が持っていくから…重たいもんは僕に言ってね!」
「ありがとう、ヒューゴ」
ヴィが背中の方に振り向いてにっこりと笑うとヒューゴの顔がにへらっとくずれた。
それにしても、ヒューゴって『寮』ってとこに住んでいるらしいんだけど毎日毎晩ここで飯食ってる。
ヒューゴはヴィのことが誰がどうみても好きらしいんだけどヴィは気付いていないらしい。
男と女って言ってもオレが今まで見てきたのとはだいぶ違う。
オレの見てきた男と女は男が、えばったり女をなぐったりしていた。
「琥珀、どうした?」
オレがヒューゴとヴィをじっと見ていたのでヴィが首を傾げながらオレに声をかけた。
「あいつのこと呼ぶかは明日、学舎に行ってから考える」
「そうだな、琥珀のいいようにするのが良いと思う」
ヴィがオレにもにっこりと笑った。
「エディンに聞いたらいいって言ってたから今度オレん屋敷に来いよ」
オレは次の日、フラウとディアルに言うとフラウが金色の肩までの髪を振りながら
「わぁ、ほんと?楽しみ!」
と両手を顔の前で組みながら言った。
「いつならいいの?」
ディアルが茶色い真っ直ぐな髪をさらさらとならしながらオレに聞いてきた。
「エディンが学舎が休みの時ならいつでもいいって言ってた」
オレはオレの机の横に立つ二人に顔を上げて言った。
「なんだよ、おまえ、自分ちなのにだれかに聞かねぇといけないのかよ」
エドがオレの側に来てりょうてのひらを上に向けてばかにしたように言ってきた。
オレはフラウとディアルにめくばせをしてそこからはなれようと席を立った。
「どんなとこだかちゃんと見て来いよ!」
エドがフラウとディアルに向かって言った。
オレはカッとなって
「そんなに言うならお前も見に来ればいいだろ!それともこわくて来れないか」
とエドに言った。
「こわいわけねぇだろ!」
「へ!どうかな?」
オレがぎゃくにばかにしたようにいうとエドの顔が赤くなった。
「ばかにすんなよ!行ってやんぜ!おまえんち!」
ヴィが言うように呼ぶつもりはなかったんだけどなりゆきでエドも屋敷に来ることになった。
学舎が休みの日、朝飯が終わったあたりで屋敷の扉がたたかれた。
「琥珀のお客様でしょ、琥珀が出なさい」
エディンに言われて扉を開けるとフラウとディアル、エドと茶色い髪のヤツが表に立っていた。
「よくきたな」
フラウとディアルにオレは笑いかけてエドと茶色い髪のヤツにはばかにしたような目をむけた。
「きてやったぞ」
エドがえらそうに言った。
「ふーん」
オレが言うとエドがぷいっと横を向いた。
「中に入ってもらいなさい」
エディンの声がしたんでみんなを客間に通した。
客間には休みと言えば朝からいるヒューゴがいつものようにヴィの隣に座っていた。
「みんな、琥珀の友達なの?」
ヒューゴが立ち上がりながら言うと四人の前に立った。
「こんにちは、僕はヒューゴだよ」
「初めまして、フラウエル・アマリドです」
「初めましてレイディアル・カインスです」
「エドラム・ファインドです」
「ギーゼル・カイドルです」
四人がヒューゴにあいさつする。
「私はヴィ・ワルドだ」
ヴィも立ち上がりヒューゴの横に立って四人に声を掛けると四人ともヴィの顔を見上げて口を開けたまま固まってしまった。
「どうかしたのか?」
ヴィが軽く首を傾げながら声をかけるとエドとギーが顔を赤くした。
それを見たヒューゴがあわててヴィの肩に手を乗せて
「琥珀のお友達だから邪魔しないようにしないとね」
とヴィを長椅子の方に連れて行った。
こいつらにまでやきもちをやくってヒューゴ小さい子みたいだ。
「お茶を用意しているから、琥珀とお友達は座っていて良いぞ」
ヴィがヒューゴに連れていかれた長椅子には座らないでそのまま台所に向かった。
「僕も手伝う!」
すぐにヒューゴもその後をついていった。
二人が客間からはなれると四人がいっせいにため息をついた。
「す、すごいきれいな人」
フラウが口に手を当てながら言う。
「そうか?とにかく茶を出すからここに座ってろよ」
ヴィはフラウがおどろくほどきれいなのだとは初めて知った。
オレはヴィのことを一度もそう思ったことがない。
四人はなんだかぎくしゃくとしながら長椅子に座って両手を膝にのせていた。
エディンが盆に茶をのせヴィとヒューゴが配ると四人ともきんちょうした感じで茶を飲んでいた。
エドなんか学舎で見ているときと大違いだ。
オレは思わず笑いそうになった。
「お茶を飲み終わったら中庭を案内してあげなさい」
エディンがオレに言うのでうなずいた。
茶を飲み終えたんでみんなを中庭に案内するとヒューゴとヴィも中庭に出てきた。
「すてきな二人よね~、まるでお姫様と騎士様みたい」
ディアルが目をキラキラさせながら二人を見る。
ヴィはほんとはとなりの国の姫ってミレイから聞いたしヒューゴは大きくなったら騎士になるからまちがっちゃあいねぇんだけどヒューゴはすぐにヴィにくっついてビービー泣くし、ヴィはああ見えて罠とか作るの好きだし、そんなお姫様と騎士様はイヤだ。
「どうしたの?」
オレはたぶん変な顔をしていたんだろうフラウが心配そうにオレの顔を見た。
そういうのなんていうんだっけ…あぁ、そうだサギっていうんだ。
「なんでもない」
オレはフラウに笑いかけた。
「あれなんだ?!」
エドが何かを見つけて走り出した。
「あ、そっちは!」
オレが止める前にエドが穴に落ちた。
「?!」
エドが目を白黒させながら穴のふちに手をかけた。
「変なとこ行くと罠あるから気を付けてね」
ヒューゴがニコニコと笑いながらこっちに歩いてきて言った。
「え?罠?」
エドが穴の中やその周りを見ようときょろきょろとした。
「それは罠ではないがな」
ヒューゴの後ろから来たヴィが言う。
そう、あの穴は前にオレも落ちた穴だ。
「罠があるんですか?!」
なんだかギーが目をきらめかした。
「うん、あちこちにあるから気を付けてね」
ヒューゴが片手でエドを穴から出しながら言った。
「あれも、そうですか?」
ギーはななめ前の木の上の方を指さした。
「あれは今、修理中だから近寄っちゃだめだよ」
「クラウス!」
オレはクラウスの声がしたので振り向いた。
オレはうれしくなってクラウスの足に飛びついた。
「琥珀のお友達?」
クラウスはオレの頭をなでながら聞いた。
「うん!学舎の友達なんだ」
オレはクラウスにオレがちゃんと学舎に行ってることを知ってほしくてそう言った。
「琥珀がんばってるね」
クラウスが目を細くしてほほ笑んだ。
それだけでオレはうれしくなって元気が出た。
「こんにちは、俺はクラウス。琥珀と仲良くしてくれてありがとうね」
クラウスが四人にあいさつをした。
四人も頭を下げた。
「なんか作ってみたいのかい?」
クラウスがギーに声をかける。
ギーがうれしそうに何回もうなずく。
「じゃあみんなで作れるものなんか作ろうか」
クラウスがあごに手を当てながら上を向いて考えていた。
「お前んちってすげぇなぁ!」
次の日に学舎に行くとエドが顔を赤くしてオレの席まできていきおいよく話し出した。
「ほんと!すげぇよ!」
ギーも来て両手をぐーにして振りながらオレに言ってきた。
あの後、クラウスはいつもオレやヒューゴとヴィが昼寝している大きな木に紐をかけて鞦韆というヤツを作った。
みんなで木をけずって穴をあけてひもを通したりして楽しかった。
昼飯をみんなで食ってから出来上がった鞦韆で遊んだ。
ヒューゴが鞦韆の上からのくつ飛ばしという遊び方も教えてくれた。
オレとエドがせっせんになってみんながオレとエド両方をおうえんした。
で、おやつを食べるころにはみんな遊びすぎてへとへとになったんでみんな家に帰るようにエディンに言われた。
「なぁ、また行っていいか?」
「オレんちは『おばけやしき』じゃなかったのか?」
オレはにやにやしながらエドに言った。
「わるかったよ!もう絶対言わないからさ!」
エドが席に座っている俺の机に手をついて頭を下げた。
「ギー、おまえも」
「ほんと悪かった…ごめんな」
ギーも同じようにしたのでオレは両腕を胸の前で組んで
「わかったんならまた呼んでやるぜ」
と胸を張って言った。




