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3-28

 何事だ?!

振り向くと悲鳴と叫び声の合間から立ち上がった黒髪の少女が血が滴るなにかを持って笑っていた。

「アル!」

「なにしてるの!」

「おねえちゃん!」

「これはおまえたちがもつようなもんじゃない」

少女が青い瞳を天窓の明かり受け光らせ言う。

どこかで見た状況シュチュエーションだ。

急なことに驚いて少女の方に目がいってしまった。

想定外だ。

少女は無造作にその血まみれの手を衣嚢ポケット入れる。

「おねえちゃん!」

悲鳴と泣き声の中にいる彼女が手を上げる。

「だいじょうぶ…だ、から」

声を出している彼女を見ると青ざめた顔で腕から血を流している。

余り大丈夫ではないようだ。

腕から血を流している彼女の手当てが先だ。

私は彼女のもとに向かい彼女の傷口を見た。

通路にいたヒューゴが剣を鞘に戻し牢に走り込み庇う様に私の前に立った。

だが今度は足元に人がいるのと部屋の狭さで剣が抜けないようだ。

彼女の上腕は真っ直ぐに線を書いたように皮膚が開き血が流れ出ている、

『角指』の棘の部分を使って自分の服を裂いた。

以外に重宝する道具だ。

布嵩の多い服を着こんでいて正解だった。

「巫女様?!」

彼女の横に座り布を患部に当てて固定してから腕の付け根に細く切りひも状にした布を強めに縛る。

「彼女の手を上にあげて、数を数える」

そこにいた少女に持ち上げた彼女の腕持たせて言う。

「?」

「早く」

「あ、え、1,2,3」

「1800まで数えたら一回この紐を緩めてまた閉めてほしい」

「7、はい、9…」

「おい、おまえ」

少女が笑いを含んだ声で誰かに向かい呼び掛けた。

私は顔を上げたが少女の表情はヒューゴの背中で見えない。

「お前“精霊石持いしもち”だな」

魚類の名前か?

そう言うと素早い動きで少女が私の頭上から覆いかぶさるように降りてきて急に腕を引かれた。

ヒューゴの頭上を飛び越えて来たようだ。

「お前も来い!」

「うぁ?!」

少女に引きずられ体が一瞬宙に浮いた。

思いのほか少女に力があるのに驚いた。


ゥガァ!


「ギャァー!!このクソ犬がぁ!!」

少女の叫び声と唸るような声がして声の方を見るとヒューゴが狼姿形になって少女の足にかみついていた。

少女は痛みからか私をつかむ指が緩んだ。

私は手を床について反動を使い後ろにはねるように少女から離れた。

少女の鋭く尖った爪先が怒りを持ってヒューゴの目に向かう。

「ヒューゴ!!」

私の血の気が下がり手が冷たくなった。


ガァ!


少女の爪がヒューゴを傷付けたようでで声をあげて少女の足からヒューゴが口を離す。

ヒューゴは口を離してすぐに跳ね飛び少女から私を隠すように立った。

“チッ!”と舌打ちをして噛まれた方の足を一度振りしてから少女がひらりと片足で後ろに飛び、壁に一度二度足を当てて弾みをつけると人であれば届かぬであろう天窓からそのまま去っていた。

唖然として天窓を見上げてからふと我に返った。

「ヒューゴ!!」

私は立ち上がって前に立つヒューゴの顔を見た。

幸いとっさに顔をそらしたらしく目には傷はなく目の横に縦に傷が走っていて血が流れていた。

血が流れて金色の目にかかり見えにくそうだった。

「座れる…か?」

私の言葉にヒューゴがすっと腰を落とした。

私は自分の指が細かく震えていることに驚きながら指輪の向きを変えてからヒューゴの顔を持ち上げの傷に口を当て血を丹念になめとった。

しばらくそうしていると出ている血の量が少なくなったので安堵しながら服を裂いてその布で残りの血を拭った。

通路から怒号と剣のあたる音、叫び声などがないまぜに聞こえてきた。

どうやら、ディー達と信者達は同時にここまで来たらしい。

ならばもう彼女等は大丈夫だろう。

そう思いながらも動揺していたのだろう私は無心にヒューゴの血を拭い続けていた。


 「きんちゃん!その格好?!」

ディー達と共に来たミレイが目を丸くして言う。

「止血に使っただけだが」

着せられていた服はもう原形をとどめてはいなかった。

「?下にも着ているから問題ないぞ」

大体、いつも侍女はその状態から私に服を着せている。

ので、問題はないと思ったのだが皆に様子を見る限りそうでもないらしい。

ディー達は顔を赤らめたまま私から目をそらしている。

「そのようなことより取り急ぎ、彼女とヒューゴを何とかしてはくれまいか」

血を流し更にぐったりとしている彼女と混乱パニック状態で泣いたり祈ったり放心したりとせわしない少女たちを見ながら私は言った。

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