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3-27

 通路の先の声のする方へ向かうと明かりの下、男が二人抜き身の剣を持って立っていた。

「誰だ!お前ら!?」

「誰か!侵入者だ!」

それにしても人に名を問うならまず自分から名乗るのが礼儀かと思う。

もっとも、名乗る前にヒューゴに二人とも無言で倒されていたのだが。

私はヒューゴがとどめを刺してないのに気付いたので辛子の小袋を開けて二人の顔に振りかけておいた。

これですぐには動けないだろう。

「うん、ヒューゴかっこいいぞ」

「今それ言うとこじゃないでしょ」

ヒューゴが顔を真っ赤にした。

ほめ方が間違っていたのだろうか?

男たちが立っていた後ろには木の扉があり、施錠されていた。

ヒューゴの力技で壊してもらおうかと一瞬思ったが破砕音が大きくなりそうだと思い返した。

周囲を見ると私とヒューゴしか人は見当たらない。

ならばと私は小声で歌いながら扉に手を当て糸を出した。

人一人分ほどの小さい扉だったのですぐに糸がいきわたりそれを引くと扉とその周辺が粉々に砕けた。

「「あ…」」

私とヒューゴの声が重なった。

天井が崩落しなくてよかった。

ここまで壊す気ではなかったのだが、中々糸の制御コントロールは難しい。

そのようなことを考えながら中を見ると先ほどよりは回復しているらしい彼女が狭い部屋の張り出した岩からできた椅子の上に怯えた様子で座っていた。

彼女は私の姿を見て驚いたらしく声を上げることもしなかったが目を一度閉じて開いたときには思考力が戻て来たようだった。。

「『救いの巫女様』…やはり我等をお救いいただけるのですね」

やはり彼女等こちらの場合は物理的にこの状況を救うという存在としての『救いの巫女』を求めていたのだとわかる。

彼女は弱弱しく微笑みながら私を見た。

「主様にお会いいただけたのですね!」

彼女は弱弱しい顔を上気させ私に言う。

「主とはあの始祖とかいうもののことか?」

「いいえ!あのような者!」

私の質問に嫌悪の表情浮かべる。

「主様は国を救うためにあの者に従うふりをされていたのです」

『主様』?…私の中で私を恫喝した男の姿が浮かぶ。

の人が彼女の言う『主様』だとしたら私には到底そのような殊勝な者には見えなかったが。

彼女があの男を見る目は前に司書局でユーディアナ嬢がファルト師を見ていた目に似ていた。

ということは容易に相手の言うなりになってしまうという可能性があるということだ。

「『救いの巫女様』!皆を助けてください」

「皆とは、さらわれた者たちのことか?」

「そうです!やはり主様がお伝えくださったのですね!」

いや、あの者からは露ほどにも聞いていない。

「その者たちのいるとこはわかるのか?」

「はい」

そう言いながら彼女は立ち上がったが足元がふらついたので私が身体を当てて腰を支えた。

「きんちゃん代わるよ」

ヒューゴが来て彼女の腕を自分の肩に乗せてその体を支えた。

胸の精霊石いしの辺りに昏い靄がかかったような気がして手をそこに当てた。

やはり彼女の中には精霊石いしがあるのだろうか。

「こちらです」

彼女の案内のもと枝道の多い洞窟の中をヒューゴに支えられた彼女の後ろを歩きながら今の状態を考えていた。

彼女から離れたのにも関わらず精霊石いしの辺りにずっと靄が渦を巻いているような感覚のままなのだ。

精霊石いしが妙な反応をしているのだろうか。

しかも精霊石いしの辺りというよりはやや下の辺りだ。

前にもこのような感じを感じたことがある気がする。


「「「………」」」

枝道を幾つか曲がりながら行くと何人かの話し声が重なり聞こえてきた。

「みんな、無事でよかった」

彼女の横顔が明るくなった。

声のもとまで行くと岩をくりぬいたような様子のところに鉄格子をはめている狭い部屋がいくつか並んでいた。

明かりは高い天井に空いた岩を掘ってできた天窓からのか細い光だけだった。

その中に少女たちは何人かに分けられて閉じ込められている。

この少女たちがハークの周辺の村で誘拐された者たちの様だ。

やはり彼女と同様につい最近にこちらに集められたのだろう。

「きんちゃん、ディー達が来るまで待つ?」

ヒューゴが彼女を牢の側に座らせると通路の方に剣を構えながら首だけ回して聞いてきた。

この鉄格子を開けようにも鉄格子の鍵がない。

「ここの鍵は誰が持っているのだ」

牢の中の少女に聞く

「あそこの人が…」

牢の中から通路に置いてある木の椅子を指さしながら少女が言う。

今日は『巫女』のお披露目会ということで牢守もあの広間ホールに行ってしまったらしい。

この後、ディー達がこちらに来る予定ではあるがディー達の方が早く着くという確証はない。

信徒たちが先に来た場合彼女等を盾にする可能性があるので私達とディーは二手に分かれたのだ。

私は、彼女らを保護し逃がすために囚われているところから自由に動けるようにしなければならない。

いまさら広間ホールに戻るわけにもいかない。

つまり時間がない。

試しに鉄格子に手を当てて糸を出してみる。

私の糸が鉄格子にはじかれるように絡まずに滑る。

そうではないかと思っていたが、私の糸はあまり金属と相性が良くないようだ。

かと言って土や岩とは相性が良すぎるので過剰反応でここが崩落してしまう可能性がある。

「『すくいのみこさま』ぁぁ」

琥珀と同じぐらいの少女らしき声がする。

「琥珀か…」

私は思いついて鉄格子の横に行き手を床の部分に当て歌わずに糸を出した。


ガラッ


岩でできた床の鉄格子の下だけ琥珀の身長の半分ほどの穴が開いた。

予想通りの穴が開いたので今度は糸を鉄格子の横幅に沿うように広げて手で引いた。

今度は浅い穴が長く鉄格子の下に空いた。

今度は鉄格子の左側に行きもう一度床に垂直の穴をあけた。

「ヒューゴ!」

私が呼ぶとヒューゴがすぐに私の横に来た。

鉄格子これを引いてもらえないだろうか」

私が言うとすぐにヒューゴが鉄格子を握り自分の方に引いた。


ガシャーァァン


響く音共に鉄格子その物が綺麗に外れた。

抜けやすくしたとはいえ、さすがヒューゴ力持ち。

私は残りの鉄格子も同じようにして外して回った。

鉄格子が外れ彼女が牢の中の少女たちのもとに走り寄った。

「おねえちゃん!」

「ネフィル!」

「ずっと会えなかったから心配したわ!」

彼女のあとを追うかのように他の牢にいた少女たちも一つの牢に集合する。

「『救いの巫女様』と『あまたの精霊』に感謝いたします」

「願わくばあまたの精霊に栄あらんことを」

牢の中で彼女を囲んで祈り始めた。

「祈るのは後!まずは動く!」

「救いの巫女様!」

私の言葉に少女の一人が振り向きながら縋るように言う。

巫女しごとなのでそなたらを守りはするが救う救われないはそなた等の主観であろうからそこまでは責任持ちかねる」

牢の外で通路を見張っているヒューゴの方を見る。


キャーァ!!

イヤァー!


牢の中から複数の叫び声と悲鳴が聞こえた。

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