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3-21

 「あれ、俺の方が早く着いたみたいだね」

玄関でクラウスが言う。

「クラウス!」

琥珀が嬉しそうにクラウスの足に飛びついた。

「ミレイも、もうすぐ来ると思う」

私の言葉を聞きながらクラウスは琥珀の頭をなでながら客間に進んだ。

「おまえ、はやっ!」

すでに座っているヒューゴを見てクラウスが吹き出した。

「いいじゃん、いつもこうだもん」

「はいはい、頑張った、頑張った」

ヒューゴが口をとがらせて言うとクラウスが笑いながらヒューゴの頭をぽんぽんと軽く叩いた。

「クラウス君、忙しいのに来てくれてありがとう」

直ぐにミレイが来た。

ミレイの声に琥珀がクラウスの隣に張り付くように座った。

「昨日、伺っていたことなのですが」

クラウスが言おうとしたところでディーとコーガが客間に現れた。

「あぁ、そのままでいいよ」

クラウスが席を立とうとするとディーが手を軽く振りながら言った。

二人が席に着くとクラウスはミレイの方を見た。

「昨日伺っていた話を聞いてきたのですが、技巧局うちでは構築課での三人だけのようでした」

「で、なんの指輪かわかったの?」

「いえ、その三人が何日か前から局に来てないそうなんですよ」

「私もグルードに聞いたんだけど、指輪のことは知らないけど、知り合いの男の人が何人かいなくなったらしいって言ってたわ」

「そうですか」

ディーが顎に手を当てて下を向いた。

私とエディンでお茶を入れてヒューゴが皆の前に置く。

「そっちは何かわかったの?」

ミレイの言葉にディーが目を伏せた。

「琥珀、水車作ってみないか?」

クラウスはミレイをちらりと見てからお茶を一口飲んで琥珀に声を掛けた。

「水車?」

「中庭の池で回せると思うんだ。一緒に作ってみるかい?」

琥珀がきらきらとした目でクラウスを見上げた。

「つくりたい!つくりたい!」

座ったままクラウスの腕につかまった。

「すいません、中座しますね」

クラウスは軽く頭を下げて琥珀を連れて中庭に向かった。

「聡い少年だね」

ディーが感心したようにクラウスの出て言った扉を見ながら言った。

「余り、聞かせたくない内容なのね」

ミレイが言うとディーが頷いた。


「あの貿易商の屋敷について内偵したところ彼女がいるかどうかは不明だが多数の男が出入りしているのは確かなようだ」

「僕もそう聞いたよ」

ヒューゴがディーの言葉に乗せるように言う。

「ただ、あそこは拠点ではあるが他にもその者たちが出入りしているところがある」

「別の場所にも集まっているとしたら彼女はあそこにいないかもしれないわね」

ミレイが腕を組んで唸った。

「で、ハークの件はわかったのか?」

私の問いにディーが眉間に皺を寄せた。

「ハークの件はまだ報告が来ていない」

皆、黙ってしまった。

“お、そうだ”と言ってコーガが手を鳴らす。

「花街で聞いたら、あの指輪をした奴らかどうか分からないがあまり見たことの無い男たちが、店の男たちを何かに誘っていたって言うんだ」

「誘っていた…」

ミレイが片眉を上げた後、眉間に皺を寄せた。

「お、俺は聞きに行っただけだぞ」

なぜか慌てたようにコーガが片手をバタバタと音が鳴るかの如く高速で左右に振った。

「そっちのことじゃないわよ」

ミレイに冷たくあしらわれた。

「何に誘っていたのだ?」

私が聞くとコーガが懐から手拭タオルを出して汗を拭きながらこちらを向く。

「それが…奇跡を見せるとか、変われるとか、困ったことはないかとか

人によって話も場所も違うらしい」

「結局、どこに連れて行くのだ?」

「それが、断った奴にしか話が聞けなかったのと

どうもついていったらしい奴は話をしようとしないんだよ」

「使えないわね」

ミレイが冷たい目でコーガを見る。

「すまん」

コーガ大きな体を縮こませて俯いた。

「ディーは彼らの目的が何なのか気づいているのか?」

そうでなければ琥珀とクラウスに席を立たせたりはしないだろう。

「可能性としては…宗教結社じゃないかと思う」

宗教結社についてはいくつか文献で読んだことがある。

ファデルが中心的な信仰の場所とはいえ、各地域エリアごとにその伝えられるものは差異を伴い傍流が派生することがあるというものだ。

一つの精霊に特化したものや精霊から派生したものを信仰の対象としている者もあるという。

「それはクラウス君に聞かせたくないわね」

「なぜだ?」

「大概のそういうものは村や町単位でその地の住民が信仰しているということであまり問題にならないのだけど首都ランドガゼルで勧誘している上に、彼女を監禁しているとなると何らかの犯罪を犯している可能性が高いわ…

知り合いではないとしても同じ局の人間がかかわっているとなると聞いてしまえばクラウス君だっていい気持ちしないと思うわ」

ミレイがため息をつきながら言った。

「そういうものなのか?」

私はよくわからないのでミレイに聞いた。

「私も自分に不名誉なものを乗せられた気がして不愉快ですもの。

皆、局や課に対しては愛着があるのよ」

「武局なら王都に仇名すような考えの奴はたとえ同じ局の者でも殲滅するけどな」

コーガが起き上がって拳を振った。

「武局と一緒にしないでよ」

ミレイがコーガを睨んだ。

「そろそろお食事の用意をしてもよろしいでしょうか」

エディンがミレイの横に立ち小声で伺う。

「私も手伝うわ」

ミレイが立ち上がる。

「後はハークの件が分かり次第ということね」

皆、頷いたので私は琥珀とクラウスを呼びに行くために中庭に向かった。

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