小話2 クラウスは見た2 きんちゃんの疑問
あるうららかな昼下がり、きんちゃんちの中庭でみんなで和やかに昼食を食べ食後のお茶を飲んでいるときにそれは起きた。
きんちゃんがミレイ先輩に無邪気な顔を向けた。
「ミレイ、教えてほしいんだが」
「なあに、きんちゃん」
ミレイ先輩が優しく返す。
「先日、エディンが『邪な狼』と言っていたのだがどういう意味なのだ?」
きんちゃんの隣でヒューゴがウグッっと音を鳴らして菓子をつまらせた。
エディンはミレイ先輩の横に立ったままよそを向く。
「あと、『馬鹿番』とはなんだ?
そうだこれも分からなかったのだが『いい事してやる』と『気持ちいいこと』とは何の符牒なのだ?」
きんちゃんが矢継ぎ早に言う。
ブハォッッ!!
俺とコーガさんが盛大に飲んでいた茶を吹いた。
食卓が一気にこの世のものではない光景と化した。
エディンが何事もなかったかのように黙って食卓拭く。
きんちゃんはこの惨状になったことの意味が分かっていないのできょとんとして見ている。
「どうした?クラウス?コーガ?大丈夫か?」
俺とコーガさんはせき込みながら大丈夫だというために頷いたり手を前後に動かしたりした。
「『いい事』と『気持ちいいこと』は前にクラウスに聞いたのだが要領を得なかったのだ」
「あ、ええとそれは…」
ミレイ先輩が顔を赤らめながら目を泳がせ言いよどむ。
ヒューゴがきんちゃんに見えないようにしながらものすごい顔で睨んでいる。
「ミレイでもわからないのか?」
きんちゃんが残念そうに首を左に傾けた。
「そ、そうね」
ミレイ先輩が見たことのないようなぎくしゃくとした動きで返事をした。
「その他二つについてクラウスは知ってるか?」
うわ!よりによって質問が俺に飛んできたよぉ!
ヒューゴの殺気が俺の方に標的を定める。
「え、あ、いや、俺も知らないかな」
ヒューゴの殺気がそれた。
「クラウスでもわからぬのか…あ、本人に聞くのを忘れていた」
きんちゃんがエディンの方に向いた。
しかし、そこにはすでにエディンがいなかった。
食卓を拭いた台布巾を洗いに行く体でこの場から逃げたらしい。
「デイーならわかるのか?」
ディーさんはずっと下を向いて肩を震わせている。
「ん、あ、俺も知らんな」
”くっくっくっ”っと笑いをこらえる声の合間にディーさんが答える。
「コーガは?」
いきなり名指しをされて油断していたコーガさんがびくっとしながら背筋を伸ばした。
ヒューゴがコーガさんの方を向きいらないこと言ったら殺すという目で見ている。
「あ、ははは、俺が分かるわけないだろ」
コーガさんがだらだらとへんな汗を流しながら言う。
きんちゃんは今度は右に首を傾げて、ヒューゴの方を向いた。
「ヒューゴはウィーガに言い返していたということは分かっているってことか?」
「うん」
ヒューゴがにっこりと笑ってきんちゃんに答えた。
「『邪な狼』っていうのはね、『なんか考えてる狼』ってことで『馬鹿番』っていうのは僕ときんちゃんが馬鹿みたいに仲良しってことなんだ」
「うむ」
「んでね、『いい事』と『気持ちいいこと』とは優しくするってことだよ」
「そうなのか、あれがわかるなんてヒューゴはすごいな」
きんちゃんが心底感心したようにヒューゴを見ているとヒューゴが全員の顔をぐるりと見渡して目で『余計なことを言うなよ』と念押しした。
皆、黙って小刻みにうなずいた。
「そういうことは僕に聞いて」
「そういうこと?」
きんちゃんの首が不思議そうに左右に動いた。
「ん、とね。わからない言葉があったら最初に僕に聞いて」
「わかった」
きんちゃんは目をぱちぱちとさせながら頷いた。
「でもきんちゃんはそんな言葉使わなくていいからね」
ヒューゴがいう言葉にきんちゃんが首を傾げた。
「?そうなのか」
「そう!!」
食卓にいたきんちゃん以外全員が力強く頷いた。




