表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/196

3-7

「こんのぉ!おきろ!!」

朝、着替えて下に降りてくるとウィーガがだらりと伸びたヒューゴの首の後ろを持ち引きずり歩いてきた。

ヒューゴはウィーガの部屋に泊まったようだ。

「おはようございます」

私がエルミとウィーガに挨拶をするとだらりとしたヒューゴがぱっと顔を上げて立ち上がった。

「きんちゃんおはよう!…うぐっ」

ヒューゴが無言でウィーガに後頭部を殴られていた。

「こいつは…さっさとしねぇと置いてくぞ!」

そしてまた首の後ろを持たれてウィーガに引きづられていった。


「おい、ちゃんとついてこいよ馬鹿番バカップル!」

私とヒューゴの前を歩くウィーガが首だけを後ろに向けて言った。

馬鹿番バカップル?」

私は言葉の意味が分からないので聞き返した。

「バカじゃないもん」

ヒューゴが頬膨らましながら言う。

「否定すんのそこだけかよ…とにかくちゃんとついてこいよ」


 なぜ、私はヒューゴを先に歩かせてしまったのだろう。

「ヒューゴ、ウィーガの姿が見えないようなのだが」

ウィーガに釘を刺されて半時もしないうちにウィーガを見失っていた。

戻る分には今来た道を逆にたどればいいので問題ないのだが、確実にウィーガは怒っているだろう。

「ねぇねぇ、あっちに水あるよ!」

喉が渇いたのかヒューゴが私の手を勢い良く引きながらそちらに向かう。

これが原因なのだが。

「ヒューゴ水を飲んだら戻るぞ」

ヒューゴに手を引かれてついていくと森の木々に囲まれた小さな泉にたどり着いた。

泉は木々を移し水は緑に染まっていた。

「うん」

ヒューゴは水を手ですくいながら答えると

「はい」

と水の入った手を私の口元に寄せた。

「のんで」

水を流し込まれて飲み干すととても冷たかった。

「ありがとう」

ヒューゴに礼を言うと嬉しそうに笑った。

「もっといる?」

「大丈夫だ」

小首をかしげて聞くので自分でもすくって飲んでみた。

「飲んだら、戻らねば」

「うん」

水を飲み落ち着いたところで二人で立ち上がり周囲を見る。

「?これは」

泉のほとりに珍しい薬草を見つけた。

あまり流通していないとされてる物だ。

これを持っていけば少しはウィーガの怒りも和らぐかもしれないと根からそっと採取した。

「行こう、ヒューゴ」

ヒューゴに声を掛けて歩き始めてすぐにヒューゴが無言まま手で私を後ろに下げて剣を抜いた。

金物かなものを下げてくれないか幼い獣よ」

草を踏む音と共に木々の間から銀青の髪の長い髪の男が姿を見せた。

「我らが領域に入ったのは其方等の方」

族と呼ばれる者は境界に厳しいと族長会議議事録を読んでわかった。

確かに知らない者に入られるのは嫌だろう。

「ここが貴殿等の領域とは知らずに迷い込んでしまった。

お詫び申し上げる」

私はヒューゴに呼びかけてから目の前に立っている者に言った。

ヒューゴは一旦躊躇してから剣を鞘に戻した。

「すぐにここからは立ち去る故、目こぼしいただけぬだろうか」

銀青の髪の者は銀色の目を何度かしばたかせてから口角を上げた。

「災厄の星の者が偶然ここに来るというのか?」

「災厄の星?」

私が思わず聞き返すと銀青の髪の者がフッと笑った。

「本当に迷い込んだようだな。ならば帰れ」

私は気になってさらに聞きたかったがその者は背を向けて木々の中に紛れてしまった。

「…戻ろう」

どういうことなのかわからないまま私はまだ警戒しているヒューゴに背中に声を掛けた。


「このぉ馬鹿番バカップルがぁ!!!」

ウィーガの怒りに不本意ながら私も含まれてしまったようだ。

「本当に申し訳ない」

響き渡るウィーガの声に首を竦めながら謝る。

「ヒューゴが迷子になるのなんていつものことでしょ」

エルミが笑いながら言う。

「大体、ヒューゴがここに来たのだって迷子になったからでしょ」

その時を思い出したのかエルミが笑いながら言う、

「迷子になって?」

思わず私がエルミに聞くと私の肩をバンバンと強くたたいて思い出し笑いを始めた。

「そうなのよ!ヒューゴったらね!あそこの石のところでべそべそ泣いててねぇ」

「おばちゃん!やめてよ!」

ヒューゴがエルミの口をふさごうとして見事に失敗した。

「それでね、仕方ないからその時は泊めて次の日に連れて行ってあげたのよ」

ヒューゴは真っ赤になってうぐぐっという顔をして下を向いた。

「優しい人に会えてよかったな」

私が言うとヒューゴが顔を上げた。

「きんちゃんってホントいい」

ね!っとエルミに向かって言った。

「?」

「さ、おばあちゃんのとこに行ってらっしゃい」

私は笑いながら言うエルミに肩を押された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ