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3-6

「おばちゃーん!」

「あらぁ、ヒューゴ!ほんとに久しぶりね!」

バルドの村落に着いた時にはもう夕刻となってしまっていたのでウィーガの家に行くことになった。

ヒューゴはウィーガの母親らしき人に会うと飛びついて抱き着いた。

「大きくなったわねぇ」

母親らしき人はヒューゴの頭をなでながら言った。

ウィーガはさっさと家の中に入ってしまっていた。

コーガ曰くバルドの一族は閉鎖的と言っていたが今の状況を見る限り友好的フレンドリーだ。

たぶんヒューゴのおかげなのだろう。

「こちらは?」

女性の言葉にヒューゴが胸の間から私の方を振り向いた。

「ヴィ・ワルドと申します」

私はヒューゴが言う前に丁寧に言ってから、

背中の背嚢リュックからミレイお勧めのランドガゼル城下銘菓 セットを差し出した。

「まぁ!女の子のお土産はちゃんとしてていいわね!

私はウィーガの母のエルミよ

ヴィちゃんよろしくね」

ヒューゴから手を離し土産を受け取りながらエルミ言う。

いったい今まで何を土産に持ってきていたのだヒューゴ。

「おばちゃん、後でおばあちゃんに会いたいんだけどいい?」

ヒューゴの言葉に軽く首を傾げた。

「おばあちゃんちょっと具合が悪いから、

明日、ウィーガがそのための薬草取りに行くからその後の方がいいわね。

今日のところはご飯食べて泊まっていきなさい」

「わーい、おばちゃんのご飯大好き!」

エルミの言葉にヒューゴが両手を上げながら言う。

そういえばバルドは希少な薬草などを供給していると議事録にあった。

「ヴィちゃんは嫌いなものあるかしら?」

「いえ」

私は横に首を振った。


「これは何の肉?」

ヒューゴが口いっぱいにほおばりながらエルミに聞いた。

「鳥だけど嫌いだった?」

「ううん、今日はいつもみたいに蛇とかとってこなかったから」

鳥って…あ、猛禽類だから良いのか。

そしてヒューゴの手土産が主に蛇だということが分かった。

確かに『鷹』について調べようと思ってここまで来たのだからその糸口ヒントであるかもしれない一族なのだから当然と言えば当然か。


『契約の箱を委ねられる

鷹の王、獣の王たる

猛き者グァンディル』


という伝承が『獣の王』と漠然とした獣という全体を示しているのに対して『鷹の王』と『鷹』という固有名詞を言っているのかが気になった。

そしてあの箱の状態は使用しようという者から守るというより明確に使わせないという意思を感じる保存の仕方だった。


『精霊に見初められし

清らかなる巫女の御子』


という文言から考えるに身内に巫女がいたということになる。

つまり精霊石いしを持った者がいたのだ。

精霊石いし持たない者を巫女と呼んだ可能性は否定できないが、

箱がある以上、精霊石いし持ちがいたと仮定する方がいい気がする。

そしてその者の持つ精霊石いしを使わせないようにした為の箱の封印ではないだろうか。

では、その精霊石いしと巫女はどこにいってしまったのか。

すくなくとも砦の箱の中にはないことは私の精霊石いしが呼応しないことで分かる。

呼応しない精霊石いしもあるのかもしれないがとりあえずそこ以外ということを考えた。

アデルの時のように変に呼ばれるぐらいなら先に自分から探しに行く。 

 ということで、ヒューゴのように鳥人に変幻する種族がいないかを砦の麓の村でディーに聞いた。

「うん…たぶん、ウェンファールのバルドの一族がそうだった気がするが…」

ディーの言葉にコーガも頭をかく。

「あそこは閉鎖的だから、行ったところで調べられるかな」

コーガの言葉にディーが頷く。

「バルドは一応、部族会議には出てくるから敵対的では無いと思うが」

「伝手でもありゃ別だけどな」

コーガが左右に頭を振った。

「行けたとしても、あそこまで行くのに馬でも3,4日かかるわよ」

ミレイが頭に地図を浮かべたのか斜め上を見ながら言う。

「それなのだが馬に乗る練習というのはどこでできるのだミレイ」

「私ができるとこに連れて行ってあげるわ」

片目を綺麗に閉じながらミレイが言う。

「助かる。ありがとう」

「バルドの一族なのが分かればまずはそれについて調べてみる」

司書局に行けば部族会議の資料が出てくるだろう。

「ミレイ手間をかけるのだが、『司書局』にまた行きたいのだが」

「いいわよ、研究室の書類出しに行く時でいいかしら?」

「お願いする」

というやり取りの後、ランドガゼルに戻りミレイの知人のところで馬の乗り方を教わり、

ミレイの書類提出のついでに連れて行ってもらい『司書局』でバルドについて調べた。

グァンディル王についても調べたのだが、戦記はあるのだがグァンディル王の出自が具体的には何も書かれていない。

二百年ほど前にガルドの中での五つの勢力が戦っていたという『ヴァルフの戦い』で彼は突然乱世に現れるのだ。

この場合、いくつかの理由が考えられる。

例えば、下の階級から上がってきたので王になった時にそれを悟らせないために急に出た英雄に仕立て上げるなどだ。

他にもいろいろ考えられる。

しかもそれを調べる文献がない。

意図的に何者のかにはぐらかされているようだ。

そのような下準備をしていたのでここに来るのにやや時間をとった。

おかげでヒューゴの『競技会』も見れたので良しとするべきなのだろう。

そして『伝手』がヒューゴだとは思わなかった。

おかげで対応が友好的フレンドリーすぎるほどだ。

ただ、ここに来たのは確固たる資料があってのことではないのでそこまで精霊石いしについての情報が得られるかは不明だ。


「はい、あーんして」

「お、おまえ、な、に、してんだよ!」

ウィーガの慌てたような、うろたえるような声で思考が止まった。

「え?きんちゃんにごはんあげてるだけだけど」

ねー、とヒューゴがスプーンを私の口に当てていた。

「あ、あぁ、また手を止めてしまっていたか。ヒューゴすまない」

私の様子を見てなのかエルミが笑い出した。

「おばちゃんのごはんおいしいでしょ」

ヒューゴにそういいわれながら口の中にスプーンを入れこまれた。

「ん、ん、美味しい」

私はエルミに対して申し訳なく思い何度かうなずいた。

「きんちゃん考え事するとすぐにごはん食べるの忘れちゃうんだよねー」

フフッと含んだ笑いをしながらヒューゴが言う。

「失礼いたしました」

私が飲み込んでからエルミに謝ると息を切らせて笑いながら

「うん、大丈夫よ、うん」

と笑いを途切れさせることなく答えた。

ウィーガは何故か顔を真っ赤にしていた。


食事中さっきは何を考えてたの?」

エルミが食後のお茶を出してくれてから食卓テーブルに肘をついて顎に手を当てながら私に問いかけた。

「『鷹』にまつわるものを探しているのでそのことについて考えていました」

「『鷹』ねぇ…ここら辺だと『鷹』かどうかわからないけど『斑の羽根』なら有名よね」

「あぁ、かっこいいもんなあの歌」

ウィーガが力強くうなずく。

「どのようなものかお教えいただけますか」

エルミが軽く二度ほど頷く。

「うん…ここら辺に伝わる歌なんだけど…」

両手を組みやや上を向いて歌いだした。


『権勢を誇る竜の子らが

鉄と血にまみれた者に挑まれし時

空を切るまだらの羽根が

鉄と血にまみれしものをつかみ

空に放つ

鉄と血にまみれた者が川となり

黄金の谷は守られ

まだらの羽根は

古の竜の宝玉と共に

かの地に降り立つ』


「…っていうのだけどね」

歌い終わってエルミが息を深く吐き出しながら言う。

「『空に放つ』とかかっこいいよな!」

ウィーガが興奮気味に言う。

「確かに猛々しい歌だな」

私は思わず感想を漏らした。

「私はそういうのそんなに知らないからこれぐらいかしら」

エルミが小首を傾げながら言う。

「いえ、参考になりました。ありがとうございます」

「明日、薬草届けるからその時にでもおばあちゃんに聞いてみるといいわ」

「僕、薬草取りに行くの手伝う!」

エルミの言葉に右手をまっすぐ上げてヒューゴが直訴アピールする。

「え~、お前とか」

ヒューゴの申し出にウィーガが嫌そうに言う。

「もし邪魔でないのであれば私も手伝わせていただきたい」

「そうね、手は多いほうが良いから手伝ってもらいなさい」

エルミが顎に手を置いて頷きながら言うのをウィーガがしかめっ面のまま見る。

「ね」

「あー…はいはい」

エルミの念押しのような声にウィーガが嫌そうに片手を手首を曲げて何度か降りながら言った。

「はーい」

ヒューゴはウィーガの表情を気にもせずにエルミに返事をする。

「また迷子になるなよ!」

ウィーガが半目でヒューゴの方を見ながら言うと

「え、きんちゃんいるから大丈夫だよ」

ヒューゴが私を見ながらニコニコとウィーガに返事をした。

「人に頼ってるんじゃねぇ!」

ウィーガの言葉と同時に手がヒューゴの頭を殴っていた。

「いたい…」

ヒューゴが両手で殴られたところを押さえながら涙目でウィーガを見ると

「ふんっ!」

ウィーガが鼻で返事をした。


「あ、いた、いた!きんちゃん今日もやってくれる?」

湯も寝台も貸していただけるということでお礼を言って湯を借りて寝台に向かおうと階段に向かっていると刷子ブラシを振りながらヒューゴが言ってきた。

「かまわないが」

ここまで来るのにはヒューゴの背中に乗せてもらったので疲れたのだろう。

「んじゃ、こっちこっち」

ヒューゴに手を引かれて外へ行くと木々の間から星がこぼれるように見えていた。

驚いて見上げたまましばらく固まってしまった。

首が痛くなり下を向くと一緒に空を見ていたヒューゴにまた手を引かれやや大きな石があるとこに来た。

「ここ座って」

ヒューゴが石の前に私を立たせたので言われた通りにそこに座るとすぐに狼姿形になり私の膝に頭を乗せてきた。

ヒューゴの頭からゆっくりと刷子ブラシで毛並みを整えていると黒毛の中に金色の毛が数本混じっているのに気が付いた。

「前にも…」

何か引っかかるものを感じてつい呟いたらヒューゴが膝から顔を上げた。

「気持ちいいか?」

問いかけると金色の目を細めて答えた。

「頭を下におろすぞ」

この体勢だと背中の方までかけられないので言うと頭を上げた。

私は立ち上がり寝そべっているヒューゴの腹の辺りに座ると背中に刷子ブラシをかけ始めた。

ヒューゴの後ろ脚が私を巻き込むように動きふさふさの尾が腰に絡みついてきた。

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