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「あれじゃ、開けられないぞ」
麓の村の食堂で食事を囲んで話していた。
コーガの言葉に皆、頷いた。
罠を解除して入った部屋の先には確かに『箱』らしきものが部屋の突き当りにあった。
途中、残りの小さな罠にコーガがかかる程度ですんなりとそこまで行けた。
ただ、その『箱』には地面から固定された鉄の鎖が幾重にも巻かれ、その鎖の形からたぶん箱だろうと思えるようなものだった。
「これは誰も何もできないな」
ディーの言葉に『箱』らしき物に皆で目を向け無言で頷いた。
「いったん、戻ろう」
ディーの言葉に皆がまた無言で頷いた。
解除した罠と扉はせっかくなので、できるものに関しては原状復帰しておいた。
ヒューゴと私で罠のかけなおしをしていたらコーガが私達を覗き込んで
「もしかして、きんちゃんまだ怒ってる?」
と聞いてきた。
「なぜ、そう思うのだ?」
私はコーガに顔を向けて聞いた。
「いや、もう一回、罠かけようとしているから…」
「ぁあ、確かに主犯に腹は立てている。
もちろん。
ただ、それとは別にもう一度かけておいて主犯が罠にかかってくれれば
猶更、私と古の作製者も溜飲が下がるのではないかと思ってな」
解除したものの、ここを作ったものは色々な角度から考えて仕掛けたのだろうその努力が一度でついえるのも惜しいと思ったのだ。
そのついでに主犯の手の者がかかってくれれば作製者も本望だろうと思う。
「コーガくらいしかかからないのでは作った甲斐もなかろうし」
「うん、それぐらいじゃ」
私とヒューゴが笑いを漏らしながら言うと、
「へいへい、さいでっか」
そういいながらコーガが頭をかきながら私とヒューゴのもとから離れた。
「とりあえず階段はふさいでおこう」
ディーが食後のお茶を飲みながら小声で言った。
「漆喰で密閉しておけばいいんじゃない」
ミレイの言葉にディーが頷く。
「明日には密閉するのか?」
「そうだな」
私の問いにディーが何か疑問を持ったのか首をひねりながら答えた。
「分かった」
私が立ち上がると同時にヒューゴも立ち上がった。
「きんちゃん、どこいくの?」
食堂の出入り口に向かった私の背中にミレイが声を掛けた。
「ん、材料とりに」
私の代わりにヒューゴが三人に振り向いて答えた。
「?」
「なんの?」
後ろからコーガの声が聞こえた。
次の日の朝、ディーの部下が階段に続くを燭台を密閉する作業をヒューゴと見ていた。
その後、麓の村の食堂に行き、今後の砦について話しているときに私はディーとミレイに聞きたいことがあったのを思いだして聞いた。
「きんちゃん、こっちこっち」
食卓のそばの箱の上に腰を掛けたヒューゴが私を呼んだのでその横に座った。
箱は、椅子より低く足が地に着くので落ち着いた。
ディーとミレイにに聞いたらなんだかすっきりして急に眠くなった。
「追加の罠なんか作ってるから」
私の首が下にカクリと落ちたのを見てコーガがあきれたように言ってきた。
そう、ヒューゴと私は箱の扉に向かう階段のところに置いておく簡易な撒菱を夜を徹して作成していた。
そして、朝にそれを撒いてからあの階段を閉じてもらったのだ。
さらに新しい罠を追加する…
古の作成者に捧げもの物をしたようでいい気分だ。
「きんちゃん、よりかかって」
満足でため息をついてから顔に手を当てて眠気を押さえていると
ヒューゴが私の肩を引き寄せて自分の腕に私をもたれかけさせた。
「そういえば、ディーがさっき言ってたとこ、僕、友達いるよ」
ヒューゴがディーを見ながら言った。
「顔、広いな」
コーガが驚いたようにヒューゴに言った。
「きんちゃん、僕が連れて行ってあげるからね」
ヒューゴが私の顔を覗き込みながら言った。
「ん…ありが…と…ヒュー…ゴ」
眠気が限界にきてヒューゴにお礼を言えたのかも確認できないまま意識が途切れた。




