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「んじゃ、これを刺しゃいいのか」
鞘のついたままの剣をコーガが盛り土の隙間に刺そうとするのを再びミレイの短剣が止めた。
「幅、みればわかるでしょう!」
今度は無言ではなく、コーガに怒鳴りながらだったが。
私はコーガを伴って
『『グァンディル王』の金属の装飾で飾られた剣を両足の間に構えた姿の彫像が立っていた』』
上の階にあった『グァンディル王』の剣をコーガにとって来てもらったのだ。
「これ抜けんのか?」
うんうん言いながらコーガが剣を鞘から抜こうとしている。
ミレイが、コーガから剣を取り上げると鍔の部分の錆びを取ってから持っていた油を塗布した。
それを無言でコーガに渡すとコーガが力を入れて剣を抜いた。
「抜けたぞ!」
模造品なので剣の樋は薄く溝の幅に合いそうだった。
抜けた勢いで座り込んだコーガからディーが剣を受け取り盛り土の隙間にその剣を刺した。
扉からいろんなものが作動する音がした。
私とヒューゴが両手を上にあげてその手を二人で当てて音を鳴らした。
扉がゆっくりと重い音を立てて両側に開き、中の部屋が見えた。
「考えれば開けられるものを…」
扉が開いたことで私はさらに主犯に対して腹を立てていた。
「やった!開いたぞ!」
コーガが両手を上げて喜びを現しながら扉から部屋に走りこもうとした。
「待て!」
それを見た私はとっさに叫んだ。
コーガの足が驚いてその場でたたらを踏んだ。
「私なら絶対に部屋に罠をかける」
コーガは私を二度見してから小刻みに何回か頷いた。
箱を扉で隠して厳重に謎掛けの鍵までかけているのだ。
そして開けにくい扉を開け喜び勇んで入る部屋…。
こんなにかけがいのある所、私なら絶対、罠をかける。
「今、止めなかったら、コーガはどうしてた?」
私はコーガを見上げながら聞いた。
「そりゃ、まっすぐに進むだろ。普通」
私とヒューゴが首を傾げた。
「短絡的だな」
「うん」
私の言葉にヒューゴが頷く。
「だが、まずは基本に忠実に考えてこの直線のどこかに掛けるかな」
「でも、あんまり手前だと出入り口に戻っちゃうね」
「コーガ、ここからここまで歩いてもらえないか?」
私の言葉に首を傾げながら”ぉおう”と言ってコーガが扉の前を歩いた。
私とヒューゴはコーガの歩幅を見た。
「確実に仕留めるなら」
「仕留めるって…」
私の言葉にコーガがつぶやく。
「あのあたりかな」
「僕もそう思う」
私と話してからヒューゴは落ちていた瓦礫を持ってきてコーガに渡した。
私はミレイの横に立った。
「ミレイ、矢を貸してもらえないか?」
「?いいわよ」
私は自分の被っていた頭巾を脱いで鏃に巻いた。
「んとね、合図したらあそこにこれ投げて」
コーガに扉の中の通路の一点を指さしながらヒューゴが指示した。
私は布を巻いた矢をミレイに返して
「コーガの石が床につくときにその上を矢が飛ぶようにできるか?」
と聞いた。
ミレイは矢を持って上げ下げして重さを測ってから
「やってみるわ」
と複合弓を構えた。
ヒューゴの合図でコーガの投げた瓦礫が床に一つにあたると床が落ちたと同時に
罠が起動する音が壁にあたりからした。
予想通り、壁から複数の矢が飛んできてミレイの矢の先にある布に刺さる。
さすがミレイだ。
「うん、いいな」
「うん、いいね」
私とヒューゴの声が重なる。
屋敷だと限界があり、あまり大がかりな罠が作れないのでさすが城跡というところか。
二人でお互いに微笑みあっているとコーガが恐ろしいものを見るような顔で私たちを見た。
「じゃ、解除したんなら進もうぜ」
というコーガの言葉に
「「え?」」
と、私とヒューゴの言葉がまた重なる。
「なんだ?」
コーガが進めようとした足を止めた。
「こんなかけがいのある部屋に
1つしか罠がないなんてあるわけないじゃない」
ねー、と言いながらヒューゴが私を見てにっこりと笑った。
「当然」
私もそう思い頷きながらヒューゴに笑い返した。
「『かけがい』って…」
コーガがぶつぶつとつぶやく。
「ん、次に仕掛けるとしたら壁面だな」
「だね」
私達が次の罠について推測していると
コーガがおびえたように私たちを見、
ミレイは額に手を当て、
ディは口に拳を当てて細かく肩を震わせていた。
「これで終わりの様だな」
五つ罠を解除したところで、この広さでこれ以上かけるのは
難しいのではないかと思いヒューゴに言った。
「うん、小さいのしかかけられないね」
「小さいのはあるかな」
「あるかな?」
ヒューゴと私で小さい罠の解除を思ってくすくすと笑った。
「それにしても、何百年もかかるものないしは解除するものを待ち、
そう思いながら亡くなる。
…悠久の夢を感じるな」
「ん、ほんと…」
ヒューゴと私で作製者に思いをはせていたら
「そこの二人、『罠』見てうっとりするのはヤメロ」
解除の時におとりに使ったせいなのかやや薄汚れたコーガが言った。




