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2-24話

「よく、女官長がゆるしたな」

十歳の私が、町娘が良く着るという珍しい服を前に浮かれていた。

「民のことを知ることもヴィ様のためになりますと言って説得いたしました」

ミューシェが私の着付けをしながら肩を竦め誇らしげにほほ笑む。

「ミューシェはすごいな」

私の賞賛にミューシェが

「かわいいひめさまのためですから」

と私の頬に手を当て軽くなでながらながら

私の顔を覗き込み紫色の目を三日月のように細くして口角を上げた。


「ミューシェ?」

初めて出た町であちらこちら覗いていたせいで

ミューシェとはぐれてしまったようだ。

困った。

「どうしたんだお前」

積んだ石段の上から声がして見上げると紅い髪の少年が私を見ていた。

「連れの者とはぐれてしまったようなのだ」

「ふーん」

少年はじろじろと私を見てから、

「探すの、俺も手伝ってやるよ」

と石段から身軽に飛び降りて私の横に立った。

「俺はフィル、お前は?」

「ヴィ」

「んじゃ、ヴィ探しに行くぞ!」

フィルが私の手を引いてぐいぐいと道を進んでいく。

「大通りに出れば大抵みつかるってもんだ」

フィルが私の手を引きながら大通りに出ていく。

沢山の色、沢山の声のさざめき、沢山の人の息遣い。

私はフィルに手を引かれながら情報量の多さに何度も目をしばたかせた。

戸惑っている私を見てフィルが鼻で笑う。

「どんだけの外から来たんだよ」

いや、すぐそこからなのだが。

と言いたいところだったがそれを言うと

多分二度とここには来れないように思ったので黙って下を向いた。

「しょうがねぇな、今度、おれが案内してやるからな!」

頭をぐりぐりと触られてびっくりした。

「で、どんな奴とはぐれたんだ」

私はミューシェの姿形をフィルに伝えた。

「フィル、その子だれ?」

「見たことない子だ」

「どこのこなの?」

ばらばらとフィルと同じような年齢の子供が道の隙間から出てくる。

「迷子だって」

フィルが私を見ながら言う。

「だれときたの?」

「ミューシェと…」

「お姉さん?」

子供たちの勢いに押されて黙って何度もうなずく。

「みんなで探そうぜ!」

フィルがミューシェの特徴をみんなに伝えると

すぐにみんなばらばらに走っていった。


「また来いよ!」

フィルが石段の上から手を振る。

「またな!」

「またきなね!」

ミューシェを見つけてくれた子供たちが声を上げた。

私は黙って頭を下げた。

また来れるかわからなかったので安易な返事をしたくなかった。

「お返事を返されなくていいのですか?」

ミューシェが子供たちに軽く頭を下げながら私の耳元で小さな声で言う。

「また、来れるのか?」

ミューシェが黙ってうなずいた。

「では、なんといえばいい?」

私の耳元でミューシェが教えてくれた。

「ありがとう!またくるね!」

私は嬉しくなって片腕を大きく振って子供たちに返事をした。


 屋敷に戻り、服を着替え巫女としての毎日の勤めをすまし、

漸く落ち着いた。

私は外に行けた喜びでいつもより疲れてはいなかった。

ふと疑問が浮かび私に寝間着を着せ、髪を整えているミューシェに聞く。

「なぜ、いままでだれも町に連れて行ってくれなかったのであろうか?」

ミューシェは長いまつげを伏せる。

「巫女様が俗なことに関わるということを良しとしない方たちもおられますので」

「その者たちにミューシェは叱られたりしていないか」

私を連れだしたことでミューシェが困ったことになっていないか

心配になり慌てて聞いた。

ミューシェの手が私を撫でるように髪を梳く。

「心配ありませんよ。ひめさまは本当にお優しいですね」

ミューシェが櫛を置いて私をそっと壊れ物のように優しく腕に入れると

私の顔をミューシェの胸に付けた。

私はそうされ安心して小さく息を吐いた。

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