2-16話
今日は、皆が休みということでミレイとヒューゴ、
クラウスとディリスが来ていた。
先日、夜盗が入ったとして三人で罠の修理をすることにした。
男たちが入ってきて発動させた罠を回収・修理しているときに
先日ヒューゴとエディンが私の部屋で寝たという話をしたらクラウスが
なぜか慌ててヒューゴの手を引いて作業小屋の中に連れて行った。
「取り急ぎ、ここにヒューゴの寝床を作ろう」
涙目のヒューゴの手を引いて戻ってきたクラウスが
作業小屋の中を指さしながら言った。
「客用寝台もあるのだから問題ないと思うが」
ミレイが来るといつもそこに泊っていく。
「ん、僕、ここがいい」
ヒューゴが目元を袖でごしごしとこすってから
にっこりと笑ってクラウスに言った。
よしよしと頷きながらクラウスがヒューゴの頭をぐりぐりと撫でた。
急遽決まったヒューゴの寝台づくりをしながら、
先日ファルト師が聞いてきたことを思い出していた。
人名だとしても、そもそも私をヴィ・ワルドとして呼び止めたのなら
ヒューゴの親族であるからヒューゴに聞いた方が早いだろうし。
そもそも、ヒューゴの親族については会ったこともない。
では、巫女関係なのかと言われるとそれもやや疑問だ。
私はここではヴィ・ワルドとして暮らしているし、
ファデルで会っていれば別なのだろうが、
要人ではないであろうファルド師ではその線は薄い気がする。
そもそも私たちの絵姿などは作ることを禁じられている。
よって私たちを知るのは各国の要人と祭りのときに遠くから見た者だけなのだ。
ファルト師とは記憶を精査しても条件的にも会ったことがないのは明白だ。
食事の用意ができたとエディンが作業小屋まで来たので作業を中断した。
「ファルト師はガルドの人なのか?」
昼食を中庭に運びながら私は隣にいるミレイに聞いた。
「長年、司書局にいたからそうだと思うわよ。
それに御身内の方が町で店を営んでると聞いたからガルドの出身じゃないかしら」
で、あればなおさらファルト師が私に声をかける意図が分からない。
「ヒューゴ、『ミューシェ』というものを知っているか?」
食事を始めてから私は隣に座るヒューゴに聞いてみた。
「?なに?それ」
ヒューゴが首を傾げた。
やはりヒューゴも知らないようだ。
「私も何かわからないのだ」
「きんちゃんが分からないこと僕が分かるわけないじゃない」
ヒューゴがぽんぽんと私の肩を軽くたたく。
「今は、ヒューゴが私の知らないことを
たくさん知っている事を知っているぞ」
「そうかなぁ」
私の言葉にヒューゴが指で頬を掻きながら言った。
「お話は違うのですが…ヴィお姉さま!」
私とヒューゴの会話が途切れたところでディリスが私に声をかけた。
「お兄様のおかげで歌舞局に見学に行けることになりましたの、
お姉さま方もぜひ!」
急に言われたので無言でディリスを見た。
「クラウス君は『歌舞局』にお知り合いがいるの?」
ミレイに聞かれたクラウスは急に自分に話が降られて驚いたのか目を大きく開いた。
「あ、はい。構築課の後輩の妹さんが歌舞局にいるそうなので
話をしてみたら見学しに来たらどうかと言ってくれまして」
「歌舞局に行けるなんてあまりないから
ディリスちゃんのご厚意に甘えて行ってくるといいわ」
クラウスの話を聞いて私の方を見ながらミレイが微笑みながら言った。
「僕も行く!」
ヒューゴが片手を大きく上げてディリスの方を見た。
「そのような大人数で行って邪魔にならないのか?」
私はクラウスの方を見て言った。
「先に人数を言っておけば大丈夫だと思うよ」
「それならよかった」
私は安心してため息をついてからミレイを見た。
「ミレイもいくのだろ?」
「私は日にちが決まらないとはっきり言えないわね」
「では、明日にでも確認してきます」
クラウスがミレイの方に向かって言った。
昼食後、急遽作ったヒューゴの簡易寝台が夕方にはできた。
流石、クラウス総指揮官というところだ。
工具をかたずけているときにヒューゴが私の横に来て、
「これで一緒にお昼寝できるね」
と耳に口を寄せて小さい声で言いながら片目を閉じた。




