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2-15話

 現在いま、中庭では蛹とヒューゴと私という状況になっていた。

いったん、案件を持ち帰って検証ということになり

ディーとミレイ、コーガは各々の屋敷いえに戻った。

私は先ほどの騒ぎでしまい忘れた蛹を回収しようと

中庭に出て池のふちに座るとヒューゴが狼姿形で出てきて私の膝に頭を乗せてきた。

ヒューゴの頭が膝から離れることなくなにやら拗ねている様子で私も動けない。

「っこの!駄犬!ヴィ様がお休みになれないでしょう!離れなさい!」

そして予想通りエディンが目の前に現れた。

エディンの言葉に私の膝に向いていたヒューゴの顔が

私の腹に向いてそのままじっとそこにとどまった。

「エディン、ヒューゴを悪しざまに言うのはどうかと思うぞ」

「役に立ってないのだから言われて当然です」

ヒューゴの頭に手を置きながら私が言うとエディンが即座に返した。

「私はヒューゴもエディンも私の役に立ってほしいと思ったことはないぞ」

ヒューゴが私の腹に顔を擦り付けてくるので頭をなでながら言う。

「お傍にいるのであれば役に立たなければ価値がありません」

硬く強張った声でエディンが言う。

「価値というのならヒューゴもエディンも私にとっては居てくれるだけで

価値があるのだがそれではだめなのか?

それにそうであれば、私こそ何の価値もないではないか」

エディンが一瞬びくりと躊躇したように肩を震わせた。

「ヴィ様はミレイ様が大事にされている方です」

エディンがすうっと息を大きく吸ってからそう言う。

「ミレイはヒューゴもエディンも大事にしていると思うが」

エディンの目が半目でヒューゴを見ながら、

「動機がよこしまな狼など論外です」

と言葉の端々にやや怒りと嫌悪をちりばめながら言う。

「前半の言葉の意味は分からぬが

ヒューゴが狼なのはその通りだが」

今度、クラウスかミレイに会ったら聞いてみる言葉が増えた。

エディンの言葉にヒューゴが私の膝から顔を起こし、

服の裾を引いた。

「確かにずいぶん夜半になってしまったな。

部屋に戻るか」

私が立ち上がるとヒューゴがその後からついてきた。

「お待ちください!ヴィ様!」

慌てた様子のエディンが声を上げた。

「その駄犬はどうするのですか!」

「一緒に来るのだろう?」

ヒューゴを外に寝かすというのも気が引ける。

「お待ちください!それは雄です!」

なぜエディンが慌てているのかわからないが必死に言ってくる。

「ヒューゴが男性そうだということは知っているぞ」

私が返事を返すと、

「あぁ!も…うぅ…分かりました」

エディンが何やら身もだえたあと急に背を伸ばした。

「ヴィ様、恐れながら私も寝室にご一緒させていただきます」

今、私が寝台から目を落とすと、

すぐ横には猫になったエディン。

その横に狼のヒューゴが横たわっていた。

ミレイには『今のところ屋敷いえの中にはないぞ』と言ったが

私の部屋の中に最大のトラップができていた。


 なんだか落ち着いて眠れる状況ではなくなったので、

先ほど考えていたことに思いをはせる。

私をヌーヴィエムとして襲わせたのだとしたら、

襲った大本の人間はファデルの者が関わっているだろう。

だとすれば。

私は自分の近しい人たちを思い浮かべた。

親族と言っても、ちちうえの方の親族しかわからない。

神官長ははうえの親族は聞いたことがない。

王の弟ディオル・エルド・アムファデル、

王の叔父ユーディアム・カイド・ウムファデル

叔母エリアディス・カイド・ナルファデル、

従兄弟、従姉妹。

彼、彼女らとは国王・神官長とも並んでいるときに

挨拶をされたことがあるという接点だけだ。

話したことがある従姉妹はアレンシニアというおつきの侍女になった者だけだ。

親族といっても各国の要人を同じ場所でしか会っていない上に

私たちになにかあって困るのはむしろ彼、彼女らの方だ。

彼らは要職についていて私達に何かあれば自分たちの地位が危ないので

そのようなことをするとは思えないのだが。

後は、従者たちになるが

七歳までは乳母がいてヴェレン・フォレンストと言った。

そこからはお付きの侍女は一年ごとに変わった。

今なら理由は明白だ。

精霊石いしを持つ幼い私たちと親密になってその感情を使い

利用しようとするものがいないとも限らないからだ。

一年であれば親密になっていても深いところまで入り込めないだろうという配慮。

その候補となるものは上位官長の娘が大体だ。

つまり、私たちに何かあると不利益を被るものの子供たちというわけだ。

八歳  リーリアン・フェルシュ 近衛長の二女

九歳  アレンシニア・ラルド・ナルファデル 神学院学長の三女。

    彼女は従姉妹にあたる。

十歳  アミューシェル・ファルエ 司書官長の長女

十一歳 エカリーナ・アンデシュ 執務官長の二女

十二歳 ユリディア・フェルシ 外記官長の長女

十三歳 エリィルーン・デイアス 判事官長の三女

十四歳 シルデシア・アディス 財務官長の長女

十五歳 アリィデル・アガート 兵衛官長の二女

十六歳 カミンレィ・レツッンティ 神殿官長の三女

お付きの侍女と言っても一年間だけであり、

身の回りの支度などが主な仕事である上に

私が話すことを放棄していたので親しいとは言えない。

子供のころからしてみたいことをや思ったことを言っても傍付きの侍女は

「そのようなことはヌーヴィエム様のされるようなことではございません」

「ヌーヴィエム様、そのような下賤な事柄を気にお止めになる必要はございません」

などと、まず否定から入るので話をする気がなくなっていたのだ。

私の容姿について親族に話していたという可能性は否定できないが、

自分の親が不利になることをするかというと疑問が残る。

そもそも何のためにみこを連れ去りどうするつもりなのだろうか。

今のところ、公式的には城で養生しているという事でガルドの諸侯には

挨拶をしていないので私が巫女姫だと気づく者はいないはずだ。

神官長はこの国にいることを認めたということは

理由があって私がファデルにいるよりガルドにいたほうが良いという事なのだろう。

情報が少なすぎて推論が立たないので一度思考を放棄して窓の外を見る。

中庭が見える。

「あ」

思わす声が漏れた。

蛹の回収を忘れていた。

そう思いだし寝台の横を見る。

すぐ横には猫になったエディン。

その横に狼のヒューゴが横たわっていた。

私はため息をついてから蛹の回収を諦めた。

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