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2-8話

 「ずいぶん熱心に見てたけど綺麗なお花でも見つけた?」

ガルド城内回廊に囲まれた中庭の一角で着飾ったミレイが声を潜めて聞いてきた。

「食料になる茸類があれば籠城時の兵糧になるかと思ったのだがなかった」

「どんな格好をしてもきんちゃんはきんちゃんなのね」

私の答えにミレイがくすくすと小さく笑う。

「ちゃんと、そのように見えてるか?」

「上出来よ」

ミレイが満足気に私を見た。

「ミレイに教えてもらいたいことがあるのだが後で聞いてもらえるか?」

「いいわよ」

ミレイはいたずらをする時のように口角を上げてから、

「このようなところにおられますとお体に障ります」

と、普通の声で私に話しかけた。

ミレイが手を差し出し私はその上に手を乗せる。

その手が軽く握られたかと思うった瞬間ミレイが私に足払いをかけた。

「!」

私がよろめくのをミレイが腰を押さえて支える。

「お体がまだお戻りではないのですからご無理をされては」

私はミレイにつかまりながら体制を整えながら周囲を見た。

回廊の中から何人かがこちらを見ていた。

「ミレイ様、どうかなされましたか?」

予定外の声にミレイと私に緊張が走った。

声の主は、長い黒髪をした青い瞳の少女で後ろに茶色い髪の侍女がいる。

もっとも、私も彼女と同じ髪の色をして城に合う服を着て

紫の目でそれを見ていたのだが。

なぜこのような状態になったのかというと、

先日、久しぶりにコーガとディーが来て

城に巫女がいないのではないかという

噂が流れているという話をされた。

そうなると、私の居場所を探し出そうとする人間が出てくるので

都合が悪いということでヴィの時と違う格好で

城にいるという風にしてみたらどうだろうかということで、

今の私は髪も目も染め黒髪に紫の瞳という姿で

いかにも巫女という感じを醸し出すようガルドの王城の中庭にいた。

「ご散策中にご気分を…」

ミレイが誰とも何ともつかないように言葉を選んだ。

「どなたかおよび致します」

少女が後ろを振り返ったのでミレイが小さくため息をついた。

この少女が誰なのかミレイに聞くことが増えた。

「どうかされましたか」

近衛の恰好をした武人が通りがかりにミレイに声をかけた。

武人は私の状態を見て今度は私に声をかける。

「ご気分を悪くなされた様子。私ごときで申し訳ございませんがお部屋までお連れさせていただきます」

武人が深々と頭を下げてから、

「ご無礼致します」

と言って私を抱き上げた。

ミレイが少女に会釈をしてから武人の横につき部屋の場所を伝えた。



「あのような事で上手くいくのだろうか?」

あてがわれた部屋で武人の腕から降りながら私が聞いた。

ミレイは白くしなやかな手を胸の前で軽く組んでから首を傾げた。

「コーガはどう思う?」

「ほんと、巫女姫様っていうならこんな感じだよな」

武人はコーガであったか。

そのコーガは首を傾げながらいささか残念そうに言う。

「コーガがそう思うならうまくいったって事かしらね」

「きんちゃん、その格好も可愛い!」

今回、この部屋で待機という留守番をしていた

ヒューゴが私のそばに来て一周しながら言った。

「終わったのであれば、着替えたいのだが」

「えー、なんでなんで!可愛いのに」

ヒューゴがそういいながら私を見る。


コンコン


扉がたたかれてミレイが返事をするとディーが入ってきた。

「きんちゃん、ミレイ、コーガ、すまなかったな。

ヒューゴ、ここまで誰かつけてきてなかったか?」

ディーが言うとヒューゴが私からディーに視線を移した。

「うん、ついてきてる人はいなかったよ」

「そうか」

ディーはため息をついた。

「こんなことで騙せると思えないが攪乱くらいにはなるかな」

「手があるなら幾つも打っておく方が良いのだからいいのではないか」

私が言うとディーはそうだなといいながら口角を上げた。

「にしても、きんちゃんもその格好なら想像イメージ通りなんだがなぁ」

コーガが私をじっと見ながら言った。

「そのようなことを言われてもそうではないのだから仕方あるまい」

私の言葉にコーガが腕を組み軽く唸る。

「きんちゃんは残念な美少女だからな」

「きんちゃんは残念なんかじゃない!」

コーガの言葉にヒューゴがコーガの腰に蹴りを入れた。

「残念とは?」

「きんちゃんは可愛いんだから

それなりの格好していれば引く手あまたじゃないか」

「?その必要性いみが分からないのだが」

「うん、うん。

つまり、夜会とかで男の人を選び放題ってことだ」

コーガが教えてやるとばかりに腕を組みながら何度か頷く。

「婚姻を結ぶ必要があるならそのようなことが必要かと思うが

それは私の業務しごとではないぞ」

「ん?どういうことだ?」

私の答えにディーが急に聞いてきた。

「私が夜会などに出ていたのは終わった後に誰がどの人と話していたか、

どのようにふるまっていたかを神官長に報告するためだからな」

服さえ変えなければ一時的には覚えておける。

ただ、日がたって服が変わると誰だかわからなくなるだけなので

短時間の会合であれば問題ない。

こどものときは顔も覚えていられたような気がするのだが。

「もしかしてだけど、

俺がきんちゃんに最後にあった時とか覚えているのか?」

ディーが片眉を跳ね上げながら言う。

「もちろんだ。可能性としては精霊祭の時だな…

何日目の事を言えばいいのだ?」

「じゃぁ、三日目だとしたら」

私は自分の記憶を探った。


『「ガルド国、ディーライル・ガルド・フェリドです」

白い正装・ガルド国・第一王子』


「三日目のディーは、白い正装で私に名乗っていたな」

「その後、どうしてたとかもわかるのか?」

ディーがやや緊張した口調で言ってきた。

自分の記憶の動く絵の中の白い正装の男を探し出す。

「ぁあ、私に挨拶した後、窓の横で

フォーレストの第三王子と話しているな」

「何を話しているとかもわかるのか?」

ディーがなぜか焦ったような口調で聞いてきた。

私は記憶の中のディーの口元を見た。

「『こ・う。え・き・の・こ・と・に・つ』

…ん、前をドウネル殿下が通ったので口元が見えないな」

部屋の中が静かになった。

「きんちゃんはいつもそんなことしてたの?」

ミレイがやや青ざめた顔でいう。

「それが諸侯と会った時の私の職務しごとだからな」

だから、城を出るときに言われていた人物について記載したものを

寝台に置いてきたのだ。

「誰を見ているようにと言われるのか?」

ディーが顎に拳を当てながら聞く。

「それは言われるが、誰かは神官長の許可がないと言う事はできない」

なぜ、普通しごとにしていることを言って困惑されいるのかは

よくわからないがこの反応を見る限り

他の人間ひとは諸侯に会うときは違う目的があるらしい。

「今の話は他の人にしたりしたのか?」

ディーが枯れた声で聴いてきた。

ファデルにいたら話す必要はないであろう?」

「確かに…」

「今後、このの話は俺たち以外には決して話してはいけないよ」

「ぁあ、巫女であることを知っているのは

ここにいるものだけなので問われることはないと思うが…」

ディーの目があまりに真剣なので気押されるように答えた。

「おまえもだヒューゴ」

ディーがヒューゴの頭を小突いた。

小突かれたヒューゴが頭を押さえながらディーを見上げると、

「言うときんちゃんが困ることになる」

ヒューゴの金色の瞳をじっと見て言った。

「僕、ぜぇっったい言わない!」

ヒューゴは私の方を見てにっこりと笑った。

「本当のファデル…」

ディーは小さくそう言うとしばらく口を開かなかった。


 皆がいる隣の部屋でミレイに手伝ってもらいながら着替える。

鏡の中には黒髪で動きにくい服を着た私が映っていた。

「この目はいつ治るのだ?」

鏡に近づき顔を寄せると着色して紫色の目になった私が映っている。


『紫の瞳』


プツッ


頭の中で糸が切れるような感じがした。

じぶんの中の糸とは何だろうか。

「一日くらいで治るって言っていたわよ」

ミレイの声に考えが中断した。

「髪も何度か洗えば元に戻るから大丈夫よ」

ミレイが脱いだ服を手にかけながら言う。

「どのみち今日のところはここにいなくてはならないけど

明後日までにはいつものきんちゃんに戻れるわ」

着替え終わると私にミレイが手を差し伸べた。

「さ、食事にしましょ!」

ミレイに手を取られたまま私は鏡を振り向いたが中断された考えは戻ってこなかった。


どのようにしたのかはわからないが城内なのに給仕もない食卓になっていた。

もっとも、城内と言っても城の西にある別棟なのでできたのかと思う。

私とミレイだけではなくコーガも簡易な服に着替えて食卓に着いていた。

私はその方がいいので気分が良かったが、部屋の空気が重い。

「そういえば、ヒューゴ」

そのような空気を感じ取ったのかコーガがヒューゴに声をかけた。

ヒューゴがなに?とコーガの方を向くとコーガが『にっ』と笑って、

「どうせならきんちゃんの代わりに

ヒューゴがあの恰好すれば良かったじゃないか?」

と言った。

「なんで!!」

「ヒューゴならあの格好でも似合いそうだろ」

コーガの言葉にヒューゴの顔に朱が走った。

「なんで!そんなんかっこ悪いでしょ!」

「案外、悪い話ではないかも」

「何言ってんの!ミレイまで!」

ミレイの言葉にヒューゴが食卓に拳を落とす。

「だって、きんちゃん本人がやってたら

気づく人がいるかもしれないでしょ」

「むぅ」

ヒューゴが唇を尖らせて言葉を絞り出す。

きんちゃんのためにそういうことするのはすごいと思うわ」

ミレイはそうはいったが私のことでヒューゴを煩わせるのは違うように思える。

「そうなってしまったらそれはそれで仕方あるまい。

ヒューゴがどのような姿をしていてもヒューゴに違いないと思うが

嫌がることをヒューゴに強要するのがいい事とは思えない」

私が言うとヒューゴが腕を組み上を見上げてから一声唸った。

「ヒューゴどうした?」

私が声をかけると『うん』と大きくうなずいてから

私を大きな目で見据えた。

「今度やるときは僕がきんちゃんの代わりする!」

「おー!よくいった、よくいった」

パンパンとコーガが乾いた拍手を何回かしながらヒューゴを見た。

部屋の雰囲気が軽くなった。

「じゃぁ、服、見繕っておくわね」

ミレイがヒューゴに片目を閉じて言うとコーガとディーが笑った。

「きんちゃんに選んでもらうからいい」

ヒューゴがぷぃっと横を向いた。

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