2-7話
「きんちゃん」
技巧局の書庫で本を調べているとクラウスが気が付いて声をかけてくれた。
クラウスも『課題』を提出してからは書庫に来るのが
少なくなったので武局に行ったぶりに会った。
クラウスも技工課というところに通って
授業というものを受けているとので、
毎日書庫に来るわけにはいかないのだそうだ。
「なんかいつもと違う見方してるね」
クラウスの問いにうなずいた。
「今日は調べ物をしている」
「何、調べてるの?」
クラウスが私が開いていた本を見て言う。
「クラウスは『ミューシェ』というもの知っているか?」
「知らないなぁ…地名?」
私が開いていた本が地名の本だったのでクラウスがそう聞いてきた。
「地名なのか人名なのか不明なのだ」
「なるほどね、俺も手伝うよ」
クラウスが書庫の棚に向かう。
「クラウスの調べ物はいいのか?」
と、私が聞くと
「今日は気分転換に来ただけだから大丈夫だよ」
とこちらを向いてほほ笑んだ。
「地名じゃなさそうだね」
技巧局の図書庫なら古今東西の道具の書籍があるので
そこに知られていない地名などがあるかと期待したのだが
今日のところは見つからなかった。
「なんでそれを調べようと思ったの?」
クラウスの問いに
「実は…」
と、司書局であったことを事を話した。
クラウスは顎に手を当てて口元を親指で押しながら口を開けずにうーんと言った。
「その聞き方だときんちゃんが知っているのなら
用事があるという風に聞こえるけどな」
私もそうは思うのだが、
なぜ私なのかあの目つきはそういうことなのかの説明がつかない。
「今日は役に立たなくてごめんね」
書庫の出口に向かうときにクラウスが言ってきた。
「謝るのは私の方だ。クラウスの時間を使ってもらったのに申し訳ない」
クラウスの手が『ポン』っと私の頭に軽く乗った。
私が驚いて首を竦めるとクラウスが『あぁ』と言いながら慌てて手を外す。
「ごめん、ごめん。
こういうのきんちゃん苦手なんだよね」
クラウスは何も悪くないのに謝ってきた。
「申し訳ない。そういうことにあまり慣れていないのだ」
私が言うとクラウスが以外という顔をした。
「きんちゃんの性格からするとよくされそうなのに」
今はここにいるからミレイやグレンにされたが、
敬って育てるように言われている巫女に
そのような事をする者がいるとは思えないが。
「私が悪いのだから気分を害されないでほしい」
「悪くなんかしてないよ」
クラウスが目を細めて優しく微笑んでくれた。




