表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/196

2-4話

「ねぇ、きんちゃん今度は『武局』見に来てよ」

研究棟を見学して数日後、

ミレイとヒューゴそしてようやく何も言わなくても

座ってくれるようになったエディンで

夕食を囲んでいるときにヒューゴが言った。

「武局?」

「うん、僕のいるところ」

「でも、訓練してるところ見れないでしょ」

ミレイが言うとヒューゴがパンを口に入れて飲み込んでから、

「『競技会』の選抜試合があるからその時なら入れるよ」

といった。

「あぁ、そういう事ね」

ミレイがくすっと笑ってからヒューゴを見た。

「いいとこ見せなきゃね」

「もちろん!でも、まだいつになるか決まってないから

分かったら言うね」

パンをほおばりながらヒューゴが言う。

頬が膨らみ栗鼠の様だ。

「人数多いから5日間位かけてやるものね」

ミレイの言葉に口がいっぱいのヒューゴが何度か頷く。

「そうなんだ」

武局もたくさん人がいるらしい。

こっちに来てからいろいろなところが見ることができて本当に嬉しい。

「きんちゃん、ぜったい見に来てね!」

「楽しみにしている」

私が言うと、ヒューゴは大きな金の目を細くして笑った。


 武局は王城の横にあり石垣に囲まれ砦のような作りだった。

訓練場は広く、すでに何組かが試合をしていた。

ミレイが手配してくれ、入館可能になった技巧局の図書庫で出会い親しくしてくれているクラウスに昨日も図書庫で出会ったので武局に誘ったら一緒に来てくれた。

クラウスが入り口に張られた表を見てから入り口にいた人に場所を聞いてくれた。

ヒューゴの姿を探すと四人で集まっているところからヒューゴが走ってきた。

「なんでクラウスなの」

ヒューゴが口をとがらせて私に言った。

「?ミレイもエディンも誘ったのだが、

今日は忙しいと言われてしまったのだ。

何か問題あったか?」

ヒューゴが首を横に振る。

「うん、問題ないよ、来てくれてありがと、クラウス」

ヒューゴがにっこりとクラウスに笑顔を向けた。

クラウスと私だけしかこれなかったのでがっかりしていたようだ。

「きんちゃん」

聞き取りづらいと思ったのか、

ヒューゴが声をかけながら私の頭巾フードをとった。

「きんちゃんが見てるからがんばるね!」

と言った。

試合なのだから、

「私が見ていなくても頑張らねばいけないのではないか?」

と、というと頭巾フードに手を置いたまま下を向いたがすぐに顔を上げて

「そうだね、がんばるよ!」

と笑った。

「私もきちんと見るぞ」

せっかく来たのだから、いろいろなものをしっかり見なくては。

「なんか飛んできたりしたら危ないから、

頭巾フード被っててね」

ヒューゴが私に頭巾フードを被せる。

確かに、いろんな武器で試合をしているのでここまで飛んでこないとは限らない。

足元も時々小石が落ちているし。

「クラウス、頭巾フード取れないように見ててね」

クラウスに頼むとヒューゴは片手を上げながら自分の組に戻っていった。

「自分でとれないように気を付けるので

クラウスは試合に集中していて構わないぞ」

私が言うと、

「ありがと」

とクラウスがにっこり笑った。


ヒューゴの試合になると、

「ヒューゴ!やっちまえ!」

「がんばれよ!」

「ヒューゴちゃんかわいい!」

といろんなところから声がかかった。

他の人の時も声が上がっていたが

ヒューゴに向ける声はそれより多かった。

ヒューゴは知人が多いようだ。

ヒューゴが相対しているのは

ずいぶんとガタイのいい男性で剣は両手剣を持っていた。

対するヒューゴはいつもの双剣を抜いていた。

刃の部分が光らないので覆いが付けてあるようだ。


「はじめ!」

審判の声に男がヒューゴの前に剣を下す。

ヒューゴが下ろされた剣から間をとる。

と思った瞬間そのまま飛んで男の後ろをとると背中に刃を打ち付ける。

男がその刃を振り向きざまに止める。

その反動を利用してヒューゴが左に飛ぶ。

滑りながらヒューゴが着地する。

前、戦っているのを見たときより平な場所のせいか跳躍が高くしかも早い。

そこをめがけて男の剣が落ちるのを予測していたように

その剣の腹を蹴ってもう一度空中に飛んだ。

ヒューゴの蹴りで均衡バランスを崩した男の頭上から二本の剣を振り下ろす。

男は剣を頭上に掲げヒューゴの剣を抑える。

はじかれた反動を使ってそのまま飛びヒューゴが間合いをとった。

「あ」

隣から声がしたので振り向くとクラウスが均衡バランスを崩していた。

とっさにクラウスの腰を支えた。

「大丈夫か?!」

クラウスは試合の方をちらりと見たので私もつられてみると

ヒューゴがこちらに気を取られていた。

ヒューゴの右に男の剣が打ち付けられたのをヒューゴがかわし左に飛んだ。

「ありがとう」

クラウスの顔がやや青ざめていたのはクラウスの声で

ヒューゴが気を取られたの事を心配したようだ。

律儀な人だと思う。

そのあとはすぐに体勢を立て直したので

ヒューゴの調子ペースになり

双剣を相手の首筋に当てて男の戦意を喪失した。

「勝者、二組」

審判の声がした。


「きんちゃんずっと見てて疲れちゃったでしょ。

今日はもうおしまいだからご飯食べに行こ」

全部の試合が終わって帰れることになりヒューゴが私とクラウスに言った。

「そうだな。行こうか、クラウス」

クラウスを見てからヒューゴを見ると、

「うん。みんなで食べたらおいしいよね」

と、にっこりと笑った。

「ねぇねぇ、試合どうだった?」

ヒューゴが右腕をつかんで言う。

さすがのヒューゴでも疲れたらしい。

「いろんな武器と戦い方が見れて楽しかったぞ」

私が言うと、

「違うよ、僕の試合だよ」

ヒューゴがすねた口調で口を尖らす。

確かに。

そもそも今日来た目的はヒューゴの試合だ。

「それなら…」

私がヒューゴの試合について言おうとすると、

「いぬっころ風情が女連れとはおそれいるな」

後ろから声がした。

「おい、女。そんなガキより俺の方がいい事してやるぜ」

『女』とは私を指しているのだろうかと思ったが、

ヒューゴが私の手を取り出口に向かったので違うようだ。

「きんちゃんに触らないで!」

急に、ヒューゴが大声をだしたので驚いて振り向いた。

思うに、ヒューゴに言ったつもりが聞こえなかったようなので、

後ろにいた私に合図をしようとしたようだ。

振り向いた先には、男が五人立っていた。

同じ武局の人間なのだから危険はないと思うがヒューゴは心配性だ。

しかし、確かに

『「いぬっころ風情が女連れとはおそれいるな」

「おい、女。そんなガキより俺の方がいい事してやるぜ」』

という呼びかけでは対象がヒューゴなのかどうかわからないので

せめて名を呼べばよいのに。

そういえば、先ほどの台詞の中に

いくつか意味の分からないものがあった。

「いい事とはなんだ?」

私はそう言った男に聞いた。

「え?」

聞いただけなのになぜかそこにいる全員が口を開けた。

「クラウス、『いぬっころ』とはなんだ?」

男が答えてくれないようなのでクラウスに聞いてみた。

「ち、小さい犬の総称かな」

さすがクラウス、何でも知っている。

「それがヒューゴを指しているのであれば

ヒューゴは犬ではないのでおかしくないか?

小さくもないし」

声をかけてくるということはヒューゴの知り合いなのだろうから

人狼だと知っているのだろうに。

それとも愛称なのだろうか。

確かに『いぬっころ』の『ころ』はなんだか語感が丸い感じでいい。

「あと、貴公の言う『いい事』とはなんなのだ?」

こちらは、言った本人でないと何を指しているのか特定できないので

そういった男に再度聞いた。

「あ、まあそれは気持ちいいことかな」

別の男が答える。

『そんなガキより俺の方がいい事してやるぜ』

という意味は

『子供より自分の方が気持ちいいことをしてやる』

何が言いたいのか理解できない。

そもそも、見知らぬものがなぜそのようなことを

言ってくるのかが皆目見当つかない。

「なぜ、貴公は私にそのようなことをいうのか?」

「ヒューゴに負けたからだろ」

クラウスが教えてくれた。

「?あぁ、ヒューゴと試合した御仁であったか。

確かに、今回は負けてはいたが

あれは貴公の戦術の誤りであろう?」

あぁ、なるほど試合の検証をしたいという武局の符牒であったか。

「ヒューゴの剣の軽く速度は早い、

貴公は重い剣を持っていたのだから武器同士のの相性が悪い。

であれば、貴公は本来一撃で倒せるように考えるべきだったと思う」

男が私に耳を傾けた。

確かにヒューゴはこのような説明が苦手なので私に声をかけたのだろう。

「初めの一撃目は間合いを取るということではあっていたが、

その後の一振りは無駄かと思う。体力を消耗してしまうのでもったいない」

「あぁ」

私は見ていた試合の様子を地面に棒人形を書いて説明した。

私の周りに男たちが膝を曲げて座った。

「頭上で剣を防御したがあの後、

着地するところを想定して下からさらに足をすくった方が

良かったのではないかと思った」

男たちに説明してると背中が重くなり

「きんちゃん、お腹すいたよ~」

とヒューゴが言った。

寄りかかるほどお腹がすいていたらしい。

「ヒューゴ、クラウスすまない。

皆も疲れてるのに話こんでしまい申し訳なかった」

ここにいる男たちもお腹がすいているだろうに

私の説明に付き合わせてしまった。

この様なことなら別の日にでも説明するよう申し出ればよかった。

「お前、また来るのか?」

私が立ち上がるとヒューゴと試合をした御仁が言った。

「私はヴィという。貴公の名は?」

「ガルブス」

「では、次はガルブス殿が勝つところを見に来よう

楽しみにしてるぞ」

試合を見て検証するというのも楽しいのでまたヒューゴに誘ってもらおうと思う。

「ぁあ」

ガルブス殿は試合と空腹で疲れたのかやや元気のない返事をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ