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15話


 カサカサカサガサッ


あれから六日経った今、宿の床の上は紙だらけの状態になっていた。

そして墨の匂いが充満していた。

宿に話を付けさらに別室を借りていたが最終的には宿ごと借り入れる事態になっていた。

そうでもしないと、寝ることすらままならない。

ミレイが拓本を持ち上げそこに書いてある古代語とそれがあった場所を別の紙に記入していく。

その紙をもとに私が古代語から現代語に訳す。

現代語にされた碑文と場所をディーが地図に落としていく。

「この文言とこの文言が関連しないという事はこの間にもう一基あったのだと思う」

私の言葉にディーが地図にさらに線を入れ石柱があったであろう場所に点を打つ。

ミレイが言うにはガルドにある王宮院というところで古代語を学んだので、書き写すことはできるのだそうだ。ただ、余り深くは学んでいないので訳すのは早くないとのことでこの人員配置となった。

記入が終わった拓本はまとめて束ねヒューゴが別室に運ぶ。

ちなみにコーガは茶を入れる、物を運ぶなどの雑用を自分から買って出た。

コーガとヒューゴ曰く、頭脳労働は向いてないのだそうだ。

私は巫女であるがゆえに古代語を使いこなせるように教育されている。

伝承にあった『いわく、手に入れるには巫女の力が必要』とは

このような意味で巫女が必要ということなのだろうか。

「おーい、もう夕餉の時間だぞ~」

コーガが開いた扉から顔だけ出して食事をとる部屋に持っていく皿を抱えながら声をかけてきた。

「食事にするか」

ためていた息を吐き出すようにディーが言うと紙束の中からミレイが顔を上げて無言でうなずいた。


 「あと何日ぐらいかかりそうなんだ?」

食事をとりながらコーガが軽く首をかしげながら誰ともなく聞いた。

「七割程出来たのでもう二日もあれば特定できそうだ」

ディーが資料組を代表するべく答えた。

「んじゃ俺は出立する準備に取り掛かるかな」

コーガがヒューゴを見ながら言った。

見られたヒューゴは私をじっと見て心配そうな顔をした。

「きんちゃん、疲れてない?大丈夫?」

確かに疲れてはいるのだが、取り敢えず近々の疑問が1つ解けると思うと気力がわく。

「大丈夫だ」

私はヒューゴにうなずいた。

「それが終われば場所がわかるのか?」

コーガの問いにディーが私に目を向けた。

「伝承の中の光景が正しいのであればこれで特定できると思う」

「伝承?」

「この前聞いたガルドの伝承の中に

『旅人は幾重にも重なる石柱をくぐり抜けると

そこには色とりどりの花が咲き乱れ金に銀にきらめく街並みがあった。

人々はみな楽しそうに笑いさざめく。

旅人がここはどこかと尋ねるとアデルという。

誰がここをおさめているかと尋ねると精霊に愛されし巫女姫だと誇らしげに答える。

巫女姫様はどこにいるのかと問うと

あの城におわせられると人々は指をさす。

指の先をたどっていくと旅人を招くように大きなかいなの石柱の奥、水晶であつらえたかのようなまばゆい城が現れた。

旅人はその門番に巫女姫様にお目通りすることはできるのかと伺った。』

というものだ」

「あぁ、子供のころ聞いたことがあるな」

「それが本当の光景であれば特定出来る」

「?」

「つまり城の場所がわかればおのずとそこに箱があるということだ」

ついてすぐにウォンデルの石柱で皆にわからぬようにとある実験をしたので推測の域は出ないがたぶん私の考えで合っているかと思う。

その石柱が夢で見た洞の石柱やこの町、ウォンデルにあった石柱と同じ用途であるならばアデル国は城を中心に石柱を領地内にある間隔を持って立ているのではないかと考えた。

その用途であるなら石柱同士関連性を持たせるはずなので碑文を訳して碑文同士の関連性を読んで倒壊し今はない石柱の場所の特定をしたのだ。

在りし日の石柱の場所を特定しそこから逆につなげていくことで石柱の大本にたどり着ける。

そこが城だ。

但し、アデルが崩壊したときに山が出現したという伝承もあるとすればその山に城が埋もれている可能性がある。

それはたぶん村人の消えたハルドの村の周辺にあると思うが、幾重にも山が連なっているため範囲が広すぎるのでなるべく狭め尚且つ確証をとるためこの様な手間のかかることをしているのだ。

やみくもに山の中にある山師の見つけた穴を探すよりはましなのではないかと先日ディーに提案したのだ。

人を引き連れている以上、確証は二つ以上あるに越したことはない。


 「きんちゃん、あーん」

ヒューゴの声に振り向くと匙が口に入れられた。

どうもまた、食事を忘れていたらしい。

口の中のものを咀嚼しながら反省をした。

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