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4-7

 「おなかすいた、おなかすいた、おなかすいたよ~」

「うるせぇ!!」


ゴッ!


「いたーい!」

ウィーガが音を立てて殴った頭に両手を乗せながらヒューゴが潤んだ上目遣いでウィーガを見た。

「飯を一回抜いたぐらいでガタガタ言うんじゃねぇ!」

ヒューゴを殴った拳に息を吹きかけながらウィーガが返す。


カラン、カラン


「だってぇ、お腹すいてるんだもん」

エルミが所望した菓子店の扉についた小さな鐘を鳴らし口を尖らせながらヒューゴが言う。

「ぅふぅ…いい匂い」

ヒューゴが菓子店で置かれている物に気を引かれているのを見ながら私はヒューゴにエルミに所望された菓子を渡した。

「ほれ、終わったんなら馬、とりに行くぞ」

菓子を受け取ったヒューゴをつまみ出すようにウィーガが左右に揺れるヒューゴの頭を押さえながら扉を開く。

「ありがとうございました!」

店の者の声を背にしながら私は会計場の側にある菓子に目を止めた。


「きんちゃん。あーん」

私が出しなに買い求めた菓子をヒューゴに渡すとそこから一つ取ってヒューゴが私の口元に当てた。

「それはヒューゴの為に買い求めたものだからヒューゴが食べるべきだと思うぞ」

空腹だというヒューゴの為に私はそれを買い求めたのだ。

「いいの、いいの、味見して」

ヒューゴが私の口元に強めに丸い菓子を当ててくる。

私がそれを口にするとヒューゴが首を傾け、

美味おいし?」

と、指に菓子の粉砂糖が付いたようで指先を口に入れて舐めながら私に聞いた。

「美味だ」

丸い菓子は口の中で砕くと中に砕いた木の実がありその感触がしゃりしゃりと口に広がり美味だ。

「そういえばきんちゃん、なんでこれ買えたの?いつもなら出かけるときは僕がミレイとかエディンからお金、預かってたじゃない」

“今回もそうだけど”と、ヒューゴが左右に首を揺らした。

「先日、『お駄賃』というものを持たされたのだが残った硬貨を返そうとしたらエディンにそのまま使ってよいと言われたので」

私は先日の“お駄賃”の残りの入った革の袋を開いてヒューゴに見せた。

「聞いたぁ?!自分のお金で僕のに買ってくれたんだよ!」

ヒューゴが菓子を持っていない方の手でウィーガの服のすそをつかみ上下に揺らした。


ガサッツ!


「あ、ぁぁ!!」

ヒューゴの声を他所にウィーガがヒューゴの手に持ってっている菓子の袋に手を入れ菓子を数個に握るとそのまま自分の口に入れる。

「ウィーガも食事が足りなかったのか?ならば今一つ求め直してくるが」

「いいよ、俺はこいつからとって食べたもんが一番うまいんだ」

ウィーガがにやにやと笑いながら私ではなくヒューゴの方を向いて言った。

「ヒドイ!ガーちゃん」


ゴスッツ


「そう呼ぶなと言ってるだろーが」

“うーうーうー”ヒューゴが小さく唸るような声を出しながら菓子の袋に手を入れる。

「きんちゃんあーんして」

また菓子を私の口元に持ってくるので、

「私は十分なのでヒューゴが食べるといい」

その菓子をヒューゴの指から抜き取りヒューゴの口元に当てるとその菓子を私の指先ごと自分の口に入れて菓子を音を立てて砕いてから私に笑顔を向けた。

「うふ、きんちゃんやさしい」

ウィーガが“けっ!”と短い声を出してから

「この馬鹿番バカップルが」

と言った。

馬鹿番バカップル』とは『馬鹿みたいに仲が良い』という意味だとヒューゴは言っていた。

「それならばあそこにも馬鹿番バカップルがおるぞ」

私は斜め前にいた手をつなぎ頬を寄せ合う仲睦まじい男女の方を見てからウィーガを見た。

「あ、え、バ…バカ!」

急にウィーガが慌てたように私の口を手で押さえた。

斜め前の女性は顔を赤くして男性とつないでいた手を離して自分の胸元に持っていった。

そして男性は誉め言葉を聞いたはずなのだが何故か歯を剥き涙目でこちらを睨んでいる。

「ガーちゃん、なにしてんの」

ヒューゴが低い声でそう言いながら私の口を押えてるウィーガの手を外しながら言う。

「言葉の選別が間違っていたか?」

ヒューゴに言われた意味ではあっていると思ったのだがどうもそうではないらしい。

「キサマ、きんちゃんに何を吹き込みやがった!」

ヒューゴに手首をもたれたままウィーガがヒューゴを睨む。

「え、別に」

開いた手でわきに挟んだ菓子の入った袋から菓子を取り出し口に入れ“ぽリッ”と小気味よい音を鳴らしてからヒューゴがウィーガに返した。

「でもきんちゃん、前にそんな言葉使わないでねって言ったでしょ」

ヒューゴが私とウィーガの間に入り込むようにしながら私の顔を困ったような顔で覗き込んで言う。

「そうだったな、申し訳ない」

ヒューゴが私の言葉に“うん、うん”と頷いて軽く首を傾けて口角を上げた後ウィーガの方に振り向いた。

「きんちゃんってなんでもすぐ確かめたくなっちゃうから…言葉には気を付けてね、ガーちゃん」

「ん、ぁ、ぁあ、もう!わかったわかった、気を付ける」

ウィーガが右手をパタパタと左右に振りながらうんざりした様子でそう言った。

「そうは言うがヒューゴ、知らない言葉を知るのは良い事ではないか?」

「あ、うんん…まぁ世の中には知らんでもいいもんってのもあっからな」

ヒューゴではなく、ウィーガが口を曲げ眉を顰めた顔で私に言ってきた。

知らなくとも良い言葉ことというものが世の中には存在するようだ。

「知らずとも良いものとはどのような定義なのだ?」

私がウィーガに聞くとウィーガは大きくため息をついた後、

「とにかく、馬んとこ行くぞ!」

と、違う話をし始め足早に歩き始めた。

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