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触れるだけの風

作者: シキカン
掲載日:2026/04/18

前作「なんでいつもこいつなんだよ」の主人公も少し出てきます。

よければ前作から読んでいただけると、より楽しめます。


https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3135206/




桜の舞う頃、坊やがたどたどしく少しぬかるんだ土の上を歩く。

その後ろを母親らしき女性が手を差し伸べようと、心配そうに見守る。

坊やの脚が土に取られ、ふらっとよろめいた。

私は咄嗟に手を差し伸べた。

その瞬間、坊やの体は風で軽くなったようにみえたが、転んでしまった。

母親が駆け寄る。坊やの瞳からは大粒の涙が流れる。

母親が坊やを抱きしめながら、痛みを飛ばす呪文を唱える。

私は心が温かくなり、坊やの涙を拭った。

その涙は桜の花びらと共に、どこかへ飛んでいった。


桜の花びらの調べに乗っていると、部屋でギターを抱え悩んでいる少年がいた。

画面には白紙の楽譜。

少年はギターをかき鳴らしては止め、かき鳴らしては止めと繰り返していた。

少し空いた窓の隙間から、私はギターを奏でようと、触れてみた。

何も音が出ない。

すると呼び鈴のような音がする。

私はふわっと舞い降りてみると、真新しいギターを背負った少年が、彼と話している。

みるみるうちに彼の表情に明るさが戻り、彼はその少年と共に自室に向かっていた。

私は彼の笑顔に嬉しくなり、桜の花びらを置いた。


桜が美しい丘の上で、老婦人が黒装束で写真を持って、立っている。

その写真には優しい笑顔の老人が写っていた。

「おじいさん、今年も綺麗に咲きましたよ。一緒にお花見は出来ませんでしたが、見えていますか?」

そう言い終わると彼女の瞳から、美しい一筋の涙が流れた。

私は彼女を精一杯優しく抱きしめた。

その瞬間、柔らかく暖かい風がブワッと彼女を包んだ。

彼女は目を丸くして驚いたが、すぐに笑顔になり

、柔らかな日差し降り注ぐ空を見上げた。

どうして私は、触れずにはいられないんだろう。

桜の花びらが静かに舞い落ちた。


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