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忘却の迷子  作者: 藤村 託時


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8/9

8.監禁

 とりあえず壁への物理的衝撃や液体化での溶解を試みるが、扉と同様に壊れる様子がない。

 一日が経過した。

 食料も水も当然与えられることは無い。

 さすがにこのまま何も摂取しない状態が続けば一ヶ月経つ頃には生命活動を維持することはできなくなっているだろう。

 なぜこの星に来たのかを思い出すことも無く、このまま死に絶えてしまうのだろうか。

 ガーラス星人といい、コウプ星人といい、ろくでもない奴らがこの星に住み着いている。

 このユノウミ星の者達は、言語がわかってくると外から来た二種族に比べてまだまともなように思えてくる。

 お金という概念を知った今、言葉が分からずに攻撃してしまった俺の方が悪かったことが分かる。

 ただ、お金が無い状態ではこの星で生きることができないというのもどうかとは思うが。


 この星でのことを思い返している間に一週間が経過した。

 部屋に一週間聞こえなかった音声が響き渡る。


「グランス星人ってだいぶしぶといのね。この星の人なら水を1週間飲まなかったらだいぶ弱ってるのに、まだ平気そうなんだもの」

「こっちの様子が見えてるのか? 俺を見ていても別に面白いことなんかないだろうに」

「そうね、最初の方は部屋を破壊しようとしてたようだけど、今はもう諦めて大人しくなってしまったようね」

「お前達は俺の身体を調べて何がしたいんだ?」

「それについては私が説明しよう」


 セイティとは別の男の声が聞こえてきた。


「お前は誰だ?」

「私はここでいろいろと研究をしている者だ。この星では今私達コウプ星人とガーラス星人が主導権争いをしている。ガーラス星人の奴らは頭は悪いが戦闘能力は我々より高い。この星を傷つけずに奴らを排除するにはある程度こちらも戦力を持つ必要がある。グランス星人の身体は研究対象として興味深い。君が早く死ぬことを待っているよ」


 ユノウミ星は勝手に奪い合いをされているのか。

 その後、音声が聞こえることはなかった。

 あいつらは俺の死体が見たいようだ……

 それなら、ちょっと試してみるか。


 一日が経過すると、扉が開かれた。

 液状化した身体を元の形に戻し、扉を開けた女の首を掴み廊下の壁に押し当てる。


「久しぶりだな」

「……、生きていたのね」


 昨日、俺は液状化した状態で3日間様子を見ていた。

 こいつらが俺の死を待っているのなら、生死の判別がつかない状態で呼び寄せるしかないと考えたからだ。

 さすがにあと1ヶ月様子を見られていたら俺の命は持たなかっただろう。


「とりあえずお前は死ね」


 抑えていた女の首を切り落とす。

 身体をよく見ると尻尾が生えているのが確認できた。

 尻尾が生えている他の四足動物なら、力を示せば追い返せるものだが無駄に知力を持っているこいつらはとても危険だ。

 俺の命を奪おうとしてきた相手を放置していくわけにはいかないのだ。

 扉を出られたので、そのまま建物の外へと脱出する。

 できればこの建物にいる者達を一掃したかったが、相手の拠点で無策に戦うのはさすがに分が悪いため逃げることを優先する。

 そういえば、コウプ星人とガーラス星人が争いをしていると話していたが、俺には関係の無い話だ。

 ただ、この星には俺を利用とするものが紛れているため、やはり誰も信じられない。

 このまま、自分の星にも帰れないようなら自死を選ぶのもありかもしれないな……

 それから建物から離れるようにひたすら移動を続けた。

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