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忘却の迷子  作者: 藤村 託時


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7.対話

 このまましらばっくれて逃走してもいいが、それでは海を越えることはできない。

 こちらから歩み寄らなければ状況は進展しないのだ。


「お前達の組織のトップと話をさせてくれ」

「急に何を言い出すんだ。まずは質問に答えろ」

「俺にも事情がいろいろあるが、暴れたと言えば暴れたな。帽子も取ってやる。─この額の目は本物だ、どうせ話すなら上の奴との方がいい。早く呼び出してくれ」

「確かにお前の連絡は受けているが、にわかには信じがたいな。こんな子供が大人の腕を切れるっていうのか」

「じゃあ、見せてやる」


 俺と二人の間に合った机を爪で切り裂き真っ二つにする。

 男達は顔を見合わせ、言葉を失っているようだ。


「これで分かっただろう」

「お前を本部まで連れて行こう。ただ、一旦確認をするから少し待ってくれ」


 何の確認をするのかは分からないが、こちらとしてはどうせやることもないためいくらでも待つことができる。

 しばらく待つと、上への確認が終わったようで、またくるまに乗るように案内された。くるまに乗り、向かった先にはやたら大きい建物がそびえたっていた。

 中に入ると、盾を持った人間が複数名俺を取り囲んだ状態で、ある一室へと誘導された。

 入った部屋には眼鏡をかけた白い髪の男が椅子に腰かけていた。


「君かな、噂になっている凶暴な子供というのは」

「俺は子供じゃない、大人だ。お前はここで一番偉いのか?」

「一番かは分からないが、ここでは上の役職に就かせていただいているよ。君については各所から話を聞いている。よその国では研究所の人々を傷つけて脱走し、この国では街で力をちらつかせて物を奪っていたらしいじゃないか」

「仕方がなかった。俺はかねを持っていない。かねを持っていないとこの星では何も得られない。それでは困る」

「この星ということは君は別の星から来たということかな。もしよければどこの星から来たのか教えてくれないかな」

「俺はグランス星から来た。ただ、どうやってこの星へ来たのかについての記憶が無いんだ。帰れるのなら自分の星へ早く帰りたい」

「グランス星……、聞いたことが無いな。じゃあ君は自分の星へ帰れなくて困っているのか」

「そうだ。あとこの島にはガーラス星人もいる。あいつらは凶悪な奴らだ。俺はまずあいつらと離れたいから空を飛んで別の島に行きたいんだ。空を飛ぶくるまに乗せてくれ」

「うーむ……、ガーラス星も効いたことが無いな。空を飛ぶ車というのもいまいち何なのか分からないし困ったものだ」

「海を越えられるのなら何でもいい」

「それじゃあ飛行機か船に乗りたいということかな」

「俺はこの星の知識がまだ足りていないから、それらが何なのか分からない。でも、海を越えられるのならなんでも問題ない」

「君は、重要危険人物として世界中に共有されている。一部では君のことを宇宙人だという者達もネットを中心に出ているが、証拠が不足しているためまだ私は信じれていない。まず本当に宇宙人かどうか確認したい」

「この額の目が証明にはならないのか?」

「目を触るわけにはいかないからな。他にも何か見せて欲しい」

「じゃあこれはどうだ?」


 俺は右手を液状化させる。

 液体が床に落ちると、床は溶けていく。

 再び、液体を固め右手の形に戻す。


「なるほど、これを見てしまったら納得せざるを得ないな。となると、先程のガーラス星人とやらの話も信用性が増してくる。君とガーラス星人について話を聞かせてくれないか」


 白髪の男が俺の話を聞く気になったようだ。

 ガーラス星人についての話をしようとした時、部屋にノックがされ、中に女が1人入ってきた。

 女が白髪の男に何かを耳打ちすると、少し席を外すとこちらに伝え、二人は部屋の外へ出ていってしまった。

 この星の人間とようやく会話が成り立ったことで少し気持ちが楽になる。

 ガーラス星人のことは好きになれなかったが、翻訳グミを貰ったことには感謝だ。この星を出る時まで利用させていただこう。

 数時間が経過しただろうか。

 そろそろ、部屋から出て自分から動こうかと考えていると、部屋の中に先程見た女が入ってくる。


「さっきまでいたおじさんはどこ行ったんだ?」

「会長はちょっと用事ができちゃったから、戻って来れないわ」

「飛行機に乗せてくれる話はどうなるんだよ」

「それなら大丈夫、あなたを遠くに移動させる話は決定したの。飛行機に乗せてあげるわ」

「ガーラス星人の話はしなくていいのか?」

「それは移動してから聞かせてね」


 白髪の男が戻ってこなかったことは気になるが、目的を達成できるならなんでもいい。

 女は手際よく案内をしてくれた。空港とやらに行くために車に乗った。

 車の速さは俺が走る速度より遅かったが、ただ座っているだけで移動できるのは中々に快適だった。

 空港に着くと、帽子を脱ぐ必要があるようだった。

 額の目は閉じた状態にし、切り傷ということでごまかすことができた。

 そして、ようやく飛行機に乗り込む。遠くから見たときはサイズ感があまり分からなかったが、近くで見ると飛行機はとても大きかった。

 俺の星では船はあったが、この星にある車や飛行機なんてものは存在していない。

 女に誘導され、中に入る。

 飛行機の中ではずっと椅子に座っていなければいけないのが、中々につらい。

 飛行生物に乗り空を飛ぶことはあったが、こんなに大勢の人間と一緒に飛行することは初めてなので不思議な感覚だ。

 俺を案内していた女は離れた席にいるため、話し相手がいない。

 ここでは時間が経つと飯が運ばれてくるらしいので、それまでは寝ることにしよう。

 寝て、飯を食って、寝て、を繰り返している間に飛行機は到着した。再び女に案内されるままに移動をする。


「なぁ、今更だけど名前を教えてくれないか?」

「私の名前はセイティよ」

「セイティか、俺の名前はラーだ。これから俺達はどこへ行くんだ?」

「私の拠点よ」

「セイティはどこに所属しているんだ?」

「それは着いてからちゃんと話すわ」


 なぜすぐに話してくれないのかが謎だ。


「さぁ部屋に入って」

「セイティが先に入ればいいじゃないか?」

「この星では客人を先に入らせるものなのよ」


 そういうものかと思いながら部屋に入る。

 しばらく待っていてもセイティは中に入ってこない。そして扉は閉じられた。


「おい、どうしたんだよ!」


 扉に向かって声をかけるが、返事は返ってこない。

 嫌な予感がしたので扉に向かって全力でタックルをする。

 部屋全体が揺れたが、扉が壊れることは無い。

 随分頑丈な作りになっているようだ。

 続けて腕を液状化させて扉を溶かそうと試みる。

 しかし、扉は溶けることはなかった。

 腕を元に戻すと、部屋に声が響いた。


「グランス星人のラーさん、ようこそ私達のラボへ」

「おいセイティ、なんで部屋に入って来ないんだ!」

「ごめんなさい、私はそこには入らないの。ラーさん専用の個室だから」

「俺を部屋に閉じ込めてどうするつもりだ?」

「殺すつもりよ」

「どうしてだ。お前に殺される恨みを買った覚えはないぞ」

「そうね、どうせあなたは後は死ぬだけだし、説明してあげるわ。私はそもそもこの星のユノウミ星人じゃないわ。コウプ星人よ」

「コウプ星人? ガーラス星人とはまた別の星の奴か。なぜ俺を殺そうとする?」

「あなたの身体を研究したいの。グランス星人の強い酸性の液体になる特性は非常に興味深いわ。あと、異様に頑丈なその肉体も解剖しがいがあるわ。私達は貴方がこの星で暴れ回って、ガーラス星人達と一緒に行動をしていたことも知っているわ。どうやらガーラス星人とは上手くいかなかったようね。それじゃあ後はあなたが弱っていく様子を観察させてもらうわ」


 そう言うと音声は途絶えた。

 さてどうしたものか……

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