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忘却の迷子  作者: 藤村 託時


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5.加虐

「いい感じに集めれたし、そろそろ拠点に戻るか」

「何体くらい集まった?」

「六体だね。まぁこんなもんでいいでしょ」


 そのような会話をした後、再び拠点に戻ることになった。

 俺はただおまけのように付いていただけで何もしていなかったが、大丈夫だったのだろうか。

 ガーラス星人の拠点に着くと、四人は物が乱雑に散らばっている部屋に入り、人形を一つ床に置いた。周りを見ると今日持ってきたものとは違う人形がいくつか棚に並べられていた。


「じゃあ、元に戻すね」


 床に置かれた人形にミークが触れると、人形は元の人間の姿へ変わっていく。


「どこだここは? 私の家族の話はどうなったんだ?」


 最初に声をかけた男だ。どうやら記憶は人形化される前の状態で止まっているようだ。


「家族は今のところ無事だ。お前には少し聞きたいことがあってな。《イトウ マサフミ》ってお前の国のトップと何か関わりはあるか?」

「いや別に無い。聞きたいことはそれだけか? 早く返してくれ」

「質問はこれだけなんだけど、まぁ念には念をで」


 質問をしていた男はユノウミ星人の腹に拳を打ち込む。


「がはっ……、いきなり何するんだ」

「もしお前が嘘ついているならもう一発殴る」

「だから、知らないって言ってるだろ!」


 今度はユノウミ星人の横腹に蹴りが入れられる。

 蹴りを受けたユノウミ星人は体勢を崩し床へ倒れこむ。


「なんか生意気だな、やっぱり嘘ついてるかもしれねぇなお前」


 その後もしばらくユノウミ星人への攻撃は続いた。

 痛みにより恐怖を覚えた男は次第に言葉を発しなくなっていく。


「こいつもイトウには繋がってないようだな。次行こう、次」

「じゃあ次は私の番ね!」


 ぐったりとしたユノウミ星人を再び人形に戻していく。

 そして、また別の人形を床に置き人間の姿に戻す。

 今度は女であったが、先ほどと同様に質問をし、痛めつけた後人形に戻していった。

 四人は順番に痛めつける係を交代していき、四人目が終わった後、リーダーの男が俺に向かって話しかけてきた。


「じゃあ次はラーさんの番だよ。グランス星人って強いらしいからどんなやり方でいたぶるか楽しみだわ」

「なぁ、なんでこんなことするんだ?」

「こんなことって?」

「質問するのは分かるんだが、そんな何度も痛めつける必要はないだろ」

「何寒いこと言ってんだよ。あんたも結構暴れてたらしいじゃねえか。別に殺しはしないんだから全然優しいじゃんか」

「そうだよ、ノリ悪いよ~」


 分からない。

 こいつらの気持ちが理解できない。

 俺は確かにユノウミ星人の言葉が理解できず、敵意を持たれたことへの反抗として攻撃を加えた。

 暴力を利用して自分の生活を守ろうともした。

 しかし、こいつらと俺では暴力に対しての認識の違いがある。

 俺は自分の身を守るため、自分の生活を維持するために暴力を利用した。

 それに対してこいつらは暴力を暴力と思っていない節がある。

 なぜか痛めつけている際、楽しそうな表情を浮かべていたのだ。

 俺の星でもそういう奴らはいた。

 実際に接したことはなかったが、そのような奴は異常な者として隔離したエリアに追放される決まりとなっていた。

 俺はそいつらとは関わりたくないと思っていたし、指定エリアにはできるだけ近づかないようにしていた。


こいつらは危険だ。だが─


「わかった。やるよ」

「そうそう。こんなの遊びみたいなもんなんだから殺さない程度に好きにやっちゃってよ」


 こいつらとは分かり合えない。

 人形から人間に戻ったユノウミ星人にお決まりの質問を投げかける。

 この男もどうやら知らないようだ。

 俺がこいつを攻撃しなければいけない。

 今までと違って、ここの人間とはコミュニケーションが取れるのだが、それを放棄しなければいけない状況にいる。

 俺はユノウミ星人の耳元で囁く、「痛がる演技をしてくれ」と。

 その後、男に腹に拳を軽く当てる。

 ユノウミ星人の肉体が脆弱であることは既に知っている。

 力を込めた拳を勢いよくぶつけたらそのまま穴が開くことになるだろう。

 男は状況を理解できていないようで、痛がる様子を見せていない。

 周りの奴らはこちらの様子をじっと見ている。

 俺は仕方なく爪を伸ばし腹に軽く穴をあける。穴からは血が流れ男は顔を歪める。


「いいじゃん! どんどんぶっ刺していこう!」


 女が満足した様子で声をかけてくる。

 俺は再度痛がる男に演技をするように耳打ちする。

 続けて軽く顔に拳をぶつける。

 男は少しわざとらしく痛がる様子を見せた。

 そこから何回か拳を当てていく。

 加減が完全にできないこともあり、本当に痛がっている反応も見られ、なんとか俺の番を終えることができた。

 そこからは繰り返し、質問と痛めつけが行われた。


「これで全部の人形分終わったかな。結局、イトウに繋がる奴はいなかったな」

「いい加減私飽きてきちゃったかも。なんか派手に暴れたいよね」

「そうだな。もう何日かしたらコーコアさんに相談してみるか」

「オチーヤ国内でも行方不明者が増えてきてるのがニュースになってはいるから、人形にするまでがめんどうになってくと思うし」

「結局路地裏まで連れ込むのがめんどくさいんだよなー」


 四人は自分達の調査についての不満を言い合っていた。

 ただ、明日も調査は行われるのは間違いない。

 今日の仕事は終わり、食事の時間になった。四人は食堂の方へ移動する。

 俺の分の食料は係の人から与えられ、割り振られている寝室で食事を摂るように案内を受けた。

 当然だが、あくまで俺は来客であり仲間としての扱いは受けていない。

 その扱いにどこか安心する気持ちと少しの疎外感を抱く。

 食事は味に関しては美味しいが、独りで食べるさみしさは地下にいる時と変わらなかった。

 食事を済ませた後は明日に備えて眠るだけであった。


 翌日、昨日と同じように街へと繰り出す。

 同じようにユノウミ星人に声をかけ、路地裏へ連れ込もうとする。

 俺は四人と反対方向へ駆け出した。


「おい、ラーさんどこ行くんだよ!」


 声をかけられるが、構わず走り続ける。


「あいつ足速すぎんだろ」

「もしかして、逃げようとしてるんじゃない?」

「コーコアさんに怒られちまうぞ! あいつを捕まえなきゃ」


 後ろからしばらく声が聞こえたが、次第に距離は離れていく。

 ユノウミ星人に比べれば遥かに身体能力は高いが、それでも俺に追いつくレベルではなかった。

 四人から抜け出せたのはいいが、どこかに身を隠さなければならない。

 また、山へ行くことも考えたが、寝ている間に捕まる可能性がある。

 とりあえずやわらかい地面を捜して地下への穴を掘り、姿を隠すことに決めた。

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