第3話 スライム狩り その5
三日目。
予定通りに作業が進み、昨日までに指示された範囲の駆除を全て終わらせた《オーラ》の三人は、三日目の朝をのんびりと過ごしていた。
この後はいつでも逃げ出せるように荷物をまとめてから、駆除しそびれたスライムの有無を確認する予定である。
「朝から肉とか豪勢だよな」
嬉しそうに焚き火の炎でレドがオオカラスの丸焼きを焼いている。焚き火に周りには串刺しされたオオカラスが何匹も刺さっていた。
「これ食べきれるの?」ミーファが聞くと
「心配するなって。ちゃんと計算してある。一人当たり……大体二、三本だな」相変わらず謎の自信に満ちた顔をしている。
「それ計算できてるって言わねーし、そんなこと聞いてねーし」
「大丈夫。これは塩コショウだろ。こっちは香草と砕いたクルオーミの実を詰めてあるだろ。そっちのは硬いパンとチーズとダシ汁が詰めてある。だってほら、トンズラするってなったら作り置きがあった方が楽だろ」
「あらやだ、レドどうしたの? なんかすごい冴えてんじゃん」
「だからこっち来てから調子いいって言ったろ? もう絶好調なんよ」
そこへ鼻をズビズビさせながらシランがトイレから戻って来た。果樹畑には何ヵ所かトイレが設置されていた。
「こっちはずっと鼻がムズムズして最悪だ。熱は無いから風邪じゃないとは思うけど」鼻をすすりながらシランがボヤく。
「それにしても……昨日はずい分とオオカラス倒したな。初日は全然現れなかったのに」
一日目の夜、シランとレドが細い紐で網を作り、端を棒に括りつけて囮のスライムに被せた。特別本気で魔物対策をしたつもりはなく、ただちょっとした遊び心みたいなものだ。
翌日、急に出現数が増えたオオカラス達は、スライムごと掴んだ網に足を絡ませると、網の弾性に負けてことごとく地面に落下した。思っていた以上に網が活躍したのだ。その結果が目の前の大量の丸焼きである。
「なぁレド。ひとつは今食べ切るとしても、残りはどうやって持っていくんだ? まさか三人が両手に鳥の丸焼きを持ちながら移動するつもりか?」
「ダメか?」
「そんな面と向かってダメかって聞かれると……ダメじゃないけど――なぁ? ミーファ」
「たしかに作り置きはいいなと思ったけど、両手に串持って逃げるんじゃ嫌だよ。何か色々ダラダラしてベタベタしそう。てか、ダメ」
「くっ、残念です……」
面と向かってダメと言われてしまったレドがふらりと立ち上がる。
「どした?」
「これから燻製にする為の枯れ葉とか枝とか取ってくる。すぐ戻るよ」
そう言うとそそくさと森の奥へと入っていった。
「ありゃ、諦めてないね」
「ああ、持つ気満々だね」
◇◇◇◇
燻製に良さそうな枝を求めてレドは森の奥へと進んでいった。
果樹畑の近くに生えている木は年間を通して葉が落ちない木ばかりだった。それだと嫌な匂いが付いてしまって燻製には向かない。
寒くなると葉を落とす木が生えていないかとレドは周りを物色していた。しかしなかなか良さそうな木が見つからない。
――できればクルオーミの木がいいな。
道中馬車の中でずっと寝ていたせいなのか、レドはここに来てから妙に身体の調子が良い。
身体の調子が良ければ気分も乗ってくる。軽やかにステップを踏みながら森の奥へと進んで行く。
森の中へ進めば進むほど、レドの気分は更に高揚していた。どんどん歩く速度も上がってくる。
視界がパッと開け、抜けるような青空が現れた。
急な光にレドの目が眩む。森の中のぽっかりと開けた木々の無い空白地帯、ギャップと呼ばれる空き地が目の前に広がる。
何度か目をしばたたかせて明るさに慣れたレドは、目の前の見慣れぬ光景に息を呑んだ。
地面には無数の小さな土の山と割れた卵、まだ割れていない卵が散乱している。
レドはその異常さからすぐさま手甲と足甲のトゲを覆うカバーを外し、様子を見る為に音を立てないようにゆっくりと近づく。
一番手前にあった土の山まで近づくと、それを足で軽く突いてみる。盛られた土は柔らかく、それは掘り返された土だと分かった。
「穴か……。もしかしてこれドリモグの穴か? いやいやいくら何でも数が多すぎだろ」
通称ドリモグは地中を徘徊する魔物である。オオカラスと同様、至る所に生息しており、顔の先端に硬質な突起物が付いていた。その突起物のドリルのような見た目からドリルモールギャングと名づけられている。
魔物ではあるが主に田畑の作物を狙う為、害獣のイメージが強い。性格も臆病で人を襲う事は滅多にない。大の大人が片手で抱えられる位の大きさで、普段は数匹単位で群れを作っている。
レドが驚くのも無理はなかった。通常ドリモグの穴は数個から多くても十個程度である。しかし今レドの目の前にあるドリモグの穴の後は軽く百を超えていた。
「こいつらもスライム目当てだとしたら、畑が穴だらけになっちゃうぞ」
これは一大事だと慌てたレドは、すぐに二人の元に戻ろうと踵を返した。
だがドリモグの通り道を踏み抜いてしまったのか、ズブリと足首まで地面に沈んでしまった。そのタイミングで地面から勢い良く飛び出してきたドリモグがレドを襲う。
地面を掘り進める為の硬い爪が金属の足甲とぶつかってカツンと乾いた音が響く。
「わっ、びっくりした! この野郎めっ」
地面から引っこ抜いた足でドリモグを蹴り上げた。蹴り上げられたドリモグが地面に落ちた瞬間、トゲ付きの手甲で頭を叩きつ潰す。レドは殴った手を振り払って体液を飛ばすと、構えを取って周囲を見回した。
「やっぱ、これだけ穴が空いてりゃ、そりゃわんさか湧いてくるよな……」
ボコボコと地面から這い出てきた無数の焦げ茶色の魔物がレドを取り囲み始めている。牙を剥き敵意丸出しのドリモグは単体でみれば弱い魔物ではあるものの、これだけの数が一斉に襲って来れば話は変わってくる。
「こいつらってこんな好戦的だっけ? まぁ、いいや。先手必勝!」レドが地面を蹴った。
目の前に立ちはだかるドリモグを片っ端から殴り倒していく。
正面から突進してきたドリモグには鼻っ柱に手甲を叩き込んだ。先端の突起物が粉々にはじけ飛ぶ。横から迫ってきたドリモグを回し蹴りで数匹まとめて蹴り飛ばす。蹴り飛ばしたうちの一匹が足甲のトゲが突き刺さって足に纏わりついた。
――邪魔くさっ!
波のように襲ってくるドリモグの群れにジャンプで飛び込んで両足で踏みつぶす。その拍子にレドの足に纏わりついていたドリモグもどこかへ飛んでいった。
後方からの突進は身体を捻って避けると同時に、針金のような尻尾を鷲掴みして千切れるほどぶん回し、そのまま目の前のドリモグに叩きつける。
次から次へと途切れる事なく地中から湧いてくる魔物を容赦なく叩き潰し続けた。しかし減るどころか更に増えていくドリモグ。
「大陸中のドリモグが集まってんのか?」
さすがの絶好調レドにも疲れが見え始める。そんな時、レドはふとある事に気が付いた。
――地中からボコボコ?
「じゃあ、あの割れた卵と割れてない卵って何の卵だ?」
ピシッ――
まだ割れていない卵にヒビが入る。瞬く間にヒビが広がり、パカリと割れて中から雛――ではなく、オオカラスが顔をのぞかせる。
「オオカラスかよ! 昨日から急に増えてたけど、ここで孵化したやつ等だったのか」
オオカラスは産まれたてでまだ濡れている羽根をゆっくりと広げると、そのまま何度かバサバサと羽ばたかせた。みるみる羽根が乾き、ひと声鳴いて勢い良く飛び立つ。
そしてそれが合図になったのか、他の卵にも一斉にヒビが走る。
「げっ、このままじゃヤバいかも……。多分、誰もここには来ないよな」
他のパーティは今頃スライム駆除してるはずだから大丈夫だろうと思ったレドは、靴を脱いで裸足になると気合の籠った唸り声をあげた。
「……ふんっ!」
レドの姿がたちまちのうちに変貌していく。
全身が青白い毛で覆われ、爪は鋭さを増して伸びる。変身した姿は知らない人が見れば何族なのか判断がつかないであろう。
攻撃の主体も打撃から斬撃に切り替わり、殺傷能力が跳ね上がる。
もちろん変化しているのは外見だけではない。筋肉が肥大し力やスピードも増し、体力や回復力も向上している。変わらないのは知力だけだった。
魔物のように太く鋭く伸びた足の爪を地面にがっちりと喰い込ませて姿勢を落とす。めいっぱいの力で地面を後ろに蹴り上げて前へ飛び出した。すれ違うドリモグをことごとく切り裂いていく。
そのまま真っすぐ孵化したばかりのオオカラスの卵に突進し、飛び立つ前のオオカラスを何匹か素早く切り裂いた。しかし既に多くのオオカラス達が上空を旋回しており、周囲に転がる無数の卵もまだ連鎖的に孵化している。
仲間を殺され、上空のオオカラスのうち四匹がレドめがけて突っ込んできた。だがオオカラスの攻撃は上空からのかぎ爪による強襲だけなので、スピードと動体視力が上がっている今の状態のレドにとって避ける事は造作も無い。
二匹目、三匹目の攻撃を躱し四匹目のオオカラスの攻撃に合わせてレドが右腕を振り下ろす。レドの爪によって首から腹までパックリと切り裂かれたオオカラスは、傷口から内蔵をこぼしながらそのまま地面に落下した。
新たなドリモグの群れが落ちたオオカラスを跳ね除けて襲ってくる。
変身後はドリモグの鼻を砕かずに爪で切り裂き、削ぎ落としながら倒していく。
――あ、これなら二人に褒められるかも。
ここへ来てレドが急に変な色気を出してきた。リーダーとしては金銭面でも役に立たなければと。
ボロボロなら価値はゼロだが、無傷であれば素材として一応は値が付く。
魔物の硬質な部分は大抵買い取ってもらえる。もちろんドリモグのようなどこにでもいる魔物の素材は安いので数を集めなければいけないが、今ここにいるドリモグの数は尋常ではない。
鼻先と爪と魔石も含めればそこそこの額にはなるんじゃないかと、レドが頭の中のそろばんの玉を弾いた。
レドの意識が自然とドリモグに向く。目の前に溢れる焦げ茶色の魔物が金に見えてしまったからだ。そして全身全霊を傾けてのモグラ叩きが始まった。その結果――。
「ああ、もう俺のバカ……」
上空には放っておいたオオカラスが大量に溜まっていた。まさに鼻先思案である。
一度飛ばれてしまうとレドからは手が出せない上に、オオカラスは群れの数が増えるほど攻撃性が増していく。
案の定、上空のオオカラスの溜まりから、さっきの倍以上の十匹のオオカラスが一斉に急降下してきた。
ドリモグと違って攻撃に高さが加わる分、同時に攻撃を仕掛けられる数が多いオオカラスの方が厄介である。さすがに全ての攻撃を避けることができずにレドは手甲で頭を庇う。
空中で向きを変えたオオカラスが再度攻撃を仕掛けてくる。しかもさっきより数が増えている。
単調な攻撃だからといって威力が弱いというわけではない。被弾覚悟なら何匹かは落とせそうだが、変身していても痛いものは痛い。相手はまだまだ相当な数がいる。ダメージの蓄積は命取りになりかねない。
オオカラスの波状攻撃をガードしていると、更に地中から這い出てきた新たなドリモグ達がレドに突進してくる。
「ヤバっ!」
一度劣勢に陥るとなかなか悪循環から抜け出せない。何か切っ掛けでもなければ、この数の暴力をひっくり返すのは難しい。
「こういうピンチの時に仲間が颯爽と駆けつけるのが定番だけど……多分来ないだろうな」
上空からの攻撃はガードでしのぎ、下からの攻撃は蹴り飛ばしてなんとか対処する。しかしこのままだとドリモグ相手にも手が回らなくなりそうであった。
防戦一方でジリ貧になりつつあるレドがどうにかできないかと考える。武器は近接のみ。技も同様、殴って蹴るだけ。周りを見回しても使えそうな物は落ちていない。
「困った。どうする。どうする? うーん……燻製は――今、全然関係ないだろ。うーん……モモモモの実は美味かっ――いやいや、違う違う」
何か方法は無いかと焦るレドの脳裏に三日前のミーファとのやり取りが浮かんだ。
――濡れた手ぬぐいでバチンって出来たらな……。
「いやいや、せめて鞭だろ」
ああ、もう! くだらない事しか浮かばない自分にイラッとして体温が上がり、ムズ痒くなったうなじをガシガシと掻きむしる。でも鞭があればいいなと強く思った。
ふと、うなじを掻く指に違和感を覚える。
あれ? と思って手を見ると、指の間に青白くて長い髪の毛が纏わりついていた。
「えっ? えっ?」
慌てたレドが首を捻って確認すると、一瞬のうちに後頭部の髪が地面に着くほど長く伸びていた。
◇◇◇◇
「なんか長くない?」
「たしかに長いな」
枝を拾いに行ったレドがなかなか戻ってこないのでシランとミーファは少し心配になっていた。
「これ、もしかして?」
「かもな。よし――」
シランは焚き火の周りに刺してある鳥の丸焼きの串を刺し直して、火から遠ざける。
「これで焦げないだろ」
「グッジョブ!」ミーファが親指をグッと立てた。
◇◇◇◇
突然自分の髪が伸びて驚くレド。
「なんだこれ?」伸びた髪の毛を両手で掬い上げると、青白いストレートヘアーが指の隙間からこぼれ落ちた。
今まで変身中にこのような状態の変化が起きた覚えはないとレドは焦ったが、手の平の髪の束が一瞬縄のように見えてハッと息を呑んだ。
「もしかして鞭のようなものがあればと思ったからか?」思い当たる節はそれしかなかった。
考えてみればそもそも強く念じて変身しているだから、思いで更に姿が変わってもおかしな話ではない。
――ならば。
物は試しだとレドが強くイメージしてみた。
すると青白い髪がふわりと波打って更に伸び、六本の束に分かれるとシュルルルと音を出して絡み合い、二本の長い三つ編みが結われた。
それが両腕にらせん状に巻かれて地面に垂れ下がる。レドはそれを強く握り鞭のように振ってみた。バチンバチンと音を鳴らして両脇の地面が爆ぜる。
「おおっ! なんかすげぇ! 思い通りになったぞ」
これならいけるかもとレドは片方の三つ編みを鞭のようにしならせて振り回した。
「尻を三つに割ってやるぜ!」
気合の入った一撃が破裂音を響かせて複数のドリモグを宙へ飛ばす。
次いで別の三つ編みを頭の上でブンブン振り回すと、三つ編みの先端が団子のような塊に変化した。高速で回転する三つ編みが上空から飛来するオオカラスを弾き飛ばす。
その隙にもう片方の鞭でドリモグを絡めとってグルグルと振り回して上空のオオカラスに向かって放り投げた。空中で衝突したドリモグとオオカラスが変な声を出しながら落下してくる。
「いやっほーい!」
今度は先端が薄い戦斧のような形状に変化した。それを振り回し縦横無尽に駆け巡る。周囲には雑草と血飛沫が舞い上がった。
「あ、こりゃ楽だ」
鼻歌交じりのレドが足を止めると、辺りには切断されたドリモグと雑草が散乱していた。青白かった三つ編みも返り血で赤く色付いている。
レドがざっと見回すと、数百はあろうドリモグの死骸の中に動いているドリモグは見当たらなかった。新たに地面から湧き出てくるものもいない。どうやら地面の方はひと段落したようだ。
残るはオオカラス。
レドが上空を見上げると数百ものオオカラスが巨大な渦のように漂っていた。そして渦は吸い込まれるように中心に集まり巨大な塊に形を変えるとそこから一気に洪水のように押し寄せた。
「わっ、わわわっ!」とっさに地面に倒れ込んで攻撃を避ける。真上を通り抜ける羽音の不気味さにレドの背筋がぞわりと震えた。
羽音が消えたので立ち上がって空を見上げると、またしても渦を巻いている。
――さすがに今のは三つ編みを振り回しても無理だな。
さてどうしようと考えた時、レドはひとつの案を思いついた。いや、思いついたというより思い出したと言った方が正しいかもしれない。
三つ編みの先端が鞭へと戻り、それで目の前の地面を強く叩く。破裂音と共に地面に浅い穴ができ、それを四、五回繰り返すと人ひとり隠れられる程の窪みが出来た。
窪みの前で仁王立ちをしているレドの三つ編みがスルスルと解けて、長い髪が地面に広がる。指を組んでポキポキと鳴らす。
「さぁ、準備万端。ばっちこいだ、この野郎」レドが空を見上げて不敵に笑う。
上空の渦が再び黒い塊になり、そして大きな羽音と共に洪水のように突っ込んできた。
「うわっ! やっぱり怖えぇっ!」
そう叫びながらレドは黒い塊をギリギリまで引き付けて窪みに飛び込んだ。その反動でふわりと舞い上がったレドの髪が一気に網の形に変わって広がる。レドは二日目の網を思い出していたのだ。
大量のオオカラスの塊が次から次へと網に突き刺さり、網を引っ張り上げる。そう簡単に勢いは殺せない。まだ産まれたばかりで大きい個体はいなかったが、それでも数百にも及ぶ数の力は侮れない。
「イテテテテ! キツい! キツい!」
両手両足の爪をがっちりと地面に食い込ませて抗うが、数百にも及ぶオオカラスとの綱引きは想像をはるかに超えてきつかった。
歯を食いしばって耐えてはいるが、真っすぐな二十本の爪跡がガリガリと地面に刻まれていく。青筋を立てたレドが必死の形相で吠える。
レドの耳元でブチブチと音がする。
オオカラスの力に耐え切れずに髪が切れている音だった。
「ヤバい、ハゲる。切れるな! 頑張れ、俺の髪! 切れ――ん? あっ、そっか。切ればいいのか」
レドが何かを閃いた時、網を形作っている髪が針金のように細く硬く変化した。そして後頭部に掛かっていた負荷が一気に軽くなり、レドは盛大につんのめって地面に突っ込んだ。
地面から顔を引っこ抜き、口の中に入った土をペッと吐きながら後ろを振り返った。そこには細切れになった肉塊が放射状が盛大に飛び散り、バケツの水でもひっくり返したかのように地面が血で真っ赤に染まっていた。
細く硬くなった髪が鋭い刃物のようにオオカラス達をきれいさっぱり切断したのだ。
ドリルモールギャングとオオカラス。
共に数百匹は倒したであろう現場には大量の死骸と肉塊と血溜まりが辺り一面に溢れていた。
「我ながらうまくいったけど……。うわぁ……うわぁ……これ大丈夫か?」
よく見れば地面だけではなく周りの木々にまで血や肉、臓物的な何かが飛び散った凄惨な光景に、レドは引きまくっていた。
下に落ちているドリモグの死骸を避けながら少し歩いてみたが、全て倒したようで生きている魔物は見つからない。飛んでいる魔物もいない。
レドは足元に落ちていたクズ魔石に気が付いて拾った。
「数はすごかったけど、所詮はこのレベルの魔物なんだよなぁ……」
クズ魔石をズボンでゴシゴシと拭いて口に放り込んだ。ボリボリと音を立てて噛み砕いて飲み込む。今日はまた一段と魔石が身に染みる。
もう大丈夫だろうと思ったレドがフンと鼻を鳴らして変身を解いた。
全身の筋肉が縮んで細くなっていく。全身の体毛も抜け落ち、髪と爪も元に戻った。
「――あれ? 腹も減ったけど、なんかすげぇ眠いな……頑張りす、ぎた か……」
元に戻った途端、立っていられない程の眠気に襲われてレドの腰と膝が砕ける。
フラフラと地面にうずくまると「ちょっとだけ……ホント、ちょっとだけだから……」とブツブツと呟き、そのまま夢の世界へと旅立った。
レドの服は伸縮性に富んでいると言う事で
変化の仕方によっては破れちゃうでしょうけど……
ストックが残るところ@2話しかないです




