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笑え!進め!我ら特課なり!!  作者: 今木照
守り切れ!主人公の純ケツ!!
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第40話 友達の家で見る晩飯ってめっちゃ美味そう。

2024年8月1日 午後20時頃

石塚特人いしづかとくと宅にて...



 薄い窓ガラスの向こうから、夏休みを満喫しているであろう学生たちの声が聞こえてきた。ふとガラス越しに道路を見下ろすと、男子高校生のような見た目の若い集団が、活気のある笑い声を上げながら闊歩していた。


(俺にも、あんな青春があったんだよなぁ...)


 昔の青い記憶を辿り、感慨に耽る。

 俺も今年で21歳。何がしたいでもなくFラン大学に入学し、大して質のいい友人にも出会えないままパチンコと言う悪魔に出会ってしまい、今はこうして四畳半のボロアパートに一人暮らしをしている。

 どうしようもないほど寂しい大学三年生だろう。と、柄にもなく孤独感に苛まれて薄汚れた天井を眺めていると、視界の隅に目を引く赤色が映りこんだ。


(あぁ、そうだ。今は一人じゃないんだった。...いや、一人の方が何倍マシだったことか)


 視界に映った赤色の方に目を向ける。そこには黒いジャケットを着て、更に真っ黒なサングラスを装着している、真っ赤な髪をした一人の男が佇んでいた。その赤髪の男は俺の視線に気づき、にやっと笑って口を開く。


「どうしたの、トクちん?...もしかして、人肌の温もりが欲しいのかしら~ん?」


 その男はそう言うと、身をくねらせながらこちらに擦り寄ってきやがる。

 俺は最大限嫌そうな顔をして、その男を両手で拒む。


「別に温もりを求めてる訳じゃねェ!お前に温めてもらうくらいなら電子レンジに右手突っ込んだ方がマシだ!!」


 はぁ、なんでこんなことになっているのだろうか。

 2時間前、俺とナノハ、そしてサキちゃんが未来から現代に帰ってきた時、何故かそこにこの男、江口えぐちが付いてきていた。

 江口は俺達が所属する特課とっかの上司で、もう一人の上司の及川と同じく、未来の世界の人間だ。だから本来、俺達と一緒に現代に来る必要がない彼だが、現代に来た理由を聞くと、「トクちんと親睦を深めたいから!」とかいうふざけた理由だった。

 そしてここからが一番の問題なのだが、彼は正真正銘、野菜生活よりも純度100%なオカマなのだ。このLGBTQが騒がれている現代において、『オカマ』という単語は不適切かもしれないが、もうそんなことに配慮する気概も余裕もない。


 そして現在、その江口おかまはかなり強引に俺ん家への侵入を成功させている。なのでこのオカマと一つ屋根の下、気が休まらないひと時を送っている訳だが...

 ふと、実家から持ってきた古い置き時計に目をやる。


 20:13


 もう20時だ。昨日の一件から疲れに疲れ、更にロクに寝れもしなかったので、体の節々が悲鳴を上げている。パチンコで退化していった俺の肉体には、特課の業務は少々厳しすぎるらしい。晩飯もまだ食ってないが、今は食欲を凌駕する勢いで睡眠欲が勝っていた。随分と早いが、今日はもう寝てしまおう。


 重くなってきた瞼を擦りながら、ゆっくりと立ち上がる。引き出しから、これまた実家から持ってきた布団を引っ張り出し、畳の上に敷きつめる。そして薄い掛け布団を敷布団の上に放ると、壁に背を預けている江口に、鋭く言葉を投げかけた。


「おい江口。俺は今から寝るから、もうこれ以上親睦なんて深められないぞ。...ってか、まさかとは思うが、このまま家に泊まるつもりじゃないだろうな?」


 俺の言葉を聞いた江口はわざとらしく顎を引いて上目遣いを作り出し、いつもより控えめな声で応えてきた。別に可愛くない。


「終電、終わっちゃったかも...」

「...ここが20時で終電が終わるようなクソ田舎に見えてんのか?キッザニアですらまだ営業時間内だよ。...っていうかお前、未来に帰るだけなんだから電車関係ねぇだろ。」


 江口に帰宅を促すように、彼の右手の指輪に視線を送る。


「トクちん冷た~い!...でも、キッザニアが営業時間内って事は、トクちんの恋人体験イベントもまだ、営業時間内ってコト?」

「俺の恋人体験イベントは24時間営業だが、18歳~30歳までの女性限定だ。残念だがアンタに参加する資格はない。とっとと帰れ!」


 枕を頭の所に置き、下半身を掛け布団にもぐらせて、江口を睨みつけた。

 ......睨みつけた、ハズだった。


「あ、あれ?江口?」


 俺の切り裂く様に尖った眼つきは、徐々に驚愕の丸に変わっていく。なぜなら、つい3秒前まで江口が佇んでいた場所から、彼の姿が消えていたからだ。

 音もなく消えた。いい加減諦めて、大人しく未来に帰ったのか?...まぁ、それならいいんだが。


 俺は目の前で起きた不思議な現象をさっさと忘れようと、布団に深く潜った。なんだか不気味な消え去り方ではあるが、居なくなってくれたのなら願ったり叶ったりだ。今はとにかく、早く寝てしまおう。

 眼鏡を外して机の上に置き、備え付けの電気のリモコンを手に取り、ピッと音を立てて消灯させる。ホントに、無理矢理ついてきて急に消えるとか、何て自分勝手なオカマなのだろうか。俺は口元まで薄い掛け布団を持ち上げ、ゆっくりと瞼を閉じた。

 この狭い部屋に、古い置き時計から発せられる、カチ、カチと時を刻む秒針のリズムだけが響く。こうして、今日という激動の一日に幕が下りたのであった。




   「............ザッ」



 ん?

 何か今、足元で動いた気が...


 ......んまぁ、気のせいか。




    「............」




「...恋バナ、する?」

「ギィャァァァァァァアァァアァァーーーッッ!!!!!!!」




続く!

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